はじめてのダウンロード
「なー流石に奨学金の説明はねぇよ」
「俺に言うなよ、教授に頼まれたんだから」
「一心君さぁ、毎日毎日ロボットの操作してて楽しい?そろそろ彼女でも作った方が良くない??いや、お前の彼女はタッパー君か、、(笑)違うか、タッパーちゃん?(笑)」
「おい、殴られたいか?一応言っとくけど、俺はロボットなんかには興味はない、ただプログラミングの研究のためにやってるだけ。そんなことよりいつアプリ入れてくれんだよ」
「俺はねぇ、こうやってお前と面と向かって話せるだけで充分」
「チッ」
「舌打ちでか」
「このままじゃ研究進まねーよ。いやそもそもが無茶な話だよな…」
「まぁ紹介くらいならしてやるよ、仲良いやつ何人かにアプリのこと知らせてみる」
「さすが」
***
ピロンッ
―アプリがダウンロードされました。―
画面を二度見した。ついにアプリがダウンロードされた。
っしゃー!!!思わず叫ぶ。アプリを作ってから1週間にして、やっとのことだった。
俺は今、大尊敬している教授の元でプログラミングを習っている。その教授というのが、AI型ロボットタッパー君の制作に協力した、黒崎智教授。プログラミングの知識、技術で教授の横に出るものは日本にはいないと思う。
そんな教授の元で卒業研究として、タッパー君のアプリを作ることになった。
誰か知らないけどありがとう。そう独り言を言い、操作を進める。
―あなたの名前は名前を入力してください―
―あなたの誕生日を入力してください―
―あなたの好きなものを入力してください―
タッパー君の一人称、話し口調はマニュアルが用意してあるから、その通りに操作すればいいのだが、問題は質問事項。
原稿さえ用意すれば、タッパー君はその通りに話してくれるし、基本的な情報知識で補える会話はできる。でも人と話す上での日常会話の様なたわいもない会話がタッパー君にはまだできない。
用はタッパー君の言葉のレパートリーを増やすのがこのアプリを作った最大の理由。
タッパー君としてアプリの登録者シュウコと何度かやり取りした頃、仲を深めようとこんな質問を送った。
『シュウコは何か悩みはあるの?』
『悩みは、一人暮らしをし始めたんだけど、最近やっぱり寂しく感じることが増えたことかな〜。』
寂しさを感じてる時にこのタッパー君アプリとの出会い、これはヘビーユーザになる可能性有りだな…
ここは、同調して、優しい言葉を…
『そうかー。シュウコは僕と同じ悩みを持っているね。僕も今までずっと1人でいたけど、今日君と友達になれた。だから僕は今日からは寂しくなくなった。シュウコも寂しくなくなるといいなー。』
その後も何度かやりとりした後、登録者のシュウコからおやすみとメッセージが届いた。
シュウコの就寝時間は大体24時と…タッパー君に記憶させた。
そしてふと思った。相手女だよな…こんなプライベートな事色々知られてキモいよな…なんか悪いことしてる気分になる…けどま、一生会うことは無いんだし良いよな
無理矢理自分に言い聞かせてベッドにはいる。
そーいや、奨学金の説明会、あれは失敗だったな…
そう考えながら目を瞑る。