アイドルの星(1)
「『Gothic Diamond』のお二人、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
楽屋に戻って、僕たちは制服に着替えた。
「あー、疲れた! 終わったね!」
「そーだね」
「萌さん待っとこう」
「うん」
「明日は、お仕事ないよね」
「うん」
「今日のライブの衣装も華子が作ったんでしょ?」
「そうだよ。顔を見せられないなら、衣装は凝りたいもん」
「不運、縫ってる時に手を突かなかったら、別にいいけどね」
スマホを見ながら待っていると、萌さんが来た。走って来たみたいで、息を切らしている。
「遅れてすみません! あ、あのこれ……。スタッフの人からもらいました。どうぞ」
そう言いながら、ペットボトルのフタを回して渡した。
「どうぞ。えっと、甘いスムージーらしいです。でも、果物しか入っていませんから、カロリーは低いって」
ふうん、それなら飲んでみようかな。
一口飲んでみると、確かに甘かくて、おいしい。家で作っているスムージーはもう飽きてきたし、これでもいいかな。
そう思って、ラベルを見た。でも、僕が読めない文字。フォントから言って、ロシアのキリル文字? っぽいような気もするけれど、何て書いてあるか分かんない。
「おいしいよ」
「うん」
「良かったです」
……あれ? ちょっと眠くなってきた。
疲れてるのかな、最近学校にも忙しくて行けてないし。
「二人とも、すみません!」
「モエ、アリガトウ。コレ、カネ」
知らない男が入って、華子を担ぎ上げた。
声を出したいけど、力が入らなくて、出せなかった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。