ストリートミュージシャンの星(2)
「初優勝、おめでとー!」
「ありがとうございます!」
「ほらほら、私じゃなくて、みんなに思いっきりサービスしちゃって! みんなー! アンコールしよう!」
会場にいる客が、アンコールをした。
「じゃあ、もう一回歌うよー!」
ライブが一段落した後、お父さんが戻って来た。
「ありがとな、志杏」
「うん、楽しかったよ。じゃ、私は買い出し行って来る」
「気をつけろよ」
最近は私も新しいユニット組んで色々歌ってるけど、やっぱりいいよね。誰かと歌うって。
私、誰かと組んだことなかったんだよね。ピンとくる人が誰もいなかったから。
でも、ソロライブの後に話しかけていたアイツらと成り行きで組んで、今は軌道に乗り始めたって感じ。
スーパーに入ると、またアイツに会った。スーパーの制服姿の。
「お、お前も買いに来たのか」
「悪い? っていうか、その服ほんっと全然似合わないよね」
「うっせー。ここが一番時給がいいんだよ。つまり、短時間でより稼げるってわけ」
「ふうん。まあ、頑張れ。じゃあねー」
ライブで客を煽りまくってるのに、スーパーではいい人ぶってるんだよね。
そのギャップが面白くて、いつも笑っちゃうんだよね。
今日は何にしようかな。
そう思って商品棚を見ていると、新鮮なトマトが目に入った。トマトの冷製パスタにしよっかな。
トマトの旬は落ちたけど、健康にいいし。
「よし、決めた」
じゃ、スパゲッティとトマトと、バジルを買おう。
買い物カゴに入れて、レジに並ぶとそのレジ打ちをしている人がアイツだった。
「げ、お前かよ」
「別にいいでしょ」
「お買い上げありがとうございましたー」
無愛想なんだから。レジ打ちの人があんなだと、怖いよ。
まあ、幸い顔がいいから、おばさんには評判らしいけど。ここではいい人ぶってるし。
「すみません、志杏さんですか?」
外に出ると、誰かに話しかけられた。
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