第15話:ボス戦
迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。
新しい天の声が従い、冒険者ギルドで依頼人マリアと出会う。
マリアの呪いを解くために一緒に、中級迷宮の《呪いの迷宮》に潜入。
大盤振る舞いでスキルアップして、無双状態でボス部屋に到達。
◇
「大丈夫だよ、マリア。絶対に見つけよう……呪いを解くアイテムを! さぁ、いこう!」
「ハリト君……はい!」
オレたちは二人で、ボス部屋の扉を開ける。
ギギギー
この先はボス部屋。
二人で慎重に中に進んでいく。
ギギギー。
後ろで自動で扉が閉まる。
話に聞いたことがある。
ボスを倒すまで、その部屋は出られないのだ。
「ハリト君……あれは?」
「ああ、ボスだね。たぶん、“鬼大蜘蛛”だ」
冒険者ギルドの資料で、見たことがある魔物がいた。
道中にいた大蜘蛛の亜種。
倍以上の大きさの強化版だ。
「相手が動く! いくぞ、マリア!」
「はい!」
鬼大蜘蛛がこちらに突撃してくる。
オレが前衛になり、マリアが後衛の陣形で迎え撃つ。
シュー!
鬼大蜘蛛は毒の液体を、オレに向かって吐き出してくる。
今までの大蜘蛛と同じ攻撃だ。
よし!
これなら回避できる。
「ん⁉」
だが毒の発射口は、一ヶ所だけはなかった。
シュー! シュー! シュー! シュー!
なんと同時に四カ所からも、発射してきたのだ。
しかもオレの動きを先読みして、回避をさせないように。
「くそっ⁉ うっ!」
なんとか三回の毒は回避。
だが最後の一回は、オレの胴体に直撃してしまう。
(これはマズイな……“古代の着衣”のお蔭で、少しはガードできるけど……)
“古代の着衣”は『特殊耐性:A』で、毒などに強い。
だが完璧に毒を防げるわけではない。
このまま何回も食らったら、いつか毒状態になってしまう。
それに頭や手など、ガードがない部分に当たったら危険だ。
「ハリト君、大丈夫ですか⁉」
「ああ、こっちは任せて。マリアは神聖魔法で、牽制してちょうだい!」
「はい! いきます……【聖衝撃】!」
後衛のマリアが援護射撃をしてくれる。
神聖魔法での遠距離攻撃を発射。
シャーン、バン!
見事に命中。
鬼大蜘蛛の動きが一瞬、止まる。
よし!
今が好機。
「いくぞ! 強斬!」
すかさずオレは踏み込み、剣術スキルを発動。
道中で会得した新しい攻撃技。
前の斬撃よりも強力な斬撃だ。
そのまま一気に鬼大蜘蛛に斬りかかる。
ズシャァア!
よし、命中した。
だが相手はさすがにボス。
一撃では倒すことはない。
「でも、ダメージは与えられる……いけるよ、マリア!」
「はい!」
オレたちは気合いを入れ直し、鬼大蜘蛛に戦いを挑んでいく。
――――それから戦いは、ギリギリだった。
『ジャァー! グァーー!』
鬼大蜘蛛の攻撃は何パターンもあった。
四つの毒と、粘着糸、大アゴ攻撃など多彩。
どれも直撃したから、普通な危険な攻撃ばかり。
「この攻撃は……あえて受け止めて、反撃する!」
だが今のオレには高性能の“古代の着衣”があった。
何とか致命傷を受けずに防御。
反撃してダメージを与えていく。
「マリア、危ない! 【味方受け流し】!」
「あ、ありがとうございます、ハリト君!」
また後衛のマリアに攻撃があったときは、新しいスキル【味方受け流し】を発動。
オレが身代わりになることで、マリアへのダメージは無くする。
鬼大蜘蛛はかなり強力な魔物。
だがオレも自分の戦闘スタイルを物にしていた。
回避と受け流し系のスキルで、相手を翻弄。
相手の隙を狙い、すかさず反撃していった。
「いくぞ! 強斬!」
「いきます……【聖衝撃】!」
チャンスを見つけては連撃。
二人の最大の火力で、確実にダメージを与えていった。
――――そして“その時”がきた。
「いけぇ! 強斬!」
ズッ、シャァア!
相手の急所に攻撃がヒット。
かなりの手応えがあった。
シャァーーーン……
鬼大蜘蛛の死骸が、粒子となって消えていく。
「ハリト君⁉」
「ああ、他にはいなそうだ。この迷宮をクリアだよ、マリア」
「ああ、良かったです。でもアイテムは……どこに?」
「ん? 見て、マリア。鬼大蜘蛛の死骸が!」
消えていく粒子の中に、小さな小瓶が落ちている。
ボスのいる迷宮にだけ、出現するドロップアイテムだ。
「これが、もしかしたら……私の呪いを?」
「とりあえず、一回、上に戻ろう。街で調べてから、試してみよう」
「はい、分かりました!」
ボスを倒すと、扉は解除され出られる。
道中で倒してきた魔物も、まだ復活はしていない。
オレたちは無事に地上の街に、帰還。
手に入れた薬を、薬師屋に持っていくことにした。