#14
「ねえ、イブを壊せば、私達は解放されると思う?」
僕の部屋に入った夜空ちゃんは、ドアを閉めながらそう言った。
――イブを壊せば、解放される。そんな安直な考えが通るとは思えない。
この施設を用意するのにも、あのイブ自身を作るのにも、かなりの資金が必要なはず。
個人で用意するなら、それこそ「金持ち」の例えで使われる「アラブの石油王」並の資金を持っている人じゃないと。
「無理、だと思う」
「……私もそう思う。人殺しを強要するなら、向こうもかなり練っているはずだから。それこそ、世の中で起こりうる“想定外”を全部カバーした感じの。みんなは誰も死なないと思っている。でも、もし誰かが我慢できずに殺したら、みんなはそれでも『待っていれば、誰かが助けてくれる』って」
「いや、殺してでも出たいって考えるんじゃないかな?」
「さあね。でも、生きないと、だね。だって、生きたいって思ったでしょ? あと、これは内緒ね」
「でも、伝えた方が……」
「ダーメ。だって、まだ均衡は崩れてないでしょ?」
「え、でも……」
「ほら、テンプレでよくあるでしょ? ゲームの世界の警察は無能だって。だから、デスゲームに巻き込まれている私たちも、警察を頼りにしちゃいけないんだって」
「え、じゃあなんで僕には」
「教えな~い。でも、君は死んでほしくないからね」
そう言って、ベッドに座った。
「僕も、夜空ちゃんには死なないでほしいな」
「聖奈君って、そういうことサラッと言えるタイプの、天然女たらしだね……」
「え、どういうこと?」
「説明しても意味ないだろうから、気にしないで」
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