#11
リビングから出ると、よく似た二人がいた。
「おはようございます!」
スカートを履いた子が僕に言った。
「華子、ここはテレビ局でも何でもないし、相手は一般人だから。それに、敬語も今はいいでしょ」
「あ、そっか! ごめんね、華子は今羽華子」
「別にいいけど」
「私は今羽未来。“アイドルの星”って言われてる」
「未来はいつもこんなツンツンした感じなんだ。だから気にしないで」
「ツンツンなんかしてない。元からこんな性格なんだから仕方ないでしょ」
「あ、それとね、未来はね、華子と間違うととっても怒るから気を付けてね」
「え、でもどうやって見分けるの?」
「視覚的に分かりやすいのは、ヘアピンじゃない? 私は左。華子は右」
「そうだね。双子アイドルってこういう時、不便だよね」
「頑張るしかないでしょ」
「うん、じゃあね~」
二人と別れると、あのギャルっぽい子がキッチンへ入って行った。
「料理するのかな。行ってみよ」
夜空ちゃんが忍び足で近寄って、大声を上げた。
「わっ!」
「ぎゃっ! って、なんだ、あんたたちか」
「ごめんね~。無防備な人を、驚かせたくなっちゃうのが人間だよね~」
「心臓に悪いから、年寄りにはやめた方が良いと思うよ? そのままポックリ逝っちゃうかも」
「うん、もちろん若い子にしかしないよ」
若い子は全員夜空ちゃんのターゲットになるんだな……。
「さあ、そんなことより! 君の名前は?」
「ああ、そういえば言ってなかったけ。筆先雅。書道家が何とかって言われてるけど、キョーミなし。あ、でもそのおかげでアタシの高校と家に金が入ってるんだよねー。それと、奨励金とか何とかって聞いたけど、金以外はどーでもいいし覚えてないや」
「どうしてそんなに執着するの?」
「そりゃ、金があればおいしいものがたくさん食べれるから。アタシはそのために古臭い書道やって、金稼いでるんだから」
僕からすれば、結構ひどい言い方だと思うけれど、彼女にとっては書道もそれだけの認識なのかも。
「あ、二人も食べる? ふわふわ卵のオムライス」
「食べる!」
「あ、僕はいいよ……。お腹空いてないから」
「あっそ。じゃあ、うちらだけで食べよ」
「うん」
僕は椅子に座って、オムライス食べてる二人の会話を聞いていた。
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