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星が降る夜、一つ学園の中に閉じ込められて  作者: アーヤ
チャプター2 始まるわけのない絶望
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#18 服部冷&東雲駆&吉野文編

ここから、三人ずつの会話イベです。

 ずっと、隅で立っている服部さんに声かけよう。

 誰とも話していないし。


 彼女の方へ近づくと、少しだけレモネードを飲んで、顔色一つ変えずにこう言った。


「何かしら? 東条君」


「え! 何で話しかけるって分かったの⁉」


「何となく……かしら。私もよく分からないわ。でも、小さい頃から勘は冴えているの」


「そうなんだ。いいな、僕は鈍感だから、人の考えてることが分かんなくて、戸惑うことがよくあるんだよね」


「あら、それもいいじゃない。先のことが全て分かる未来なんて、楽しくないわ。予想できないからこそ、面白いのよ」


「そっか。そうだよね」


「ねえ、そんなことより、あなたは両親いる?」


「え、いるよ。お母さんもお父さんも」


 どうしてそんなこと聞くんだろう。


「そう。良かったわね。私、覚えていないのよ。両親のことを」


 そう言って、服部さんは僕を見てクスッと笑った。


「両親のことを忘れるなんて、罰当たりね。私、もう少しで死んじゃうのかもしれないわね」


「他に家族は?」


「姉がいるわ。私に全く似ていないけれど」


「お姉さん?」


「ええ、小さい頃に別れて、もう今はどこにいるのか分からないわ」


 服部さんは僕の前を歩き出す。


「じゃあね。あなたと話せて良かったわ。大切な人、殺されないといいわね」


「うん。僕は、みんなよりすごくないし、ずっと平凡だけど、頑張るよ」


「adieu!」


 そう言って、彼女は階段を上がって行った。

 僕よりずっとクールで、大人っぽいんだろうなと思っていたけれど、わざと英語で別れを告げたりって、意外と子供っぽいのかも。


「あ、どいてどいてぇ! 止まれない!」


「え、うわぁ!」


 腰にすごい衝撃が走って、僕はそのまま横に倒れてしまった。


「だ、大丈夫ですか? 頭とかぶつけてませんか?」


 吉野さんが手を差し伸べた。


「う、うん。ありがとう」


 手をつかんで立ち上がった。


「思ったより力あるんだね。僕、非力だからさ」


「司書は大量の本を運ぶことが多いので、自然と力がつきますよ。それと、普通に東条さんは星乃さんをお姫様抱っこしてるので、非力ではないと思いますよ。私の学校の男子生徒は、東条さんよりも身長は高いけど、同じクラスの女の子を東条さんみたいに抱っこできませんでしたから」


「あはは……。僕がそうやって、夜空ちゃんを抱っこするのは、どこかで倒れてる時か、僕にもたれてくるときだけなんだけどね」


「そうなんですか。大変ですね」


「そんなことよりも、東雲君は大丈夫?」


 壁に顔面をぶつけた東雲君の方を見た。


「いったー。イブ、この靴どーなってんだ? 履いた瞬間、暴走したんだけど」


「あっははは! あなたはいつもコートを駆け回っているから、どうにか慣れて普通に移動できると思ったのですけれど、ちょっと力を強くしすぎちゃいました。すみません」


 ケラケラと笑いながらイブは東雲君に謝った。

 本当に情緒が分からないなあ。


「まあ、貸してって言ったのは俺だし、別にいいけど」


「まあ、優しいのですね。良かったわ」


「お前は反省しろって」


 呆れた声で音寧君が言った。


「東条、ごめん。大丈夫か?」


「うん。僕は横に倒れただけだから」


「そっか、よかった」


 そう言って、またイブに靴を返しに行った。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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