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5.真意

「で、できます! アタシ、バーナードのためならどんなことでも耐えてみせます」


 黙り込んでいたアーティが突然立ち上がりました。


「そ、そのかわり……私が立派な愛人になれたら……あなたに、すぐに……」


「ええ。その暁には、私はすぐにこの屋敷から出ていきましょう。アーティさんが頑張れば、その日は思いのほか早く訪れるかもしれなくてよ」


 考え込んでいたバーナード様が口を開きます。


「君は本当にそれでいいんだな」


「ええ。私だって、結婚式を中止するのは嫌ですもの。ああ、希望がもうひとつございました。四つ目、バーナード様は2か月後の結婚式の日まで、社交の場へは一切出ないでくださいませ。よろしいですね?」


「わかった、約束しよう。君を傷つけたせめてものお詫びだ」


 お詫びですって! 私はまた扇の陰で笑いました。その程度で詫びになると思うのなら、本当に舐められたものです。


「では、アーティさんの教育は早速明日から取りかかりましょう。明日の午後2時、こちらに迎えの馬車を寄こします」


「安全のために護衛と侍女はつけさせてもらうぞ」


「構いませんわ。それではお二方、ごきげんよう」


 私はテッドとエリスを連れて屋敷を出ました。馬車に乗り込むと、エリスが早速食いついてきます。


「何をお考えなのです、イブリン様。誇り高いイブリン様が、ここまでコケにされてあんな男と結婚なさるとは思えません」


「もちろんしないわ。私は『結婚式を中止したくない』と言っただけ。ミルバーン公爵家の娘は、テイラー家の嫡男と結婚しなければならない。だから、あの娘を我が家の養女にするわ」


 エリスとテッドは揃って驚愕の面持ちになりました。別に私の心が広いわけではないことを、この二人は良く知っています。


「さあ、義妹の教育で忙しくなるわね。ええそう、愛人と言わず正妻として恥ずかしくないようにしなければならないから、お腹の子にはよくないでしょうけれど──耐えて貰わなくてはならないわ」


 私はにっこり微笑みました。


「テイラー家側は反対はしないでしょう。ミルバーン公爵家の令嬢との結婚前に、平民の娘との間に子供が出来たなどと知られたら……相当恥ずかしいことになるわ。まあ、事の経緯はいずれ知られてしまうでしょうけれど。バーナード様と義妹の行く末……自分たちのやったこと……社交界という地獄の中で、ゆっくり後悔してくださるといいのだけれど」

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[一言] オラわくわくすっぞ
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