#16
その後、三時間ほどすると、またアナウンスが聞こえた。
「さあ、みんな~。パーティですよ~。一回のホールに集まってください」
あの断罪室っていう所も、今だけは楽しいパーティ会場か。
じゃあ、楽しんでおこうかな。まだ分からないけれど、もう楽しめるのは今だけかもしれないし。
部屋から出て、一階に降りると、コスプレのために引きこもっている三人以外はみんないた。
僕も急いで歩いてきたけど、いつもみんないる。もしかして走ってるのかな。……そんなわけないか。
「三人はまだいろいろしてんのか?」
「そうなんじゃない? 星野はともかく、残りの二人はこだわり強そうだし」
「足音が聞こえてくるわよ。もうすぐで来るわ」
服部さんがそう言った時、本当に三人が来た。
「白石と筆先は満足そうだな」
「当たり前じゃん? 星乃、こっち来て」
「うん」
そう言いながら、夜空ちゃんが明かりの元へ歩いてきた。
「めっちゃかわいくない⁉ マジで徹夜して作った甲斐あった~」
「どう? みんな」
「かわいいね、夜空ちゃん! トマト、かわいい服よく分かんないから」
「美人は何しても似合うわね」
「服部さんも美人だと思いますわ」
「そう。ありがとう」
みんなと話していた夜空ちゃんがこっちに来た。
「みんな楽しそうだね」
「そうだね。安心した」
僕は紅茶を淹れながら、答えた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。聖奈君、いつも思うけど、紅茶淹れるの上手だよね」
「僕のおばあちゃんが、教えてくれたから……かな。世界中を旅行して、茶葉を集めるのは好きだったみたいだから」
「そうなんだ。ねえ、似合ってる?」
そう言うと、今まで話していたみんなが急に黙り、シーンとした。
でも、夜空ちゃんの質問には答えないと。
「……似合ってると思うよ。かわいいしね」
「はぁ、相変わらずだね」
「そのセリフ、東条は似合うな。音寧が言ったら、蹴られそうだけど」
「どういうことだよ!」
「そういうこと」
「でも、相変わらずってことはよく言われてるのね」
「そのうち絶対、女の子にグサッと刺されるよ」
「えぇ、どういうこと⁉」
「ああ、天然記念物だぁ」
「ふふっ、かぁいいですね~。あ、それと伝えないといけないことが。イブの言語AIが壊れまして、私の、一人称がいろいろ変わっています。直すつもりもないので、慣れてください」
「え、大丈夫なの⁉」
風早さんが心配そうな声で言う。
「大丈夫ですよ。拙者の一人称なぞ、誰も気づきませぬ」
「一人称じゃなくて、語尾も変わってるけど」
「ふふふっ、今の時代に『拙者』って……」
「あーあ、なんか吉野がツボってるぞ」
「とにかく、楽しみましょう! それでは、かんぱーい!」
イブの乾杯に合わせて、みんなが持っていたグラスを突き上げた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。