#43
遅れてごめんなさぁ~い!!
「あーあ、疲れた疲れた。と言っても、ここには娯楽もないんだよねー」
「あるのは、プールくらい?」
そう言った時、誰かがドアをノックした。
ドアを開けると、白石さんがいた。
「あ、あの、えっと……イブさんが『みんなでプール入ろうよ』と言ってました。みんなやることなくて、結構ノリ気みたいで、お二人もどうですか?」
「……うん。行こうよ。あのプール、ちゃんと温水になってるし」
「僕もすることないから行くよ」
「リビングにイブさんがいます。水着渡して下さるみたいなので、行けばもらえると思います。私と味見沢さんはおやつにクッキーを作っているので、皆さんに伝えておいてください」
「分かった、ありがとう」
「いえ、それでは……」
白石さんはそう言って、自分の部屋に戻った。
「イブちゃんも入るのかな」
「それはないんじゃない?」
「ま、とりあえず行ってみようか」
リビングには、イブが立っていた。
「あっ、来た来た。ほら、どうぞ。ま、まあ、男子はみんな一緒だけど、女子はワタシが着てほしいものを選んだけなんだけどね」
「え、それって危なくない?」
「……うん大丈夫だよ」
「間があるのって、結構怖いね。まあ、パーカ着るけど」
部屋に戻る途中、白いワンピースを着ている未来さんとすれ違った。
「そのワンピース似合ってるね」
「イブからもらった。華子はすぐに水着に着替えてもう行っちゃったけど、未来は海とかプールとか嫌いだから。まあ、様子見に行くけど。華子は放っておいたら、何しでかすか分かんないし。じゃ」
そう言って、未来さんは走り出した。
「じゃ、私達も行こうっと」
別れて、僕はすぐに着替えた。
水着とかプールって何年ぶりだろ……。
プールに行くと、びっくりした。前まで屋上にあったのにいつの間にか青い屋根がついてる。証明も付いていて、かなり眩しい。
それに、普通に泳いだり、水につかるだけだと思っていたんだけど、南国のリゾート地みたいに、水面に銀色の丸いトレーを浮かばせて、その上にワイングラスが二つ置かれている。中にはトロピカルジュースが入ってるみたい。
みんな普通に満喫してる。あ、でも、何人かいないみたいだな。
「もう来てたんだね」
未来さんの隣に座っていた。
「うん。気になって、早く見たくて」
「そっか。でも、プールの中に入らないの?」
「うん、見てるだけでいい」
そう言って、夜空ちゃんはどこかをまっすぐ見ていた。
「おい、おい、東条」
「えっ?」
顔を動かすと、プールの中で立っていた音寧君がこっちに何か言っていた。
「手、出せ」
言われた通り手を差し伸べると、そのままプールの中に引き込まれた。
「わっ、危ない!」
僕は派手にプールの中に突っ込んで、浮かんでいたトレーはプールサイドに飛んで行った。
「あら、大丈夫?」
「うん、何とか」
「なあなあ」
そう言って、音寧君は他の人の目もくれずにプールの端に寄って、耳打ちした。
「なあ、やっぱ星乃ってスタイル良いな」
「え? あ、そうなの、かな。僕はよく分かんないけど」
ビキニだから、ボディラインははっきり見えるけど、まあ、細身ってことしかよく分からないや。
「いいんだってば。何食べたら、ああなるんだろうな。俺のオーケストラにいる女にも教えてやりたい」
「さすがにそれは分からないけど。女の子って、そんなに魅力的なものなの?」
「そうだよ。まあ、俺が異常だってのは知ってるけど。みんな可愛いから、しょうがないって。俺の好みじゃない子には、俺だって興味ないし。それにお前が全然興味ないのも、変な話だろ」
「音寧君は、どうやって接点を作ってるの?」
「え、普通に話しかけたり」
「へぇ~、そうなんだ」
そう言って、音寧君はプールから出た。
この中にいる子の中で、一番高校生って感じかもしれない。
最後まで読んでくださりありがとうございます。