#5
「……もう寝るよ。おやすみ」
ベッドの中に潜った。
「僕は、何が何でも帰らないと」
誰も欠けることなく、帰れる方法を模索しよう。
まずは、みんなと仲良くならないと。
そう意気込んで、目を閉じた。
「うん、絶対」
そう思うと、すんなりと寝れることができた。
「もしもし、朝ですよー」
やっぱり夢じゃなく、僕はイブのモーニングコールで目が覚めた。
顔を洗って、昨日洗濯機にかけておいた制服に着替える。
廊下に出ると、いかにも眠そうなというか、立ったまま寝るんじゃないかと思うくらい、フラフラとしている星乃さんがいた。
「あの~、大丈夫?」
「んぇ? ああ、大丈夫。夜型人間だから、朝に起きるとこうなるの」
僕も夜の方が好きだけど、彼女は僕以上に不健康だな。
「みんなここの奥のリビングに行ってるんだって。そこで、ご飯食べようって」
「そうなんだ」
「うん、行こう」
みんな、やっぱり怖くないのかな。
「おぉ、来た来た」
リビングも広くて、最後に来たのは僕たちみたいだ。
「みんなおはよ~」
「って言ってるけど、眠そうだな」
「こっち空いていますよ」
昨日の怯え切った顔ではなく、普通の顔つきに戻っていた。
「みんな揃ったし食べよう」
「これ誰が作ったんだ?」
「トマトだよ。トマト、コック見習いだから」
「これに毒が入っていたりして」
黒いヘアピンをつけている子が、クスクス笑いながら言った。
「やめろよ、食べづらくなるじゃねーか」
「クスクス、証拠もないのにビビるとか、オクビョーモノだね」
「何だと!」
「毒なんか入ってないよ。味見沢家の名に誓って」
「味見沢? 味見沢フーズの娘か」
ああ、色んな冷凍食品の製造に成功して、今やトップのシェアを誇るっていう……。
「そうだよ。トマトは、パパの跡取り~」
「じゃあ、信用していいんじゃない? まともにたくさんのご飯を作れる人なんていないじゃん?」
シアン色の髪の子がそう言った。
「まあそうだね。ずっと信用しないわけにもいかないし」
星乃さんの発言でみんなが賛成し、食べ始めた。
食品関係の社長の娘、ということだけあって、すごくおいしかった。
「あー、ねみー」
食べ終わると、あくびをしながら星乃さんが言った。
「君、ゲーマーでしょ? 大会の中継、テレビに映ってたの見てたけど」
スラッとした子がそう言った。
「スイッチ入れる方法とかないの?」
「あるよ。私、目から入る情報全部覚えちゃうから、いつの間にかゲーム実況者としてのテンションのスイッチを切り替えられるようになったよ」
「今はそれでいいんじゃない? 本当に倒れそうだもん」
「うん、トマトもそう思う」
「みんなからすれば、これはイレギュラーな状態なんだよね。知らない高校生が集まって、デスゲームを命じられた……。まあ、そっか」
独りでブツブツと言って、状況を整理してから、みんなに向かってこう言った。
「分かった」
そう言うと、目を閉じた。
「ラララー!」
「うわっ!」
「ごめんね。叫ぶことがスイッチなんだ。うん、まだ体内時計は狂ってるけど、さっきよりは目が覚めた……かも」
「断定じゃないんだ」
でも、さっきまでよりは、ちょっと人間味のある顔色になったかも。
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