司書の星(2)
「じゃあ、お先にー」
先輩司書たちは、ゾロゾロト帰って行く。
みんな疲れ果てているようだ。本の貸し出し、返却、整理、修繕。迷子の子供のアナウンス。
「はい! さよなら」
私は最後まで残って、本の整理をしていた。
誰もいない図書館に一人、私だけ。ここならいくら騒いでも、歌っても誰にも怒られることはない。
まあ、私がそんなことをするわけないけれど。
「これで終わり」
さあ、鍵をかけて帰ろう。私は館長室にある鍵を取って、関係者用出入り口の鍵をかけた。
「……よし」
コンビニに寄って、ご飯買って行こう。
「いらっしゃいませー!」
私の高校に通っていた頃、引っ越してきたアメリカ人の子が言っていた。
「何で日本人って、客の方を見てないのに『イラッシャイマセー』って言うの?」って。
私は思った。やっぱり無知なだけなんだな、と。「いらっしゃいませ」とわざわざ言う理由は、「他の作業をしていても、あなたの存在を知っている」と思わせて、犯罪を抑止するため。これは、百科事典に載っていた。やっぱり、ノンフィクションだけが正解なんだ。
私は残っている弁当を取った。
「パスタしか残ってないか……」
夜にパスタって結構重いけど、しょうがない。
「ありがとうございましたー!」
支払いを済ませて、コンビニから出た。
十分ほど歩いて、私はポツリとつぶやいた。
「いつまで続くんだろ……。この生活」
「もう終わりますよ」
「――ッ⁉」
そう言った瞬間、後ろから囁かれて、私はハンカチで口をふさがれた。
「んー!」
私の抵抗も空しく、体の力はストンと抜けてしまった。
ああ、殺される。お母さんに会える。
最後まで読んでくださりありがとうございます。