#29
「おはよう」
リビングには、東雲君以外のみんながいた。
「東雲さん、遅いですね」
「誰か見たのかしら?」
「俺は知らん」
「私も見てないです」
「……探した方がいいですよね」
「じゃあ、手分けして探しましょう。私は六階を探すわ」
「それは何で?」
「私は武道の心得があるからよ。もし、東雲さんが誰かを殺害するために待ち構えていたとして、あなたたちはきっと死ぬわよ。小回りの利く人だもの」
「じゃ、死にたくねーし、あんたに任せるわ。でも――お前が誰かを殺すために『毒物保管庫』に行く、とかじゃねーよな」
「私は殺すつもりはないわ。そうね……。私が死ぬとすれば、誰かに殺された時のみよ」
「疑ってもしょーがねえし、探そう」
僕は、一階を探すことになった。
といっても、パーティが終われば殺風景な部屋なんだ。
置いてあるのは円形の机だけだし。
「やっぱり、いないか」
そう思って、東雲君の良そうなトレーニングルームに向かうことにした。
「キャー!」
二階にいる時、三階から味見沢さんの声が聞こえた。
「――何かあったんだ!」
階段を駆け上がると、廊下の壁にもたれて震えている味見沢さんがいた。
「味見沢さん!」
「ああ、あ、あ、あれ……」
震えた指が差したのは、給湯室の中で倒れている東雲君だった。
「おい! 大丈夫か⁉」
みんなが集まり、絶句していた。
「本当に始まった」
「おい、誰だよ!」
――始まってしまった。
「はぁ~い。ゴホン! 死体が発見されました。一定の捜査時間後、一階の断罪室へお集まりください」
重く、どんよりとした空気が流れ、黙った。
「えっと、僕が検死します」
そうして、氷室君が遺体に近づいた。
「鈍器が頭に当たったことによる頭蓋骨の骨折が死因です。死亡推定時刻は、昨日の《夜時間》以降かと」
「凶器は?」
「そこまでは……。もっと詳しく調べてみないと分かりません」
「死んだ時間とその原因が分かりゃ、十分じゃね?」
「そうね。私もそう思うわ」
「で、次はどうするんだ?」
「仕切る人が必要ね」
「じゃあ、東条で」
「え、何で⁉」
「小説書いてるんなら、それぞれの適役くらい配置できるだろ。ほら、さっさと指示しろ」
「ああ、えっと……。じゃあ、二人一組になって捜査しよう」
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