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誰が為に美徳はある2

「働く意思があるのはいいことだが、それだと……」



カッと怒りがピークに達した。


倉田は鉛筆を握りしめると立ち上がり、橋場に振り向いて吠える。



「だから余計な口出ししないでくださいよ! 教師にいったい何が出来るんですか!? 僕の代わりに金稼いでくれますか!?」


「ダーッ!! お前はほんっとに捻くれ者だな!! 若いもんは素直でナンボだろ!!」


「若い若いって若さを押し付けんのやめてくださいよ!! 若ければなんでも出来るみたいな幻想、反吐が出る!!」



鉛筆を持った手を勢いよく振り上げ、細部まで丁寧に描き込まれていたキャンバスにギラつく一本の線が下へ滑り込む。


芯が折れて砕けた先が下降する線をブツ切りにしていた。


血走った目をして倉田は橋場を睨みつける。


獣のような荒ぶりに橋場は圧倒されるも、諦めまいと食いついていく。



「時代をみろよ! 若さあって夢見れねーようにしたのは誰だよ!? クソが!?」


「倉田! 大人を言い訳にするのは──」



終わりそうのない争い。


そんな時、空気を破るように美術室の引き戸がガラガラと音を立てる。


振り向くとそこには困惑した様子で立ちすくむ黒咲くんがいた。



「……えっと、まずは落ち着きませんか?」


「黒咲!?」



驚く橋場に対し、苦笑いで誤魔化す黒咲くん。



「先生、遠藤先生が探してましたよ?」


「そ、そうか。遠藤先生、何の用かな?」



ポッと頬を染め、髪を整え出す橋場。


どうやら“遠藤先生”に好意を持っているようだ。


音楽の担当教員だが、美術を選択している倉田には誰だかわからなかった。


橋場は急ぎ足で美術室から出ていこうとする。



「……倉田、自分のやりたいことから目を逸らしてもいいことないからな」



ビシッと指をさし、引き戸を閉めて去っていく。


こうもカッコつかない後ろ姿も珍しいと倉田は仏頂面で見送っていた。

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