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冬童話2021 『さがしもの』

かめなちゃんのおふとん

作者: 小畠愛子

 池の堀公園は、その名前の通り、大きな池が公園の真ん中にあって、そのまわりに散歩道やジョギングコースなどがある、とてもにぎやかな公園でした。真ん中の池には、魚はもちろん、ほかにも水辺に暮らす、さまざまな生き物たちでいっぱいです。今日もジョギングする人間たちを、ものめずらしそうにみんな見ています。


 カメのかめなちゃんも、そんな一匹でした。いつもは公園の岸辺にあがって、人間たちをのんびりながめてすごしているのですが、なんだか今日は様子がおかしいです。そわそわ、きょろきょろ、なにかを探すように人間たちを見ています。と、そこに、かめなちゃんのともだちのシラサギくんが飛んできました。


「やぁ、かめなちゃん。今日はどうしたの? そんなにそわそわして」

「あ、シラサギくん。うん、わたし、探しものをしていたのよ」

「探しもの? いったいなにを探していたのさ?」

「あのね、『おふとん』っていうのを探していたの」


 シラサギくんは、大きく羽を広げてのびをしました。


「『おふとん』かぁ、聞いたことないなぁ。なんなの、それ?」


 シラサギくんに聞かれて、かめなちゃんはこまったように答えました。


「あのね、わからないの」

「えっ、わからないの? わからなかったら、探しようがないじゃないか」


 おどろくシラサギくんに、かめなちゃんはこうらから首をグーッとのばして、ジョギングしている人間たちを見つめました。


「あのね、きのう、いつものようにここで、人間さんたちのお話を聞いていたの。そしたら毎朝走っているおじいちゃんが、『こういう寒い日は、ジョギングなんかせずに、あたたかいおふとんにくるまっていたいですね』っていってたの」

「へぇ、『あたたかいおふとん』かぁ。くるまるってことは、ぼくの羽みたいなものなのかな?」


 シラサギくんは、じまんの白い羽をふわりと広げて、それからパタパタとふるわせました。


「もしかしたらそうかも。シラサギくん、その羽にくるまってたら、あたたかい?」

「うん、まぁ、あたたかいっていえば、あたたかいけど、でもやっぱり寒いし、人間たちには羽なんてないから、ちがうんじゃないかな」


 シラサギくんが長い首をかしげました。かめなちゃんは、人間たちをよく見ようと、小さな目をじっとこらしました。


「そのおじいちゃんのおともだちのおばあさんがね、やっぱりいってたの。『寒い日におふとんにくるまってるのは、なによりのぜいたくですからね』って。わたし、とっても寒がりだから、その『おふとん』っていうのに、一度でいいからくるまりたいなって思って……」

「それで今日は、人間たちをじっと見てたってわけかぁ」


 シラサギくんはなるほどと思ったのか、長い首を上下にふりました。


「でも、人間たちを見てても、その『おふとん』がなんなのかわかんないと思うよ。みんなジョギングにいそがしいみたいだしさ。それより池にいる、ほかの仲間たちに聞いてみたらどうだろう?」


 シラサギくんにいわれて、かめなちゃんが首をグーッとのばしました。シラサギくんを見あげて、それから小さくうなずきました。


「うん、そうだよね、みんなだったらなにか知ってるかもしれないわ。ありがとうシラサギくん」

「いいってことさ。ぼくもともだちの鳥たちに聞いてみるから、かめなちゃんもみんなに聞いてみてね」


 そういうと、シラサギくんはバサバサッと飛びさっていきました。


「それじゃあわたしも、聞いてみようっと」




 最初にかめなちゃんが聞きにいったのは、池でいつも泳いでいるコイたちでした。橋の下で、人間たちにパンくずをもらって、ごきげんのコイたちにさっそくたずねます。


「こんにちは、ねぇ、コイさんたちは、『おふとん』って知ってる? 寒い日にそれにくるまると、とってもぜいたくなんだって」

「やぁ、かめなちゃん。『おふとん』だって? うーん、知らないなぁ。ぼくたちにとってのぜいたくは、人間さんたちがくれるパンだもん。『おふとん』がどんなにいいものでも、やっぱりパンのほうがおいしいよ」


 そういうと、コイたちは再び橋の下へ泳いでいきます。かめなちゃんもコイたちといっしょに、パンくずをおなかいっぱい食べるのでした。




 今度は池でスイーッと泳ぐカルガモたちに聞いてみます。


「こんにちは、カルガモさんたちは『おふとん』って知ってるかしら? 寒い日にくるまるものみたいなの。それで、とってもあったかいんだって」

「かめなちゃん、こんにちは。うーん、『おふとん』かぁ、聞いたことないなあ。ぼくたちはほら、羽毛でもこもこしてるから、寒くてもへっちゃらなんだ。……でも、あったかいなら、ぼくたちもその『おふとん』にくるまりたいなぁ」


 カルガモたちは、水の上をスイーッ、スイーッと泳いでいきました。かめなちゃんもカルガモたちといっしょに、水の上を泳いで遊びました。




 けっきょくかめなちゃんは、池のなかまたちに聞いても、『おふとん』がなんなのかわかりませんでした。つかれていつもの、小さな岩の上にあがってこうらをお日さまに当てました。


「はぁ、いっぱい動いて、つかれちゃったよ。今日はゆっくりおひるねしよう」


 かめなちゃんは、こうらをかわかしながら、うつらうつらするのでした。そのとき、おひさまから声が聞こえてきたのです。


「かめなちゃん、あたたかいだろう? これが『おふとん』なんだよ。さ、ゆっくりおやすみ」


 かめなちゃんは、あたたかな夢の中へくるまれていくのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] かめなちゃんがおひ様に照らされながら甲羅干しされている光景がほんわかしていて、私も日向ぼっこしながら昼寝したくなりました。 寒い時に布団にくるまってむにゃむにゃしてるのもいいですけど、昼間に…
[一言] 水鳥さんたちのおしゃべりを見て、「逃げて、水鳥さんたち、逃げて!」と思った汚い大人です。(私は羽毛ぶとんもダウンコートも大好きです) かめなちゃん、あったかくてなくならない、お手入れ不要の…
[一言] おふとん見つかって良かったですね。 ほのぼの楽しく読ませて頂きました。
2020/12/21 19:11 退会済み
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