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ポニーテールとシュシュ1

2010年12月16日、木曜日。


クリスマスイブまで残り8日。


ーー年末まで15日。



「じゃーん! この写真見てみてー!」



そう言ってスマートフォン内にある写真を得意げに見せてくるのは麻理子であった。


水色の華やかなパールがかったお姫様ドレスを着た麻理子の姿であった。




「わーっ! すごいキレイ! どうしたのこれ?」


「へへん! 実はハロウィンイベントのために東京行ったときに、某ランドで着たんだ」


(リア充活動やん!)



ハロウィンの時期に行われる大人の仮装して来場出来る某娯楽施設。


そもそも都会と田舎は別世界のようなもので、この田んぼに囲まれた世界で生きる私たちにとって夢の国どころか、あの世レベルで桁違いなものだった。


そんな場所に仮装していけるのはリアルが充実して、コンプレックスさえ加工して夢にひたれるキャピキャピな人だけだ。


キャピキャピどころか、アラサー以前に枯れた人生を送ってきた私には瞬殺の宝刀だ。


さすがは麻理子様。


侮るなかれ、カースト上位の女王様。



「これさー、飾りつけ変えれば星の女王っぽくなるかなーって!」


「なるなる! めっちゃなる! 麻理子様ならすっごく映えるよ!!」


「え……ハエにはなりたくない」



流行していない言葉は通じなかった。


背伸びをしてキャピキャピになろうとしても、根が枯れ女子なので自分で踏み潰す結果に終わる。


秋が終わり、もう雪に埋もれて大地へとかえる葉のように。


私は召されていくばかり。


知ったことのない私の事情をスルーして麻理子は現状を楽しんでいた。



「とりあえず衣装作成してるとこの動画撮ってみるわ。あと何撮ったらいい?」


「うーん、当日撮るのはもちろんだけど。 やっぱりPR動画はほしいとこだよねー」



過去の動画は期待出来ない。


準備だけの動画だと何を紹介しているかもすぐには伝わらない。


一秒が決め手となる世界に突入する今だからこそ、しっかりと練りたかった。




「過去の写真をスライドショーにするくらいしかないかな」


「やーん、そんなの黒咲くんに頼むしかないじゃーん! あたし頼んでくるー!」



羽ばたく鳥のように。


ハートを撒き散らす天使のように麻理子は走っていった。




(恋するJKは強い!!)



同じ相手に恋してるというのにどうしてこうも差があるのやら。行動力が違う。


顔面格差、ポジション、前向き思考。


考えれば考えるほどネガティブになり、ため息をついてしまった。




「どう見たってヒロイン顔だよね。 私は逆転ポジションの地味子にしてはイマイチだし」



クラス一可愛い女の子にもなれず、シンデレラのような地味子でもない。


平凡と呼ぶにはなんとも言えない性格。


物語があるとしたら主人公の友達Bや、ちょっと変だけどいい子なクラスメイトくらいの紹介文で終わるだろう。


……むなしい。



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