#10
「あ! 二人の名前、聞いてなかったね!」
「アタシは風早志杏です。渋谷のフューチャーストリートで、毎日歌ってるんだ。それと“ストリートミュージシャンの星”って言われてるんだ。これくらいかな」
「フューチャーストリートって、ライブハウスが多いよね」
「うん、そうだね。ライブハウスってどうしても騒音が目立つから、いっそのことライブハウスを同じところに集めちゃおう、ってことで作られたみたい。でも、イベント開催する時は、ライブハウスを奪取するところから始まるんだよね。音楽好きのためのストリートだから、他よりも激戦って感じ。そのために私はあちこち走り回って、どこで誰が歌うのかいつも確認してたんだ。じゃ、私は自分の部屋で歌うから、じゃあね~!」
「さっき聞いたけど、志杏ちゃんの部屋は防音室みたいだね。ちゃんと才能に合わせて部屋を作ってるのかも」
「へえ」
「じゃ、次行こう」
次はリビングに戻ってきた。
そこには、紅茶を飲んでいる三つ編みの子がいた。
それと、彼女と談笑しているシスターのような服を着た子も。
「まあ、お二人も仲良くなったのですね」
「えっと、どういうこと?」
「ふふっ、わたくしには何となく分かるのです。仲のいい方達のオーラは、どちらも同じに。そして、お二人の色は、同じですね。不屈の色と言われている紺色ですわ。あ、名前を申していませんでしたね。わたくしは皇青藍と申します。教会で、シスターとして生活していますの。都会では“救済者の星”と言われているみたいですわ。そう言われるようになったきっかけは、私も分からないのですけれど……」
「じゃあ、自分の才能が分からないっていうこと?」
「ええ、そういうことですわね。ですから、才能ある皆様と同じような扱いを受けることが、恐れ多いのですけれど……」
「別にいいと思うよ。才能がないって思いこんでる人ってたくさんいるしね。そっちの君は?」
三つ編みの子が眼鏡をかけ直しながら答えた。
「え! あ、えっと、ちょっと待ってください。えっと、すみません。白石虚です。“写真家の星”と言われてますぅ」
「写真好きなんだ?」
「両親が写真屋で、現像する以外にもカメラを売る仕事もしていたんです。それで、私も小さい頃から写真を撮っていたんです。私よりも素晴らしい写真を撮る方は、世界中にたくさんいるのですけれど……」
「あ、ねえねえ虚ちゃん。“星の制度”ってね、未来ある学生も対象らしいよ。つまり、虚ちゃんもこれから素晴らしい写真を撮る人になるって見込まれてるんじゃないかな?」
「ひぇ、プレッシャー……。でも、頑張りますね!」
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