#22 絵藤彩斗&味見沢トマト&イブ
「何?」
「お前、星乃の家族構成、知ってるか? 妹か、姉がいるとか」
「急にそんなこと聞いてどうしたの?」
「最初に話した時、見たろ。星乃に似てる女のイラスト。本当に似てたからさ、もしかしたらアイツの姉妹かもって」
ああ、そう言えば確かに似てたなあ。あのイラストの子。
「姉妹の話は聞いたことないな。血の繋がってない両親がいるとは聞いたけど……。あ、それと年が近い兄がいるとか、ウワサだけど聞いたことあるよ」
「……そ。やっぱり違うかな。ありがと」
「力になれなくて、ごめんね」
そう言うと、絵藤君は驚いたような顔をして僕を見た。
「――お前、本当に優しいんだな。無愛想な俺に謝る奴、お前が初めてだぜ」
「え、でも、悪いのは本当だし」
「ふうん。お前は死なないだろうな。ストーリー展開的に」
「え?」
「ほら、大抵最初に死ぬ奴は、優しくない奴だろ」
そっか。能力者だと思った。そりゃそうだよね。
「二人とも暗い顔してどうしたの? あ、チョコマフィンどうぞ。未来ちゃんが甘いの好きじゃないって言ってたから、あんまり甘くないマフィンだよ」
「はあ、まあ、食べてもあげてもいーけど?」
「あ、じゃあ、僕も。ありがとう」
「ふふっ、トマトは優しいですねえ」
「だって、トマトは暗い顔してる人を笑顔にするために、料理始めたんだもん。それはこれからも変わらないから」
そう言って、イブと味見沢さんは話しながら言った。
「お前にはいないの? 昔から仲いいヤツとか」
「いるよ。アメリカに行っちゃったけど。えっと、ほら『妃和泉』って子、知らない?」
「あー、アイドルの。でも今は全然見ないな」
「うん、詳しくは言えないけど。その子とは仲良かったよ」
「へえ、アイドルと。でも、アイツってメイクも服も女物に寄せてるけど、男だよな」
――え、何で知ってるの。僕、誰にも言ったことないのに。
「何で……知ってるの」
「俺、絵描きだから。女と男の骨格くらいすぐに分かんぜ?」
「そ、そう……」
「まあ、誰にも言ったことないけどな。誰に信じてくれないだろうし。そいつもなんか理由があって、そうしてんだろ。それを探す理由もないしな」
「良かった……」
ずっと守っていた彼女の秘密が、バレていなくてよかった……。
そう思った時、足の力が抜けて、僕は倒れ込んでしまった。
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