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1頁目

「はい! 今日のお題は『我が校のマダムと仲良くなる方法』についてです!」


 そう言って教卓の上に猫の好きそうなオモチャを置いてみる。もちろん箱いっぱいに用意してみました。


「先輩、なんか間違った物が入ってますけど」

「え? どれ?」

「それです」

「これ?」

「そうそう。それです」


 我が部の部員である嘉戸(かど)(ひかる)に指摘された物を持ち上げてみると、ただ一人を除いた部員が悲鳴をあげた。


「紅、それはない!」

「マダムが驚いちゃうよ!」

「え、僕は好きだけどな」

「駄目……? 私はいいと思ったんだけど」


 回りからのブーイングを聞きつつ、私は目をカッと開く。そして思う。


 ぶーぶー文句を言っていてもマダムとは仲良くなれない!


「と言うことで、各々好きな方法でマダムに近づいてください」


 私は隠し持っていたくじを出して、みんなに引いてもらった。



           ***



 一人目、中津(なかつ)平助の場合。


「お、マダムはっけーん!」


 マダムを見つけて突進していく平助。

 当然、マダムは驚いて逃げる。驚いて膨らんだ尻尾がまるで狸のようになっている。


「あ、逃げんな! 頼むから!」


 必死に追いかけるが追いつかない。

 さすが猫である。それでも諦めずマダムを追いかけ、やっとの思いで追いついた平助は隠し持っていた猫じゃらしを出した。


「ほーれほれ、マダムの好きな猫じゃらしだぞー。さっきは驚かせてごめんなー」

「にゃ」


 鳴いたマダムは「ふん。そんな物で許されるとでも?」という顔をしている。それに気づかない平助は、猫じゃらしを振り続ける。それを無視して、マダムはひらりと平助の横を華麗に通りすぎっていった。


『結果』

 マダムを驚かせてはいけない。



*****



 二人目、(くすのき)麗の場合。


「あ、マダム見っけ!」


 寛いでいるマダムを遠目に見つけた麗は、こっそりと近づいていく。

 まだマダムは寛いでいる。


「マダム」


 寛いでいるマダムを触ろうとしたら、触るなと言うように逃げられる。


「あ、マダム!」


 平助の時と同様、追いかけるが追いつかない。そしてマダムはどこかに隠れてしまった。


「マダムー! 出てきてよー!」


 叫んでもマダムは出てこない。


「マダム! マダムー! 私と遊ぼうよ!」


 必死に叫び、ポケットから鈴が入っているボールを取り出す。そしてボールをころころと動かしてみる。りんりんと鳴るボール。


「にゃ」


 興味を持ったマダムが草影から出てくる。


「やった! マダムが出てきた!」


 嬉しさのあまり大声を出してしまって、その声に驚いたマダムはすごい速さで逃げてしまう。


『結果』

 猫の前で大声を出しては駄目。



*****



 三人目、嘉戸光の場合。


 草の上で寝転がってじっとする。


「マダム来ないなー」


 ごろごろしていたら、眠くなってきたので光は目を閉じる。すると光は自分のそばに気配を感じ、目を開けてみるとマダムが顔を覗きこんでいた。


「あ、マダム」

「にゃー」


 まるで「ここで寝たら風邪を引くよ」とでも言うかのようにマダムは鳴く。


「マダム、遊ぶ?」


 光はそばに置いておいた猫じゃらしをゆらゆらと揺らしてみる。マダムはその猫じゃらしを無視して、光の体の上に乗って丸まった。


「もしかして寝るの?」


 聞くとマダムは目を開けて一鳴きした。


「マダムも風邪引いちゃうよ」

「にゃ」


 大丈夫と言うように、ふにふに肉きゅうを頬にあてるマダム。


『結果』

 肉きゅうが気持ちよかった。



*****



 四人目、鈴原忍の場合。


「マダムにプレゼントを持ってきたよ」


 そう声を出して言ってもマダムは出てこない。


「マダムの大好きなマタタビだよ」


 かさっと木の上から音がする。そして下を器用に見るマダムがいた。


「そこにいたんだ。マタタビあげるからおいで」

「にゃ」


 すたんと華麗なジャンプで降りてきたマダム。


「ほら、マタタビだよ」


 マダムは、嬉しそうにマタタビを舐める。

 時間が経つにつれ、まるで酔っているような姿になるマダム。


「にゃー」

「ごめん。もうマタタビないんだ」


 手に匂いがついているのか、必死になって舐めているマダム。


「可愛いけど、手が痛いなあ……」


『結果』

 マタタビはすごい。



*****



 五人目、天草(くれない)の場合。


「マダムー」


 その一声でマダムが姿を現した。


「おいで」

「にゃ、にゃーん」


 すりすりと手に擦り寄ってくるマダム。その姿はとても愛らしい。


「今回、ありがとうね。私たちに付き合ってくれて」

「にゃ」

「あ、今から一緒に日向ぼっこでもする?」


 紅がマダムにそう聞くと、今はそんな気分ではないと一鳴きされる。


「あ、じゃあ猫じゃらしで遊ぶ?」

「にゃ」


 鞄から猫じゃらしを取り出して、ゆらゆらと揺らすとマダムは楽しそうに遊びだした。


「相変わらず可愛いね、マダムは」


 その声を聞いてか、他の猫も集まり始めた。


「にゃー」

「にゃん、にゃー」

「にゃーん」

「あれ? 他のニャンコ様も集まってきたぞ」


 一つの猫じゃらしに対して六匹の猫が遊んでいた。


『結果』

 猫に好かれる体質はすごい。



*****


「総合的にマタタビが一番すごいと思いました」

「えー、俺は紅の体質のほうがすごいと思うけど」

「私もそう思う」

「僕は寝床にされた光もすごいと思うよ」

「それじゃあまとめて寝床とマタタビ、体質は素晴らしいってことに決定」




 ×月○日

 部誌八冊目の最初のページは、マダムについて書きます。

 みんなご存じマダムは学校に住んでいる私たち生徒の母のような存在で、アイドルでもあります。

 毎日、誰かは必ずマダムとお近づきになれるよう頑張っている姿が見られます。

 今回はお題前にマダムにお願いをしました。

 明日もマダムは自由に校内を歩いていると思います。


 部長、天草紅。

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