ストリートミュージシャンの星(1)
「あ、志杏だ」
「げっ、なんでここにいるの?」
「別に買い物くらいいいだろ。お前こそ、何でここにいんだよ」
「別に。ジャケ買いしに来た」
「ライブの?」
「そ。次駅前で歌うのを漁りに来たの」
「ふうん」
「あ、あった。ピンときたやつ」
「ほんとにそれでいいのか?」
「もちろん、賭けても良いわよ」
「いや、やめとくよ。俺が負けるからな」
「あっそ」
つまんないなー。
「お買い上げありがとうございました」
店に出ると、おじさんが立っていた。
「あ、おじさん! どうしたの?」
「志杏を迎えに来たんだよ。お前んとこの親父さんが、店番を頼んでほしいみたいでな」
またどこか行くんだ。
「分かった。ありがとう」
「おう、頑張れよ」
「うん!」
私は買ったCDをポケットに入れて、ライブハウスに戻った。父さんは若い頃からライブハウスを経営してるから、機材にも詳しい。近くのライブハウスでの機材トラブルを直しに行くんだろうな。
「父さん、来たよ!」
「ありがとな。じゃ、俺の代わりにMCしてくれ」
「うん」
そう言って、マイクを受け取った。
「えっと、まずは自己紹介ね! さっきまでMCしてた人の娘の、風早志杏です! 今日のイベントはトーナメントだよね?」
「そうだぞ!」
「OK! じゃあ、このライブハウスはまずMCが歌うことになってるから、早速歌っちゃうよ!」
「フー!」
客の歓声が響いた。
「あーあー、マイクOK。それじゃ歌うよ!」
あー、歌ってる時って楽しー!
小さい頃は「ここ高く歌わなきゃ!」とか色々考えていたけど、今はもうフィーリングで歌ってる!
「はーい! 私は終わりね。じゃ、本題に入るよ! トップバッターはこちら!」
「よろしくお願いします」
まだ経験が浅いユニットだけど、恥ずかしがらずに盛り上げ役として客を煽ってるから、バランスがいいんだよね。もちろん歌はまだまだだけど。
最後まで読んでくださりありがとうございます。