イラストレーターの星(2)
ピピピッ
「ん~、るせぇ~」
そう言いながら目覚まし時計のボタンを叩く。
「よし。今日もどっか行くか。な、エイル」
そう言って、写真立てを見た。こいつの写真、これが最後だったな。もっと撮れると思ってたんだけど。
顔を洗って、ご飯を食べてから、スケッチブックとシャーペンを持って外に出た。
「今日はどこで描こうかな」
そう言いながら、適当に歩く。すると、高校の前にある公園まで来てしまった。
「ここでいっか」
受験の前、始めてアイツに出会ったとこだ。
『うわ~、どうしよ』
俺が自動販売機でスポドリを買おうとした時、桜の木の上を見上げてるアイツがいた。
最初は、どういう状況なのか理解できなくて、素通りしようかと思ったんだけど、でもすごく助けてほしそうな顔して俺を見るから、諦めて話しかけた。
「どうしたんだよ」
「あの鳥に、受験票取られちゃって、あんなに高い所に」
そう言って、アイツは上を指した。
「あー、お前運悪いな。……」
そのまま「じゃな」と言って、去ってもよかったけど、名札の色から俺と同じ学年って分かったから、しょうがなくカバン下ろして、木に登った。
「ちょっと待ってろ。取ってやるから」
受験票を取って、飛び降りてアイツに渡すと、うるさいくらいに喜んだ。
「ありがとう!」
「それなら良かったよ」
そう言って、俺はカバンを持って、受験を受けて、見事合格。
入学式の後、クラス分けを見て、俺の教室に入ると、アイツがいた。
「あ、この前の」
コイツが隣かよ、と思いながら、愛想よくしてた。適当に流せばいいだろと思って。
気付けば好きになってたわけだけど。
「ああ、眠くなる日差しだな」
そう思っていると、眠くなってそのまま目を閉じていた。
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