表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

偵察

ウサギを狩り終えたゴブリンたちは、碌に血抜きも行わず、狩ったウサギを手に持ってまた移動を開始した。


俺もまたゴブリンたちの後をつけたまま、観察を続けていた。


その後に何度か動物を見つけて狩ろうとした彼らだったが、最初の時のようにうまくはいかず、夕暮れが近くなってきたころに、狩りを終えて拠点に戻ろうとしているようだった。


俺は危険だということは承知で、このまま彼らの後をつけて、拠点にどれぐらいの数のゴブリンがいるのか把握しようと考えた。


そして、そのまま彼らを尾行し続けて30分ほどが経った頃あたりから、遠目にいくつかのほかのゴブリンの集団が同じ方向に移動しているのを確認した。


そのことからゴブリンの拠点が近いと踏んだ俺は、一度その場にとどまりマップを開いた。


マップには当初、自分を示す青点しか表示されていなかったが、探索することで、一度行った場所の地形はマップに表示されるようだった。


そんな自分の拠点周りと今回の偵察による追加された部分が見られるようになったマップを見て、俺は現在位置とゴブリンが向かうであろう方向を頭に叩き込んだのち、一度その場を離脱した。


比較的魔物の数が少なくなるところまで移動した俺は、レーションを食べて水分補給をしたのち、木の上に登り、ロープ代わりの蔦を木の幹に体を固定させるように巻いて、寝れないまでも一度休息をとった。


完全に日が落ちたことを確認した俺は、木から降りて、インベントリから暗視ゴーグル付きのヘルメットを取り出した。


異世界では、月?明かりがかなり明るいので、最悪暗視ゴーグルなしでも動けるが、今回は念には念を入れてヘルメットをかぶって行動することにした。


リボルバー、投げナイフ、サバイバルナイフのいつもの装備を携帯しているのを確認して、マップを開いてゴブリンの巣だと思われる場所に向かって移動を始めた。


移動を開始してからしばらくすると、ほんのかすかにウルフの遠吠えだと思われる音を何度か拾った。

ウルフはゴブリンと違い、夜行性であるようだと認識して、移動にはより細心の注意を払おうと心に決めた。


月が空に昇り始めて大分たったころ、ようやく最後にゴブリンたちを尾行していた地点までたどり着いた俺は、ゴブリンが移動していった方向にゆっくりと進み始めた。


しばらく歩いていると、空気中にほんの少し異臭が混じっているのに気付いた。その異臭は、尾行時にも感じたゴブリン達から漂っていたものだと思い出し、俺はゴブリンたちの拠点がもうすぐそばにあるのを感じ取った。


匂いを感じ始めてすぐに、森にも少し変化があるのに気付いた。地面の一部が踏み固められ、獣道のようになっている部分が多くなってきたのだ。


獣道をたどって数分歩くと、俺はようやく、ゴブリンの拠点と思しき場所を木々の合間から確認した。


それは古い砦のような様相で、四方を壁で囲まれていた。壁はところどころ崩れて、門があったであろう場所には何も存在しなかった。しかし古ぼけてはいたが、壁内には物見やぐらのようなものが付随した石造りの建物がしっかりと確認できた。


そして、ゴブリンたちは壁外や壁内にところどころ火を焚いて、何体かの見張りをつけつつ夜を過ごしているようだった。


俺はその様子を確認したのち、砦の全体像を確認すべく、砦の周囲を少しずつ移動し始めた。砦を囲む壁は、4メートルほどの高さを持ち、厚みはおよそ2メートルほどあり、完全な状態であったならより堅牢な印象を受けただろう。


壁は四辺とも同じぐらいの長さで、大体50メートル四方の範囲をその身で囲っている。

石造りの建物は、壁内の中心部に建てられており、建物の四隅には、物見やぐらのような高い部分が取り付けられ、壁内外の様子を一望できるようになっている。


砦の大まかな様子を見た俺は、自分の想像していた以上にゴブリンの数が多いことに戸惑いを隠せなかった。ゴブリンは、ぱっと確認できた数だけでも、200近い個体がおり、確認できていない数を合わせるとどれだけの個体がいるのか判断がつかなかった。


おそらく何らかの理由で捨てられたこの砦を塒としたことで、ここまでの数に至ったのだろうが、この集落のゴブリンの活動範囲を正確に見極めないと、人の活動圏を見つける以前に碌に森を探索できないことは明白だった。


また、この砦が比較的川沿いに近い位置に立っていることが、川沿いを中心に探索の範囲を広げている俺にとっては、非常に厄介な事実だった。


もしこのまま、川沿いに活動していこうと思うなら、この砦の存在をどうにかしないといけなくなるだろうと感じた俺は、この世界に飛ばされてから何度目かわからない深い溜息を吐いた。



昨夜、砦の様子を見まわった後、拠点に今朝方帰ってきた俺は、一度仮眠をとって目覚めてから、今後の探索の予定を考えていた。


そして俺は、砦を大きく迂回するようにして今後川の下流域を探索していこうと考えた。ただ一つ懸念していたのが、昨日の夜にウルフの遠吠えが聞こえていたのが川沿いから離れた森側からだったという事実だ。


だが、じっとしているままではどうにもならないので、嫌な予感がしつつも、俺は川沿いから離れるようにして探索を始めた。





結果わかったのは、否定したくなるような事実だった。

というのも、ゴブリンの生息範囲をちょうど囲うようにしてウルフの生息範囲が広がっていたからだ。また、それならばと、今度は川を渡って向こう側から下流に向かおうと考え移動したのだが、川の向こう岸は完全にウルフの領域となっており、探索は無理そうだった。



これらのことから、やはりゴブリンの生息域を突っ切って川の下流に向かうのが最善だと考え、俺はそのためにどう動くべきか思索し始めた。


そして最終的に俺は、ゴブリンたちを全滅までさせられないまでも、集落に打撃を与えられるぐらいに数を減らそうと考えた。


そうすれば、自分たちのテリトリーの維持や、少なくなった人数での砦の防衛のため、仮に探索中にゴブリンたちに見つかっても深追いされるようなことは少なくなるだろうと考えたからだ。


そしてそうなるためには、仲間の仇とばかりに追い掛け回されるような事態を防ぐために、俺が襲撃したということを知られないようにすることも必要だった。


したがって俺は、ゴブリンたちが寝静まっている夜に砦を襲撃するのが最善の策だと考え、そのための作戦を考え始めた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ