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星が降る夜、一つ学園の中に閉じ込められて  作者: アーヤ
チャプター2 始まるわけのない絶望
49/69

#25

 その夜、僕はまた和泉の夢を見た。


 ――あの日も、街を見ながら、弁当を食べていた。

 僕は、彼女の隣にいたんだ。もうすっかり一緒に食べるのが定着して、秘密の場所でよく話していた。

 勉強のこととか、お互いの趣味のこと、アイドルのことも話してくれた。


「何か苦しそうだね」


 僕はチラッと見た彼女を見て、そう言ってしまった。

 何でだろう……。


「え?」


「ごめん。何となくそう思ったから」


 僕がそう言うと、彼女は泣き始めた。

 声をあげずに、俯いて……。


「えっ⁉ ああ、ごめん、ごめんね。『許して』なんて言わないから、泣かないで、ね?」


 ハンカチを差し出してそう言うと、今度は声を出して、大声で泣いた。

 防波堤が全壊した、津波みたいに泣いていた。


「うわぁぁああん! 一人なんて、もう嫌だ――」


 その時、僕は知ったんだ。彼女一人で、解決できない問題を抱えていたってことを。

 その後、彼女は泣き止んで、こう言った。


「――やっぱり言えない。言いたくない! 言ったら、多分君もいなくなっちゃうから」


「言わなくていいよ」


 僕は立ち上がって、彼女の前に立った。


「この世界は、本音を隠さないと生きていけないけど、それって世界中にいる全員が対象じゃないよ。言いたくないのが本心なんでしょ? ……って、僕が言っても、説得力ないよね。僕と君じゃあ、世界が違うから」


「ううん、やっぱりボクと一緒だね」


「あれ、一人称が変わった……」


「ボク、男だから。でもね、ボクはかわいいものが好き。この制服もアイドルもかわいいから、女の子のフリしてるんだよ。ほら、女の子の方がかわいい服多いでしょ? ……ごめんね、ボクやっぱり変だよね。こんなボクと一緒にいたくないよね。じゃあね、もう近づかないから」


「――待って! 別に構わないよ。ねえ、逃げる必要ないよ。君の過去の経験から、君は『逃げないといけない』って思っているけれど、でも、それがこの世界の全人類に当てはまるわけないから」


「変なのに、僕から逃げないの?」


「逃げないよ」


「あー、君ってあの子に似てる。だから、初めて会った時話しかけたんだ。ごめんね、君の言うとおりだ。ボク、いるんだ。君みたいに僕から逃げなかった子。あの子のことも、君のことも、信じないとね。あ、ねえ、今度の土曜日にその子と会うんだけど、一緒に会わない? ずっと一人だから、話し相手が欲しいと思うんだ。どう?」


「えっと、別にいいよ。その日は何もないしね」


「うん! じゃあ、十時に駅でね! これから、土曜日まで仕事で学校には来れないけど、じゃあね!」


「頑張れ」

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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