#34
「東条さんと、味見沢さんに決まっているでしょう。あるいは、二人で共謀したのかもしれません」
「トマトじゃないよ!」
「本当にそうでしょうか。とにかく、味見沢さんが適当に探して、たまたま一番に東雲さんを見つけたことは、あまりにも出来すぎている気がします」
吉野さんは、僕が味見沢さんが犯人で決定しているみたいだ。
今何を言っても、納得してもらえないだろう。
でも、証拠が無い以上、僕たち二人に絞ることもできないから、今は疑われても仕方がないだろう。
「じゃあ、見つけた証拠を氷室君、教えて」
「うん」
そう言って、ビニール袋に入っているたくさんの証拠品を机の上に置いた。それと同時に、イブもタブレットを操作して、タブレットに証拠の詳細を記載したデータが映された。
「まずは、服部さんが見つけた釣り糸だよ。全部で三メートルくらいのが二本。切り口を観察してみたんだけど、一本の糸がナイフとかハサミで切られて、二本に分かれたみたい。それと、ところどころに鉄の錆がついてたんだ」
「それはどこで見つけたの?」
「六階の廊下に落ちていたわ」
「次に、僕と筆先さんが一緒に行動していた時に特定した凶器のダンベル」
「筆先さんから聞いたんだけど、ルミノール反応を使ったんだよね?」
「そう。毒物保管庫からルミノール溶液と過酸化物溶液、それに試験管を持ってきて、混ぜてからダンベルに一つずつ書けたら、これに反応があったから」
「じゃあ、決まりだな」
「うん、僕も断定できると思う」
「星乃さんと東条君が見つけたのが二つ。一つは、給湯室の上にある棚の奥にある、通気口付近に落ちていたこの色のついた粉だよ」
「えっ! お前ら、あそこに入ったのかっ⁉」
絵藤君が声を上げた。
「うん、だって調べないといけないじゃん?」
夜空ちゃんがすぐに返す。
「まあ、それもそうだけど」
「あ、それと、もう一つは東雲君を給湯室に来るように仕向けた手紙だよ」
「定規で線を引くって、古典的だな」
「しょうがないと思いますよ。ここには、検証に強い研究者がいるんですから」
「指紋とかは付いてなかったけど、代わりに給湯室で見つけた粉と同じ成分の粒が付着してたよ」
「あそこには大量の砂糖が置かれていたし、砂糖ってことか?」
「そう考えるのが普通じゃない?」
……鉄に錆がついた糸に、凶器のダンベル。色のついた粉と、手紙か。
「証拠は、これで終わりだよ」
「この中で考えろってか」
「そんなの無理じゃない?」
「あっ! ねえ、みんな! この手紙って、一方的なラブコールと一緒なんじゃない⁉」
華子さんがぴょんぴょんと跳ねながら言った。
「はあ?」
「ほら、アイドルがもらうファンレターも、ファンが手紙をくれたら返事を書くんだよね。だから、犯人も『来れば殺す』っていうスタンスだったんじゃない? 来なかったら、すぐに逃げたらバレないし。殺してないから、誰かに見つかっても誤魔化せると思う」
「はあ? そんなの出来すぎでしょ」
「おい、星乃! タブレットばっか見てないで、話に参加しろ――」
その時、夜空ちゃんが声を上げた。
「あ、ごめんみんな。イブが望んでいるデスゲームの『議論の面白さ』を根底を覆して、開始五分で分かっちゃった。種明かしできるよ。それと、犯人も」
最後まで読んでくださりありがとうございます。