第8話:リスタートでの初迷宮
迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。
念願だったレベルアップが可能になり、スキルも手に入れた。
厳格な司祭様に会いに来て、無事に冒険を続ける許可を得た。
天の声のチャレンジに従って、冒険者ギルドで初心迷宮の子鬼狩りにきた。
◇
レベルとスキルのお蔭で、初戦の子鬼三匹は楽勝。
『ガォオオオ!』
次なる子鬼の群れも発見。
子鬼は弱いが、数だけは沢山いるのだ。
「片手剣は問題ない。体力もまだいける。よし、二回戦いくぞ!」
自分の状況を確認。
子鬼の声に向かっていく。
よし、今度はこちらから奇襲をしけてみよう。
あっ、そうだ。
奇襲するならスキルを上げていこう。
ステータス画面を表示して、□隠密をタッチ。
☆《□隠密レベル0→1にしますか?(必要スキルポイント1)》
□YES
□NO
迷わず□YESを選択。
ポイントの残量的に、レベル2まで一気に上げることも可能。
だが効果を調べるために、段階を踏んで上げていきたい。
☆《ピローン♪ 隠密レベル0→1になりました》
同時に流れるように、ステータス画面を確認する。
――――《ステータス》――――
□名前:ハリト(♂16歳)
□職業:剣士
□メインレベル6
↓スキルポイント:12→11
□スキル
・剣技(片手剣)レベル2
├斬撃
└飛斬
・回避(受け流し)レベル2
├見切り
└受け崩し
UP! 隠密レベル0→1
□固有
・《観察眼》
・■■■■■■■■■■
□身長160センチ
――――◇――――
よし。
ちゃんと隠密レベル1に上昇している。
さっそく近づいてきた子鬼に、効果を試してみよう。
今までと同じように音を立てずに近づいていく。
『ガルル?』
おお、子鬼たちに気がつかれずに、けっこう近くまで接近できた。
これは凄い。
隠密レベル1の恩恵で、目に見えて気配を消すのが上達している。
よし奇襲をしかけるぞ。
相手は三匹。
「いくぞ! どりゃぁあ!」
ズシャリ!
『ウギャァアア!』
よし、奇襲で一匹目を倒せた。
更に突然の奇襲で、相手は混乱している。
一気に残りの二匹も仕留めるぞ!
ズシャリ! ズシャリ!
『ウギャァアア!』
『ウギャァアア!』
よし、残り二匹も倒せた。
これこの部屋にいた子鬼は全滅させた。
「ふう……それにしても、隠密スキルは使いやすいな。オレの戦闘スタイルとも相性がいいのかもな?」
今のオレは音の出ない布の服と、片手剣だけの装備。
防御力には弱い装備なので、足を止めないヒット&アウェーのスタイル。
だから気配消して近づく、隠密奇襲スタイルも効果的なのだ。
「とりあえず今のところ隠密レベルは1のままでいくか。子鬼相手だと十分だし」
急に他のスキルが、出現する可能性がある。
必要になった時に、必要なスキルに振り分けるスタイルでいこう。
「よし、このペースで、どんどんいくぞ!」
少し休憩したら体力も回復。
オレは更に奥まで子鬼を狩りに行く。
「いくぞ! どりゃぁあ!」
ズシャリ!
「はっ!」
ズシャリ!
その後も子鬼狩りは順調だった。
相手の足音を感知したら、隠密で近づいていく。
数と状況を確認してから、奇襲による先制攻撃。
戦闘でもメインレベル6と剣技(片手剣)レベル2、回避(受け流し)レベル2が大活躍。
ほとんど反撃を受けることなく、子鬼を倒していけた。
「ん? この片手剣……もしかして?」
あと、凄いことを発見した。
この片手剣は“刃こぼれ”をしないのだ。
普通は魔物を倒せても、武器の方がだんだんと劣化していく。
だから普通は定期的に、地上に戻る必要がある。
だが迷宮でゲットした片手剣は、いくら子鬼を斬っても劣化しない。
同じ切れ味をキープしたままなのだ。
「うーん、これもあの迷宮の剣だからかな? まぁ、考えても仕方がないか」
武器の劣化を気にしなくて済むのは、鍛錬中毒のオレにとっては有り難いこと。
どんどん子鬼を狩っていける。
そして不思議なことを、もう一つ発見した。
「あれ……オレ……なんで、こんなに体力が持つんだろう?」
魔物との戦闘は体力と精神力を、大幅に消費する。
だがオレはいくら戦闘しても、ちょっと休憩しただけ、体力と精神力が回復したのだ。
「これは何故だろう……うーん。この読めない《固有》のお蔭かな?」
オレには《固有■■■■■■■■■■》が表示されている。
原因はこれのような気がする。
でもタッチして反応無し。
だからあまり気にしないでおく。
とにかく、これも有り難いこと。
体力と精神力を気にしないで、鍛錬していけるのだから。
あと空腹も問題ない。
携帯食を多めに持ってきていた。
あと迷宮の湧水と、迷宮内の野草を口に出来るのだ。
「よし、ドンドンいくぞ!」
その後もオレは子鬼を続けていく。
「いくぞ! どりゃぁあ!」
ズシャリ!
「はっ!」
ズシャリ!
初心者迷宮とはいえ、全体的な広さはけっこうある。
だが子鬼は個体とは弱い。
問題なく隅々まで探索できた。
やはり劣化しない片手剣と、回復する体力と精神力。
この二つ強力すぎ。迷宮走破には有能な効果だったのだ。
――――だが、そんな中でも困ったことが一つあった。
「うーん、魔石がこれ以上、持てないな……」
好調過ぎて、予想以上の数の子鬼を討伐。
背負い袋から、魔石が溢れてきたのだ。
「置いていこうかな……でも勿体ないし、ギルドに報告しないとな……」
そんな収納場所に困っていた時だった。
☆《ピローン♪ 新しいスキルを会得しました》
えっ?
新しいスキル?
なんだろう、戦闘系かな?
とりあえずステータス画面を確認してみよう。
――――《ステータス》――――
□名前:ハリト(♂16歳)
□職業:剣士
□メインレベル6
□スキルポイント:11
□スキル
・剣技(片手剣)レベル2
├斬撃
└飛斬
・回避(受け流し)レベル2
├見切り
└受け崩し
□隠密レベル1
New空間収納レベル0
□固有
・《観察眼》
・■■■■■■■■■■
□身長160センチ
――――◇――――
ん?
なんだ、この《空間収納》というスキルは?
他の冒険者からも、聞いたことがないぞ。
とりあえずタッチして、説明を確認しておこう。
☆《空間収納:手を触れた者を自分の収納空間に、収納しておける。レベルアップしていくと収納量が増えていくよ。※生き物は不可》
ん?
『収納空間に収納しておける』か?
よく分からないから、スキルレベルを1にして試してみよう。
☆《ピローン♪ 空間収納レベル0→1になりました》
よし、上がったぞ。
さっそくあふれた魔石を触って、実験だ。
でも本当にいけるのかな?
「えーと【空間収納】」
シューウ!
おおぉ!
本当に手の中に収納された!
いや、手の中じゃないのか。
感覚的に自分の体内に、収納された感じだ。
えーと、出す時は、出すイメージっぽいな。
よし、さっきの魔石をイメージして。
「出して【空間収納】!」
ポワン!
おおお、出来た。
なるほど、そういう仕組みか。
不必要な荷物を収納したり、必要な時に瞬時に出すことが可能なのか。
すごく便利だ。
とりあえず背負い袋の中身を、全部収納してみよう。
「入れて【空間収納】!」
シューウ!
おお、一瞬で全部の魔石が収納された。
ん?
しかも、これ、体感的に重さがないぞ。
なるほど収納した物は、重さが感じなくなるのか。
これには更に大発見。
「この【空間収納】……凄すぎないか? 迷宮探索で、これ以上の便利スキルはないぞ!」
何しろ迷宮に潜る時は、大きな荷物が必要になる。
水や食糧、生活必需品や予備の武器と防具。
パーティーを組んでいても、その重量と容積はかなりの負担。
さらに魔物によっては魔石以外にも、骨や皮などの素材をドロップする個体もいる。
地上まで持ち帰ると金になるが、運搬は大変だ。
だから素材を泣く泣く諦めている、冒険者も多いのだ。
「でも、この【空間収納】があった、全ての問題が解決できるぞ……」
行きと帰りの荷物の心配が皆無。
お蔭でオレは戦闘と索敵、隠密に集中ができる。
効率よく迷宮探索が可能になったのだ。
「よし、これでまたドンドンいけるぞ!」
さらに迷宮を探索していく。
【空間収納】のお蔭で魔石の問題も解消。
気兼ねなく子鬼を狩っていくのだった。
◇
「ふう……子鬼が、もういないのかな? よし、地上に戻るとするか」
気が付くと迷宮内から子鬼の姿が消えていた。
次の出現するまで、しばらくは子鬼の問題は無くなっただろう。
「よし、地上に戻るとするか」
仕方がないので地上に戻る。
久しぶりの陽の光が眩しい。
そのまま下町の冒険者ギルドまで直行。
中に入って、受付のお姉さんに報告に向かう。
だが、その前に、いつものように他の冒険者たちに馬鹿にされる。
「おい、チビガリが戻ってきたぞ!」
「あいつ、ずっと、どこに隠れていたんだ?」
「しかも、背負い袋は、ペタンコだぜ! 失敗だったんだな、ありゃ!」
「おい、ゼロ匹に賭けた奴の、勝ちだぜ!」
「「「がっはっはは!」」」
そんな下品な笑いを無視。
オレはカウンターでお姉さんに話かける。
「あっ、ハリト君! この一週間も報告に来ないで、どこに行っていたんですか⁉ 私、すごく心配していたんですよ!」
「えっ……一週間も? あっ、すみませんでした」
どうやら初心者迷宮に潜りすぎていたらしい。
体力と精神力が回復していくので、時間の感覚がズレていたのだ。
本当に怒っていたお姉さんに、平謝りする。
「あと、子鬼を狩ってきたので報告します。あと魔石の買い取りも、お願いします」
「あら? 子鬼をちゃんと狩れてきたの? 魔石は、一個からでも買い取るから、そこの台に全部出してちょうだい」
「えっ? 全部出してもいいんですか?」
「ええ、大丈夫よ」
よし、了承してもらった。
遠慮なく全部出そう。
「……おい、チビガリガが魔石を出すみたいだぜ!」
「……偽物の石っころが混じってないか、みんなで見ておこうぜ!」
「「「がっはっはは……」」」
後ろの雑音はもはや耳い入らない。
「では、出します……出して【空間収納】!」
ポワン♪
右手から子鬼の魔石を全部出す。
ドッガ、ドカ、ドカ、ドカ!
台から魔石が滝のように、床に落ちていく。
冒険者のカウンター横は、山のような魔石に埋め尽くされる。
「え…………?」
お姉さんは目を点にして、言葉を失っていた。
魔石の山を凝視ている。
「「「なっ…………」」」
後ろの冒険者たちも、同じく言葉を失っている。
誰も何が起きたか、理解できていないのだ。
「えーと……ハリト君、これは……」
「はい、子鬼の魔石です。全部で282個あります」
「い、いえ……そういう問題じゃなくて……」
ん?
数の質問じゃないのかな?
ちゃんと事前に数えてきたから、間違いはないはずなんだけど。
そんな時。
受付の奥から、誰かが出てきた。
「おい! 何だその、魔石の山はぁ!」
出てきたのは、大柄で強面の戦士。
もしかしたら強盗か、何かかな⁉
「ギルドマスター……実は、このハリト君が……」
えっ……この怖い人が、冒険者ギルドのギルドマスター?
「なんだと? おい、お前、ちょっとオレの部屋まで来い!」
こうして強面なギルドマスターに、オレは連行されるのだった。
うっ……怖い。
怒られるのかな……。