作家の星(2)
「行ってきます」
いつものように教科書とノートをカバンに詰めて、制服に着替えて、ご飯を食べて、学校に行く。
「いってらっしゃい」
こんな普通で当たり前の“退屈”に娯楽を与えるために本はある……と思う。
「あ、あれ黎明学園の制服じゃね?」
「だな」
「黎明って進学校だよな」
「都内でトップクラスとか」
……僕を見て、体育会系の男子生徒がヒソヒソと話している。
「青だ」
「おはよう!」
「おはようございます」
体育の先生、やっぱり威圧感あって怖いな。
教室に行って、椅子に座った。いつもの雰囲気だ。僕はこのクラスに、いや、この世界に友達と言える友達はいない。友達の作り方が分からなかった。だから、ずっと一人。
居心地は悪いかもしれないけど、たくさんの人と絡むよりもこっちの方が身軽だ。僕、本以外友達いないな。
まあ、楽しめてるしいっか。そして、今日もいつも通りの一日を過ごした。
昇降口に降りると、人だかりができている。この前の期末の順位が出たみたいだ。
「僕も見てみようかな」
実は、今回のテストはすごく頑張った。だから、きっとトップ10に入っているはず。僕、運動も勉強もそこそこできた。と言っても、全部そこそこ。どれも「よく頑張ったな」と言われる程度。どこの部活も入ってないから、運動部よりは足は遅いけど、それでも普通よりは速いくらい。勉強もESS部とかPC部よりはできないけど、最低でトップ20には入っていた。
つまり、そこそこよくできた普通の高校生。こんな区分け方をされるから、僕もうんざりしていた。
「えっと……。僕は三位か」
やった! 最高記録だ! 僕はルンルンな気分で帰路についた。
「お父さんに自慢しよっと」
その瞬間、最後の曲がり角だった。誰かにぶつかって、尻餅をついてしまった。
「……」
目の前で立っていたのは、黒いパーカのフードを被った女の子だった。青いヘッドホンを首にかけている。あれ、この服装どこかで見たことあるような……?
ぼうっと見ていると、スマホをパーカにしまって手を差し伸べた。
「……前見てなかった。ごめん」
「あ、いや、僕もごめんね」
手を取ると、グイっと力を入れて男の僕を立たせた。この子、僕より力強いかも。
「じゃ」
そう言って、またスマホを取り出していた。
不注意だったな。前ちゃんと見ないと。
そう思いながら玄関のドアを開ける。
シーンとしていた。おかしいな。いつもなら、絶対にお母さんが「お帰り」って言ってくれるのに。そう思いながら視線を落とす。
お母さんがいつも履いている靴はちゃんとあった。今日は同窓会でもないし、もしかしてどこかで倒れてる⁉
そう思って、靴も脱がずにリビングへ入った。
「――ッ⁉」
目の前に、魔女が着るような黒いローブを着た人が立っていた。
お母さんはソファの上で寝ている。
「だ、誰だ!」
「……すまない」
そう言いながら、目の前に何かを吹きかけられた。
「な、何をっ!」
そう言った時、目の前が真っ暗になった。ダメだ、倒れる。眠い。
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