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ポニーテールとシュシュ3

***


その後、麻理子と合流してさっそく動画撮影に取り組んでいた。


風にそよそよする田んぼを背景に、アイドルさながらの麻理子が笑顔でカメラ目線をする。




「というわけでふたご町はこのように田んぼが広がっていて……」



だんだん顔が強ばっていく。


やがて頑固な派手女子の怒りがセリフとなって現れた。




「って、こんな動画誰が見るのよ! 説明が地味! つまんない!」


「ご、ごめん。オレの文章力がないばかりに」



慌てて謝罪し、困っている黒咲くんに瞬間的に麻理子は防衛反応をする。




「やーん、冗談だよぅ! 堅実でしっかりした文章だと思うぅ!」


(本音だだ漏れあざと女子! これはもうあざとくないよ!?)



あざといってなんだっけ。


もう言葉がわからない。


もっと明快で単純な言葉に絞ろう。


日本語は遊ばれすぎだ。




「でもどうしよっかー。ショート動画でしょ? 15~60秒って短くない? 何も説明出来ないじゃん」



麻理子の言葉に理解はありながらもシビアな問題に直面する。


動画はそう簡単に見てもらえない。


一瞬で食いついてもらえなかったらそれで終わりだ。


タイパなんて言葉が流行るくらい、人はコンテンツにわがままになった。


それがいつか自分の身に降りかかる地獄とも知らずにクオリティを追求し続ける。


素晴らしいものが出来ても、あまりに高すぎてやがて人は見上げるばかりで潰れゆく。


例えるならばスポーツと同じだ。


勝つものと負けるもの。


コンテンツ作りはこれから加速して屍をうみだしていく。


屍を越えてゆけ、なんてキレイな言葉ではとどめられないレベルに変わっていく。


ここは、負けた過疎の地。


中身が良くても食いついてもらえなかったら埋もれていくだけ。


土地も、人材も同じ。


なのに私は泣きたいくらいにそれが悔しかった。


社会で虐げられ、潰された弱者の悲鳴だった。


この大地は、悲鳴をあげているんだ。



(無価値な人はいない。それでも価値は磨かなければ値が上がらない)



悲鳴を耳にしながらも、私は土地より人をみる。


何年も帰らなかった私が守りたいものは、見えている景色ではなかった。




(ここにいる人は価値の塊だ。私は何一つ無駄にしたくない)



「ねぇ、麻理子様の本音で話してみてよ」


「はい?」


「編集は私が頑張るから! 長くてもなんでもいいから思うこと吐き出してよ!」


「で、でもぉ」



チラリと黒咲くんを気にする麻理子がいた。


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