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もっと強く6

ーー庭に繋がる大きなガラスの出入口が開く。


家の中の盛り上がる声が入り込み、重なるように怒声が近づいてくる。


襲いかかる暴走した女王に慌てて私たちは距離を取り、目をそらした。


それが麻理子の気持ちを逆立てるとも知らず、広い庭をダッシュする。



「めめりん! お前って奴はーっ!!」


「ぴゃああああっ!! ごめんなさーいっ!!」



追いかけてくる麻理子から必死に逃げる。


残された黒咲くんは状況が掴めず、マヌケ顔をしていた。



「えーっと……」


「由利っ! メリクリ!!」



そこに調子よく拓司がやってきて、黒咲くんの肩に腕を回して乗っかかる。


黒咲くんは目を丸くして辺りを見回し、夜の深さに気づいた。



「えっ!? もうそんな時間!?」


「ああぁ、女子の家に泊まれんなんて……ぐふふ」



夜遅いことから麻理子の家のリビングで夜を明かすことになり、拓司は満悦そうにニタニタとする。


唾を飲み込む音に黒咲くんは引き顔で拓司の腹に腕をぶつけた。



「バーカッ! だからモテないんだよ!」


「由利くんひどない!?」



そこに雪を見上げながらルンルンとしてショールをまとった奏が歩いてくる。


黒咲くんと拓司を見比べて、鼻で笑っていた。



「山村はなー、なんでだろーね。 なんか違うよねー」


「なんかって何や、奏ちゃん!」


「さぁ?」



ケラケラ笑われることに心折られた拓司が泣き真似をして黒咲くんに擦り寄る。


黒咲くんはあえて目を閉じ、見ないようにしていた。



「女子って俺にだけ冷たくない?」


「……どんまい。お前は良い奴だよ」


「うおおおおん!」


「黒咲くんって結構バッサリしてるよね」



遠目に見ていた里穂がついに口を出す。


ちゃっかりと麻理子に借りたスマートフォンでカメラを回していた。


焦点を黒咲くんに定めてニタリと笑い、画面越しに黒咲くんを攻める。



「……えと、ごめんなさい」


「面白いからいいよー」



見目が良いと画面映えもいい。


ただ黒咲くんは画面に映ると背景に馴染んでしまいそうで、儚い美しさに見えた。


まるで命尽きる前に輝きを増す星のようだった。



「……芽々、頑張って」



画面越しにメッセージを残すしかない里穂は、ずっと黒咲くんを映す。


その背景で麻理子と戯れる芽々が笑っていた。




ーーこうしてクリスマスは終了。


私たちは年末に向けて加速しはじめていた。


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