#42
その後は、昼食以外どこにも行かなかった。ずっとぼうっとしていた。
――二人も消えて、逆に夜空ちゃんにとってはいい事が起きて、僕は色んなことがぐるぐると回っていた。
幸と不幸は逆の存在。でも、誰がどんな風にその幸をつかむのか、はたまた不幸をつかむのか。それは誰にも分からない。
全然忘れられない。絵藤君は断罪の後、笑ったんだ。これから死ぬのに。まるで、これが本望だと言わんばかりの嬉しそうな笑みだった。
確かに、僕たちは正しい人を断罪した。東雲君を殺した人、今回で言えば絵藤君をちゃんと指名出来た。それに科学的証拠は乏しくて、ほとんど、夜空ちゃんのひらめきだったけれど。
でも、当たった。ちゃんと最小の命が落ちた。いや、落ちてほしくない。あの奥の部屋で生きていてほしい。イブのことなら何をするか分からない。「もう死んだ」と言いながら、生きてる――かもしれない。いや、生きてるに違いない。そう思っておこう。
ベッドに寝転んだ瞬間、インターホンが鳴った。
「……誰か来た?」
そう思って、ドアの目の前に来た時にドアが開いた。
「うわっ!」
鍵、ちゃんと閉めたはずなのに!
「だーかーらー、そんなバケモノ見た時みたいな悲鳴出さなくてもいいでしょ。私は修学旅行の引率の先生じゃないんだからね!」
「……」
「こらこら、思考停止しないで」
「あ、うん。ごめん、その後半の例えが予想外で考えてた」
「何でもいいから、とにかく考えさせた方が正気に戻るかなって。っていうか、もう夜だよ」
「え⁉」
「ほら、みんな待ってるよ。ねえ、もしかしてアナウンス聞こえなかったの?」
「うん。あの……やっぱり何でもない」
なぜか隠してしまった。
「彩斗君が生きてたら、でしょ」
――ッ⁉
「図星だね。うん、私もそう思ってるよ。まあ、それを保証してくれる人なんかいないけどね」
そう言って、僕の手を引いて立たせた。
「まあ、今はみんな揃ってる。とりあえずそれでいいんじゃないかな。都合よく筋書き通りにはならないしね」
最後まで読んでくださりありがとうございます。