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Beginner1

暗くなった群青の空の下、二人並んで学校脇の道を歩く。


肩にかけたカバンの紐を両手で握りしめ、地面を凝視しながら歩いていた。



(ふあーっ! なんか私、青春っぽいことしてる!!)



こんなドキドキしながら男の子と歩くなんて思春期か!


……思春期だった。


こんな若い男の子がおばちゃんの隣を歩いて合法ですか!?


あ、自分でおばちゃんって言って傷ついた。


まだまだ若い、若いんだ私は。


顔を上げて隣を歩く黒咲くんを凝視し、デロデロに顔を崩壊させる。



(黒咲くんが隣にいるぜぃ。見れば見るほどいいお顔だこと)


「時森、オレの顔に何かついてる?」


(ぴゃあー!! バレたーっ!!)


「ううん、なんでもない」



平然を装ってヘラヘラと笑う。


かわいい顔ってどうやって作るのか。これではヨダレ垂らした絵文字みたいだ。


いや、恋する女の子はどんな時よりもかわいいはず。私は人生で一番かわいいんだ。


めげるな、頑張ってみようではないか。



「それより黒咲くんはこんな時間まで何してたの?」



黒咲くんはポカーンとして口を開いている。


滑ったのか。


笑顔を硬直させて黒咲くんに花を飛ばすしかなかった。


黒咲くんは苦笑いをして目を逸らし、指をソワソワと動かしていた。



「あー、星祭りのことでちょっとな」


(星祭り……。この年の星祭りはどんな感じだったのかな?)



2010年の年末年始恒例、ふたご町星祭り。


年末年始、私は受験勉強のため星祭りに参加せず、初詣に行った程度だ。


正直、お祭りのことなんて全く気にしてなかった。


どんな風に行われて、あの未来に繋がったのかの過程を知らない。


誰がどんな風に開催していたかの裏側も知らず、私は故郷を去ったのだった。


黒咲くんが関わっているというのに、何も知らずにただキャーキャーしてただけの小娘だった。



「その……大変なの?」


「大変というか、人手が足りなくて。 みんな受験勉強で忙しいからなぁ」



そうなるよなと納得してしまう。


どうしても現実方向に諦めた考えをしてしまった。



「下の学年はそういうの参加しないし」



このふたご町の人口は年々減少し、若者が特にいなかった。


いわゆる過疎化というもので、未来では老人ばかりの寂れた町としてポツンと残っていた。


過疎化は人手不足に直結する。


人を増やすための努力も難しいのが現実。


歯止めの利かない衰退だった。



(あの時は考えもしなかったけど、黒咲くんは大変な立場だったのかも)



老人ばかりのこの町で、若者代表として、復興会の父親の息子として頑張ってたのだろう。


責任感があり、真面目で人気者の陰ながらの努力であった。


そう、彼は老若男女問わずに優しかった。


その背景に何があるのかさえ、私は知らなかった。


大人になってもそれは変わらない。



「私、何か出来ないかな?」



私の行動は、希望なのか絶望なのか。


時計の針が進む度に、排他する価値観と閉塞感が首を締め付けていくのだった。




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