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8.アーティ到着1

 翌朝従者のテッドからの報告で、アーティがそのままバーナード様の屋敷に泊ったことを確認しました。

 2か月後には正式に2人の愛の巣になるのですから、我がミルバーン家が用意した家具や調度品、衣装や宝石類はすべてアーティにかかる費用となります。それについても、すべてテイラー公爵家側が補填することになっています。

 アーティを迎えるために、我がミルバーン公爵家で最も立派な馬車を送り出した後、私は侍女のエリスが淹れてくれた紅茶を楽しみました。


「イブリン様、あのアーティとかいう娘にイブリン様の教師たちをつけるだなんて、何をお考えなのです! あんな娘などいいかげんな教育を施して、どこに出しても恥ずかしい女になさればよろしいのにっ!」


「それでは我がミルバーン公爵家が恥をかいてしまうわ。あの子には『私と全く同じ教育』を受けて貰います。私が6歳で初めて教師についてからの12年間で身に着けた知識を、たった2か月で習得するのは不可能に近いでしょうけれど」


「でしたら寝る間も与えず、心も体も壊してしまえばいいのです。お腹の中にいるといういまいましい存在も含めて」


「そんな人でなしなことは考えてないわ。まあ、あの娘が自主的に飲まず食わずで頑張る分には、口を挟むつもりは無いけれど」


 そうね、彼女に与える知識の中に『小さな毒』を仕込んでおくのも、悪いアイデアではないわね。

 そんなことを考えながら私は紅茶を堪能しました。

 馬車の到着を待つ間に次々に教師たちと面会して、アーティ専用のカリキュラムを組んでもらうようにお願いします。

 私の教師陣は、12年前に隣国にお嫁に行かれた王女様についていた人たちです。つまり、超一流の方々ばかり。

 皆さんには特別報酬をお約束しました。アーティの教育費用についても、もちろんテイラー公爵家の負担です。

 教育の総指揮は私がとります。

 少なくとも2か月後の結婚式までに、貴族らしい発音と仕草、両家の紋章の刺繍、ダンスのステップをマスターし、国内外の主だった王族・貴族の名前をすべて暗記してもらわなければなりません。

 やがてアーティを乗せた馬車が到着しました。予定より遅くなった理由は、大方バーナード様と涙の別れの儀式をしていたからでしょう。現時点では、毎日彼の元へ帰れると思っているはずですが。

 エントランスに到着した馬車から、粗末な木綿のワンピースを着た娘が降りてくるのが見えました。さすがのバーナード様も、私の両親が私のために用意したドレスを、彼女に着せて送り出す勇気はなかったようです。


「さあエリス、義妹の到着よ」


 私は優雅に立ち上がりました。

 今日のドレスは薄桃色で、宝石はルビーを身に着けています。

 新居になるはずだったあの屋敷の、あの寝室に搬入していたものよりさらに上等なもの。姿見をちらりと見ると、シックなデザインのそれは本当に私に良く似合っていました。

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