#44
「あら、みんないいですね。羨ましいです。私は水に入れば故障するので、入れないのですが」
イブは、悔しそうな顔をして言った。
やっぱり感情はあるみたいだ。
「ねえ、イブは好きなものってあるの?」
「断末魔ですかね。普通の人生じゃ、一回も聞けないじゃないですか♡」
「まあ、そうだろうね」
断末魔なんて、人生で一回も聞きたくないけど。
「さあさあ、そんなことよりも。そろそろプールはお開きにしてくれませんか? これから食事の準備があるので」
みんなプールサイドに上がり、イブからもらったタオルで体を拭いていた。
「私、もう帰るね」
夜空ちゃんはそのままパーカを着て出て行ってしまった。
「あーあ、行っちゃった。あの、残った皆さんでプールの掃除係を決めてください。決め方はこのクジで。赤い印がついているものを引いた人が、掃除係です。拒否権はありません」
まあ、クジ引きなら公平だろうけど、僕もやりたくないな。室内だとしても、掃除する時はズボンの裾をめくらないといけないから、寒いし。
そう思いながら、みんなくじを引いた。
「あ、トマトだ~」
「私……ですね。掃除は嫌いじゃないので、構いませんが」
味見沢さんと吉野さんになった。
「じゃ、よろしくですね~」
部屋に戻ると、イブがテレビに映っていた。
「フフッ、相変わらず運悪いですね。無愛想な冷ちゃんとか、根暗な虚ちゃんとからまだしも、鍛えてる伊織君にプールの中に落とされても、全然萌えないよね~」
「そういうのどうでもいいよ。水面に顔面ぶつけて痛かったけどさ」
そう言いながら鼻を押さえて上を見上げた。
そんなとき、食事アナウンスが流れた。
「ああ、行かなきゃ……」
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