#36
「あ、お前の持ってるその定規って、線が印字されてる方は斜めだよな」
音寧君が絵藤君に向かって言った。
「そうか? イラストレーターが使う定規以外でも、大抵は斜めじゃね?」
「あ、そうか! 分かった!」
世紀の大発見をしたかのように、氷室君が言った。
「手紙ついていた粉と、星乃さんたちが持ってきた粉は一致した。でも、それが何かは粒が小さすぎて、ここの設備じゃ分からなかった。でも、顔料じゃないかと思うんだ」
「顔料?」
「うん。犯人は定規を使って手紙を書き、その後給湯室やトレーニングルームへ行き、ダンベルの用意をする。その後、東雲君をおびき寄せた。給湯室で一人待っている東雲君の裏側のトレーニングルームで糸を切って、殺害。ダンベルはトレーニングルームに、糸は六階の廊下において、自分は部屋に戻る」
「……それならいいんじゃない?」
確かに、変なところは無さそう……。
「ねえ、その定規調べさせてくれないかな?」
「――いや、その必要はない。でも、もう一人怪しい奴がいるぞ。自分の素性を明かしてない奴だ。なあ、服部。お前は何の星なんだ?」
あっ! そうか、それが僕の感じた違和感だ。
みんな星の称号を持っているのに、彼女だけ名前を言っただけだった。
「なぁ~んちゃって」
絵藤君は両手を挙げた。「降参する」という合図だった。
「あーあ、バレちったなあ。俺の人生の中で、一番頭使ったんだけどな。まあ、お前らには敵わなかったってことか」
名残惜しそうに絵藤君は言った。
「やっぱりやったの?」
「そうだよ。俺は、ここから出る必要がある。もしここに絵具とかがあれば、誰も殺さずに済んだけど。ここにあるのはシャーペンだけだからさ」
「認めるのね」
「ああ、認めるよ」
「断罪終了デ~ス! それでは、投票してください」
僕は……絵藤君に投票せざるを得なかった。
「は~い、じゃあ彩斗君はここでジ・エンドで~す☆ 何か言い残したことある?」
「……あっ! 東条、お前とは唯一気がある奴だと思ったよ。それと、服部。やっぱ、お前もうちょっと笑った方が良いぜ。それと、さっき俺に言ったことみんなに言った方が良いぞ」
「ええ、そうね。ありがとう」
「じゃあな!」
そう言って、手を振りながら無邪気に笑った。
「あっ、みんなまだ十八歳じゃないんだよねぇ~。人が死ぬとこ見せたら、R—18に引っかかっちゃうので、彩斗君は孤独に終わりを迎えましょうか」
そう言って、イブは絵藤君の手を握って、断罪室の奥にある部屋に連れて行った。
「あ、イブが戻ってくるまで、ここにいてくださいねえ」
僕たちは、一つにまとまって座っていた。
みんな怯えたり、考え込んだり、あるいは断末魔を聞くかもしれないから耳をふさいだりしている。
僕も下を向いて、頭を抱えていた。
ああ、また死んじゃう……。
その時、イブが出てきた。
「お待たせしました~」
最後まで読んでくださりありがとうございます。