表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/33

第10話:防具屋さん

 迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。

 念願だったレベルアップが可能になり、スキルも手に入れた。


 司祭様から冒険を続ける許可を得て、初心迷宮の子鬼ゴブリン討伐に成功。

 強面のギルドマスターにもアドバイスをもらう。


 ◇


 冒険者ギルド建物の裏通り。

 新たな天の声が出てきた。


 ☆《チャレンジ:《萬屋本店》に行って買い物してみよう》


 店はギルドマスターに紹介された防具と雑貨店だ。

 YESを選択して、商店に向かって歩いていく。


「防具か……早く欲しいな」


 歩きながら、自分の身体を確認。

 今は薄汚れたボロボロの服を着ている。


 防御力はほぼゼロ。

 冒険者としてはあり得ることだ。


「でも防具類は高いから、買えるのがあるかな……」


 今の所持金は14,100ルピー以上。

 貧乏なオレにとっては、かなりの大金だ。


 でも全部は防具には使えない。


 何しろこの迷宮都市では、一日100ルピーくらいの生活費が必要。

 今後の生活費や、探索準備金を残しておく必要があるのだ。


 つまり防具には10,000ルピーくらいしか使えない。

 そう考えると、ちょっと不安だ。


「でも、悩んでいても仕方がない。ダメ元で当たって砕けろだ!」


 とにかく中古屋さんに向かう。

 何かあったら、店の人に相談すればいいのだ。


 ◇


 店に到着。

 古めの建物だけど、けっこう大きい。


 よしく、いくぞ。

 勇気をもって店内に入る。


「うわー、すごい……」


 中に入って、思わず声をもらす。

 店内は凄い光景だった。


 金属鎧、チェーンメイル、革鎧、盾、兜。

 色んな防具類が、所狭しと陳列されていた。


 貧乏だったオレは今まで、こうした店には入ったことがない。

 初めての光景に、思わず胸が高まる。


 通路に立ちつくし、陳列に目を奪われてしまう。


「えー、ごほん。そこ通っていいかしら?」


「あっ、ごめんさい!」


 あっ、やばい。

 女の子が通るのを、オレは邪魔していたようだ。

 急いで横にずれる。


「ところでキミは防具を買いに来たの? お金はちゃんとある?」


「えっ、はい。一応は……」


 この子は店の従業員だったらしい。

 歳はオレと同じくらいで、仕事着のエプロン姿。


 ショートカットで可愛い子。

 でも少し気が強よそうな女の子だ。


「へー、その恰好で? ちなみにウチの店は、あんまり安くないけど大丈夫?」


「あっ、この格好は……ごめんさい。」


 ボロボロの服を指摘されてしまった。

 たしかに穴だらけで、買い物客としては相応しくない。


 女の子はかなり怪しげな表情で、オレのことを見てくる。


「ちなみに予算は、いくら?」


「えーと、10,000ルピーくらいで」


「あんたの戦闘スタイルは?」


「えーと、機動力重視で、ヒット&アウェーな感じかな?」


「ふーん。武器は、その剣? 剣士なの?」


「え? うん、まあ、まだランクEだけど……」


「防具にランクは関係ないわ。ふう、わかったわ。ついて来て。えーと、その予算と、キミの戦闘スタイルだと、この辺かな?」


 ため息をつきながらも、女の子は案内してくれた。

 軽量タイプの革鎧が並んだコーナーだ。


「おお、なるほど。これならオレにもピッタリかも!」


 この子は口が悪いけど、プロの防具屋さんだった。


 ちゃんとオレの体型を目測。

 戦闘スタイルと予算で、瞬時にマッチングしてくれたのだ。


「ありがとうございます! 助かりました!」


 優柔不断なオレとしては、本当に有り難い。

 それにしても色んな種類の革鎧があるな。


 どれにしようか目移りがする。


 ん?

 そんな革鎧コーナーの奥に、何かを見つける。


 大量の服が、木箱に積まれていた。


「あのー、これは?」


「それはジャンク品よ」


「ジャンク品?」


「ええ、もう古すぎて、防具としても衣類としても、商品価値が低いものよ」


「ああ、なるほど。だから、こんなに安いんですね!」


 ジャンク品は、かなり激安の値札が付いている。

 これなら自分でも気がねなく買えそうだ。


「でも、防具として機能は低いわ。命を張る冒険者なら、防具の重要さは分かるでしょ?」


「あっ、そうですね。でも、ちょっと見てもいいですか? 普段着用に?」


「そうね。そのボロボロの服よりは、マシだから。じゃあ、決まったら、声かけてね」


「あっ、はい。色いとありがとうございます!」


 女の子は、別のコーナーに行ってしまった。

 口はちょっとキツイけど、本当にいい子だったな。


「さて、ジャンク品の中から、普段着を探そうな……ん?」


 そんな時だった。

 後ろから誰かの声が、聞こえてきた。


 知っている声だ。

 まずい、これは。


「ん? おい、見て見ろよ! ガリチビが、こんな所にいたぞ!」


「あっ、本当だ! アイツ、最近調子に乗っているらしいぜ!」


 店内の通路を通りかかったのは、孤児院の同期組の連中。

 先日とは別のグループ。

 でも彼らもオレのことを、いつもイジメてきた人たちだ。


「あと、見て見ろよ! あんなジャンク品なんて漁っているぞ!」


「ぷっぷー、ウケる! ゴミ虫には、ゴミ箱がお似合いだな!」


「良かったら、オレのお下がりの、下着でも、恵んでやろうか⁉」


「「「あっはっはっは……」」」


 またオレのことをさげすんでいく。


 ある程度言ったら気が済んだようだ。

 そのまま別のコーナーに行ってしまう。


「ふう……気持ちを切り替えて、探そう……ん?」


 そんな時だった。

 一着の服に目が止まる。


「これは……何だろう? 普通の古い服に見えるけど……でも、なんか違和感が……あるような?」


 気になったのは、不思議なデザインの服。

 かなり年代物なのだろう。

 上下がセットになっているけど、値段が極端に安い。


「何だろう……これは……?」


 手に持ってみる。

 素材は普通の繊維のような気がする。


 でも、やっぱり変な感じがする。

 なんだろう、この違和感は?


 その時だった。


 ☆《ピローン♪ 新しいスキルを会得しました》


 えっ?

 新しいスキル?


 店内で、いきなりでビックした。


 でも何だろう、ステータス画面を確認してみよう。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:ハリト(♂16歳)

 □職業:剣士

 □メインレベル8

 □スキルポイント:19


 □スキル

 ・剣技(片手剣)レベル2

 ├斬撃スラッシュ

 └飛斬スラッシュ・カッター


 ・回避(受け流し)レベル2

 ├見切り

 └受け崩し


 □隠密レベル1

 └忍び足


 ・空間収納レベル1

 └収納リスト


 □固有

 ・《観察眼》

 └New!鑑定眼レベル0


 ・■■■■■■■■■■


 □身長172センチ


 ――――◇――――


 ん?

 《鑑定眼レベル0》というのが追加されているぞ。

 しかも《固有》の《観察眼》から発生しているスキルだ。


 そういえば固有から発生したのは、これが初めて。

 どういうことなんだろう?


 とりあえずタッチして、説明を見て見よう。


 ☆《鑑定眼:見た物の価値を、可視化して確認できる。内容や有効距離などは、レベルアップで増えていくよ》


 ん?

『見た物の価値を、可視化して確認できる』か。


 どういう意味だろう。

 とりあえずレベル1に上げて、使ってみよう。


 ☆《ピローン♪ 鑑定眼レベル0→1になりました》


 よし、上がったぞ。

 まずは身近な物を見て見よう。


 そうだ。

 さっきの不思議なデザインの服に、使ってみよう。


 えーと、視線を向けて、また声に出せばいいかな?


「この服を【鑑定】!」


 ピコーン♪


 おっ、また音が流れた。

 成功したのかな。


 ん?

 あと服の所に、あの透明な文字が出てきたぞ。


 読んでみよう。


 ――――◇――――

 《鑑定結果》


 □名前:古代の着衣アーマー

 □分類:防具

 □所有者:未定

 □ランク:A

 □物理耐性:B

 □特殊耐性:A

 □固有

 ├炎・氷耐性60%カット

 ├状態異常90%カット

 ├装備者ダメージ自動回復《中》

 └着衣ダメージ自動回復《中》


 ※機能を正常稼働させる為には《鑑定》後、所有者登録が必須


 ――――◇――――


 えっ……?


 んっ?


 服の何かのデータが出てきたぞ


 なんだ、これは……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回までの話の感想で他の方が既に言ってますが、 『主人公の身長が実力と共に伸びている』 という点が作中の主人公を含めた全ての登場人物に触れられていない点 [一言] 今の所『主人公の背が…
[一言] 急激に身長伸びたら、服ボロボロ以前につんつるてん超えて裂けるだろうとか、なんで周りの人が気がつかずに、ガリチビとか言い続けるのか不思議。 途中で、その辺の描写とか、バカにしてきた人らが驚くセ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ