科学者の星(2)
家に帰る途中、ぼうっと考えていた。
僕、この状況を打破しないといけないって分かっていたのに、何もしなかった。
そのツケが今回っているんだろうな。
その時、スマホが鳴った。
「もしもし」
「一颯久しぶりだな」
「うん、そっちはどう?」
「こっちはみんな元気だぞ。日本はまだ暑そうだな」
「うん」
「勉強は?」
「今日帰された理科のテストは百点だよ。数学も九十点くらい」
「そうか。頑張れよ」
「頑張ってるよ。父さんと働きたいから」
「はは、それは嬉しいなあ」
父さんは本当に嬉しそうだ。嘘はない。
やっぱり、父さんの次に研究所の所長になる僕は、やっぱりただの「父さん」の息子に過ぎないのかな。
「大丈夫か? 一颯」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか。いいか、一颯。何があっても、努力を諦めるな。それが、誰かが生きるための道になるからな」
「うん、分かってる」
そうだ。父さんは、誰かのために頑張ってるんだ。
「頑張るよ。お土産買って来てね」
「分かってるさ。三神さんはどう?」
「うん、いい人だよ。ごはんもおいしいし」
「そうか。じゃあな」
「痛いっ!」
スマホをポケットに入れた時、後頭部にすごく大きな衝撃を受けた。
その反動で、スマホが側溝に落ちる。
「一颯! 一颯! 大丈夫か、どうした!」
――僕死ぬのか。結局父さんの息子のままで、死ぬのか?
父さんの焦った声を最後に、僕の意識は失った。
最後まで読んでくださりありがとうございます。