#2
「死んだ?」
シアン色の髪少女がそう言った。みんなモニターの少女に注目している。
その時、少女が立ち上がった。
「お見事です。アナタは死にませんでしたね」
「うん。そこのビームが目標として認識するのは、動くものだけだもんね」
「なるほどね」
確かに、モニターが例として示したあの映像も、実際に風船が撃たれた時も、全部目標は動いていた。彼女はそれを分かっていたのか。
「それでは、待機している皆様。そちらのドアの中へ進んでください」
あ、あの青いドアか。
「未来、行こう」
「あ、ちょっと待って!」
よく似た少女たちが走って中に入った。
「行った方がいいですよね」
「いや、行かなきゃダメでしょ」
そう言って、みんなゾロゾロと入って行った。
ただ一人、茶髪の少女はそこに座っていた。
「君は行かないの?」
「行きます」
そう言って、ゆっくり歩き始めていた。微かに手が震えていた。
きっと怖いんだろうな。
僕も彼女の後ろについて行った。
青いドアの向こう側は短くて、一分くらい歩くとつながった部屋に着いた。
そこは、さっきまでビームが発射されていた部屋だった。その証拠に、電気椅子とちぎれた風船、それにモニターに映っていた彼女が電気椅子の目の前に立っていた。椅子の背もたれ側に僕たちがいるから、気づいてないみたい。
「あんた、よく生きれたね」
オレンジ髪のギャルのような少女が言った。その声に反応に、フードを外しながらこちらに来た。手には、モニターで見た
「デスゲームって、確定の死にゲーじゃないからね。それと、ほらこっち来て」
パーカのポケットに手を突っ込んで、歩き始めた。
「ほら、あそこ。みんなが来る前、適当に歩いてたら探したんだ」
ピエロのヌイグルミが、丸いアンティーク調のテーブルに置かれていた。
「あれって、中に人工知能が入ってるみたい」
「その通りです」
「うわ!」
「ほらね」
「アナタ方には、これからデスゲームを行っていただきます」
は?
「この施設は閉鎖されています。ここから脱出するには、誰かを殺し、その後の“断罪”と言われる話し合いで生き残ってください」
座り込む人や考え込む人もいる中、パーカの少女だけは眠そうにあくびをしていた。
「驚かないの?」
「これくらいでは」
これくらいって……。死ぬかもしれないのに?
「それに、知らない所に監禁されてデスゲームって、普通というか、ありきたりというか、面白みがないというか」
「素晴らしい! アナタの瞳を見せてください! お願いだ、アナタのような瞳は見たことがない。この宣告をされてなお、驚きもせず、泣くこともせず、ただ普通のことだと言い放った。初めてのケースだ!」
「私の目、か。ま、それくらいならいいよ」
そう言って、ヌイグルミの前に立った。
「ああ、綺麗な瞳だ。これこそが至高の瞳!」
「何だ? あのAI。気持ち悪い」
「アナタの瞳を見れただけで満足だ。アナタに選択肢を二つ与えます。このままデスゲームを続けるか、アナタだけここに残って、他の皆様を開放するか。さあ、選んで!」
「つまり、私はどっちにしろここに残るんだよね。じゃあ、みんなを開放していいよ」
究極な選択肢を少しも考えずに選んだ。
「――誰か来るわよ」
セーラー服の少女が言った。
また緊迫した雰囲気になり、僕は倒れそうだった。
「ご名答」
現れたのは女性だった。裾が広がったワンピースに色のリボンが編み込まれたコルセットをつけている。でも、僕たちと違うのは関節部分が全て球体であること。
「夜空ちゃん、そこから逃げて」
「待って! や、やめてくれ、やめろ!」
彼女が離れると、女性は持っていたボタンを押して、ヌイグルミを爆発させた。
「デスゲームは続行よ。さっきの発言は、ヌイグルミに入れたAIの暴走だから」
その発言にみんなは落胆した。
「……ねえねえ、何であのヌイグルミは私の瞳に興味を持ったの?」
「瞳を採集している連続殺人鬼の人格を組み込んだの。まあ、ゲームの中のキャラクターだから、この世にいるかは知らないけれど」
「ふうん」
最後まで読んでくださりありがとうございます。