#38
「もしもし」
目を開けると、イブが立っていた。
「がっつり寝てましたね~。みんなもうご飯食べて、自由に行動してますよ~」
「えぇ! ねえ、今何時か分かる⁉」
「えっと、あ、ちょうど九時が過ぎた頃ですね。断罪が終わってから、丸一日寝てたんですよぉ~。私、てっきり死んじゃったのかと思って、脈計っていたんです~。生きてるようで良かったです~」
「そう言われれば、お腹減って来たなあ」
「へぇ、やっぱり人間は簡単な仕組みなんですね。聞けば空腹感が襲ってくるなんて」
「そうなのかもね」
そう言って、僕は屋上から降りた。
ご飯食べて、シャワー浴びて部屋で……何しよう。
リビングには誰もいない。
僕はキッチンに立って、冷蔵庫を見ていた。
「……何作ろう?」
お母さん同窓会とかで、夜がまでいない日は、夕食を自分で作っていたっけ。
だから、料理は結構自信あるかも。少なくとも、砂糖と塩を間違えて、すごくしょっぱいマフィンを作ったことのあるお父さんよりかは。
結局早く作れるホットケーキになった。
僕が小さい頃から、日曜日の朝食は決まってホットケーキ。それもはちみつたっぷりの。
何で日曜日に作っていたのか……。理由は分からないけれど、お母さんのホットケーキは絶品だった。
今は作ってくれなくなったけど。今度、作ってもらおうかな。
「おっ、ホットケーキか。うまそ」
「うわっ!」
びっくりした……。
「な、なんだ。音寧君か」
「そんなバケモンみたいに驚かなくても」
「ごめん」
「まあ、許してやるけど。一日寝てたら、さすがにお前も腹が減るか」
「あ、音寧君も食べる?」
「いや、俺はいい」
「そ、そう……」
「じゃ。あ、二階で風早が歌うんだってさ。集中したいから、誰も入るなって」
「分かった」
そう言って、音寧君はリビングから出て行った。
一人でホットケーキを食べて、お皿を洗って……その後どうしよう。
そう思っていると、どこかからアップテンポでこもった音源が流れた。
「あ、風早さんが歌い始めたんだ」
風早さんは突拍子のないことを言い出すけど、やっぱり歌や音楽には真剣に向き合ってるんだなあ。
歌声は聞こえないけれど、伴奏だけ聞いて僕はそう思った。
「僕も勉強しようかな」
勉強と言えば、やっぱり図書室!
最後まで読んでくださりありがとうございます。