#1
目が覚めると、僕は知らない教室にいたんだ。
何でここに居るのか必死に思い出そうとしたけど、僕が覚えているのは、魔女みたいな人が僕にスプレーを吹きかけたところまでだった。
「とにかくここを出ないと」
教室を出ると、そこは廊下で、テーマパークの順路みたいに、赤い矢印の看板が色んなところに置かれていた。
「これをたどれってことなのかな」
そう思って、歩き始める。その時、ぼんやりとしていた頭もはっきりとしてきて、ここの異様さがよく分かった。窓があったと思われるところは鉄板が打ち付けられていて、薄暗い。
ああ、怖い。どこに行くんだろう。自分から「死」に近づいているみたいだ。
そう思うと足がすくんで動けなくなる。
だから、とにかく何も考えないことにした。
今は誰かと会わないといけない。
歩き続けていると、次第に明るいところが見えた。
「誰かいるかもしれない……!」
初めて経験する期待に胸を膨らませて、ドアを開けた。
「……あ」
多くの人と目が合う。みんな困っているような顔つきだ。
でも、ただ一人壁にもたれたまま、何かを考えている長いスカートのセーラー服の少女もいた。
「お前、誰か見たか?」
金髪にヘッドホンをかけている身長の高い男子が言った。
「え? いや、誰も」
「全員かな」
「さあね」
よく似た少女たちは、くすくすと笑いながら話している。
誰かに話しかける勇気もなかったから、ここをよく観察することにした。
丸くて、すごく広い。広さで言えば、学校の体育館くらいかな。
そして、一際目を引くのは中央から吊り下げられている大きなモニターだった。
鎖でつながっているけれど、落ちないのかな。
「ゼンイン ソロッタミタイデスネ」
モニターにピエロのヌイグルミが映って、機械的な声が聞こえた。でも、少しだけ男性っぽい。
「ひぃ!」
三つ編みの少女は驚く。
「突然ですが、皆様には殺し合いをしていただきます。ですが、まずはレクリエーションとして。軽いデスゲームをご覧ください」
みんな状況が呑み込めなくて、黙ってモニターを見つめていた。
僕もそうだった。
モニターに、電気椅子のような鉄で出来た椅子に拘束されている人が映った。パーカのフードで隠れて見えないけど、体つきからして、僕たちと同じくらいの女の子みたいだ。彼女がいる部屋も、今僕がいるところに似ている。
「それでは、拘束を解いて」
両手がだらんと垂れ下がる。
「起きろ」
あの声で、少女は立ち上がった。
「彼女のいる部屋には、天井から十丁のビーム発射装置が設置されています。目標の動きを正確にとらえて、分析し、急所を狙ってビームを発射します。例えば……」
風船が落ちてきて、それを一番近くの装置が撃ち抜いた。
「このようになります。そこで、少し前実験として……」
次に流れたのは、十数名の男女が少女のいる部屋にいる映像。近くにあった観葉植物がビームで撃たれると、彼らは慌てふためいて、逃げた。しかし、ビームが正確に心臓を撃ち抜いて、みんな動かなくなった。
「このように、もちろん人間も目標としてインプットされています。そして、本題です。そこにいるあなた。絶対に死なないでくださいね」
「うん、分かった。でも、一つ質問。反動で動いた場合は、どうなるの?」
「それは目標として認定されません。実験でも実証済みです」
「……分かった。これに座ったら始めていいよ」
そう言って、彼女はまた電気椅子に座った。
「では、始めます」
その瞬間、銃口が彼女に向いた。
そして、青いビームが一斉に彼女の心臓めがけて直線に進んだ。
「怖いなら、見ない方が良いわよ」
セーラー服の少女が、茶髪の少女に言った。
十分ほどビームが当たったままだった。彼女は全く動かない。
本当に生きてるのだろうか。それとも……。
「終わりです」
最後まで読んでくださりありがとうございます。