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薬草採取

村に戻った俺たちは、今回の狩りで得た肉などの処理に勤しんだ。



切り分けた肉を母屋の地下にあった冷暗所で寝かせる準備をしたり、ウルフの皮を剥いでなめすための準備を行ったりと大忙しだった。



気づいたら外はかなり暗くなっており、俺たちは軽めの夕食をとってそのまま疲れを癒すために眠った。



翌日、納屋で起きた俺は、昨日と同様に井戸まで水汲みに行き、その後母屋でアネモネさんと朝食をとっていた。



「今日も狩りに行きますか?」



「いや、今日は狩りにはいかないよ。朝食を食べ終えたら一度ローズ婆のところに向かうよ」



そう答えた彼女に俺は問い返した。



「何か薬を買う予定なんですか?」



「いや、今日は手伝いだ。あたしもいつもそこまで頻繁に狩りをしているわけじゃないんだ。特に、あんたが来るまでは一人だったからね。だから、大体狩りを終えた後は、彼女のところに行って薬草なんかの採取の依頼を請け負っているんだ。採取は狩りよりかは危険が少ないからね」



「なるほど。じゃあ、今日は薬草等の採取に行く予定なんですね」



「そうだね。だから今日は、昨日ほどはきつくはないと思うよ」



そんなことを話しながら朝食をとり終えた俺たちは、お互い身支度を整え家を出た。



アネモネさんは、昨日狩った猪の内臓などが入った袋を手に持っていた。

どうやら、ローズさんへの手土産としてもってきたらしい。



ちなみに、こちらの食事事情はやはり現代とは大きく違い、塩はそれなりに流通しているようなのだが、調理法は基本的に直火焼きか、五徳のようなものでスープを作ったりすることが多いようだった。

実際昨日も、とった猪のレバーを串に刺して塩をまぶして直火焼きにしたものがメニューに入っていた。



そんなことを思い返しながら昨日と同じ道を通って、ローズさんの家兼店舗までたどり着いた俺たちは、さっそく店内に入った。

店内には昨日と同じように、戸棚に商品の見本が置かれていた。

昨日と違ったのは、店舗奥のカウンターにローズさんがいたことだった。



ローズさんは、カウンターで仕分けの作業をしていたのか、机上にはいくつかの薬品の瓶が置かれていた。

彼女は、扉が開いた音でこちらに気付いたようで、俺たちに顔を向け話しかけてきた。



「無事に狩りは済んだようだね。今日は二人で採取の依頼を受けてくれるのかい?」



アネモネさんは、手に持った袋を彼女に渡しながら言葉を返した。



「そうだよ。今日は二人で採取できるから、いつもより多めに注文してくれても大丈夫だよ」



「それは助かるねぇ。それじゃあ今日は、匂い消しに使うメル草と魔物除けを作るのに使うリブの木の樹液を採取してもらおうかな。あとは適当に見つけた薬草類をとってきておくれ」



「了解、メル草とリブの木の樹液だね」



そう返したアネモネさんにローズさんは頷くと、ちょっと待ってな、といい店舗の奥へ引っ込んでいった。

しばらくすると、その手に革袋と液体を入れることができる容器を持ってきてアネモネさんに手渡した。



どうやら採取した薬草や樹液を入れておくためのものらしく、それらを受け取ったアネモネさんは颯爽と踵を返して、俺に一言行くよ、と声をかけ店を出た。



俺はローズさんに、行ってきます、と声をかけ彼女の後を追った。



一度家に戻ってきた俺たちは、採取の依頼を遂行すべく準備を整えていた。



アネモネさんは、狩りの時の服装に着替え、狩りの時とは違い弓は携帯せず、腰のナイフと手には草をかき分けるときに使う鉈を持っていた。

背に負った革袋にはローズさんから託された革袋や容器が入っているようだった。



対して俺は、今回はスナイパーライフルはインベントリにしまい、リボルバーとナイフ類だけ武器として携帯することにした。



お互い準備が整った後、何事もなく村の外まで出た俺は、村の外壁沿いでアネモネさんから採取の手順などを教えてもらっていた。



「まずは、メル草の採取から始めるよ。そんなに森深くまで入らずとも見つかるから採取が簡単だしね。ちなみに説明しておくと、メル草はギザギザした葉を持つ植物で、今の時季だと小さな青い花を咲かせているからそれを目安に探せるよ」



「分かりました。生えている場所とかに共通点はあるんですか?」



「そうだね、影よりかは日当たりのいい場所に生えていることが多いかな。あと、群生していることがあるからそれなりの数を一気に採取できるのが特徴かな」



「了解です。メル草の採取の後にリブの木の方へ向かうんですか?」



「ああ、リブの木は森の少し奥まったところに生えているから、メル草の採取が終わってから向かうよ。ただまあ、リブの木の特徴から魔物が寄り付きにくいところだから心配する必要はないよ」



いろいろと教授してもらった後、さっそく森に入った俺たちは、前回の狩りの時とは少し違ったルートを通りながら森の中へと分け入っていった。



しばらくしてメル草の生息している場所についた俺たちは、採取のためにメル草を探し始めた。



ポンポンと見つけていくアネモネさんと違い、俺は様々な植物が生えている中から中々メル草を見つけることができなかった。



ようやく見つけた一束を、アネモネさんの指示に従いながら丁寧に掘り起こした俺は、採取できた達成感から自然と頬を緩ませていた。



そんな俺の様子を微笑ましげに見ていたアネモネさんに気付いて、恥ずかしくなった俺は、それを誤魔化すように彼女に尋ねた。



「この草はどうやって匂い消しとして使えるようになるんですか?」



「詳しくは知らないけど、どうも葉や茎をすり潰した後よく攪拌したものが匂い消しの主な原材料になるみたいだよ。ただそれだけじゃ匂い消しとしての効能は出ないから、水で薄めたり、他の薬剤を混ぜたりして調整するんだってさ」



「結構作るのが難しそうですね。自分で作れるようになったら便利だなと思っていたんですけど、なかなか大変そうですね」



「確かに本格的なものは作るのが難しいけど、簡易的なものがあるらしいから、何なら教えてもらったらどうだい? あたしも昔無理やり勉強させられたんだけど、薬作りみたいな繊細な作業は向かなかったみたいで、先にローズ婆が根を上げたよ」



会話をしつつも採取の作業をつづけた俺たちは、30分ほどして十分な数が集まったので、休憩もそこそこにリブの木の群生地に足を運んだ。



前回の狩りの時と違って、獣道などから外れ草が鬱蒼と茂っているところを、手持ちの鉈やナイフなどで切り分けながら進んだ俺たちは、1時間ほどしてようやくリブに木の群生地にたどり着いた。



「思ったよりも変哲のない普通の木なんですね。もっと禍々しい見た目をイメージしていました」



「まあ、魔物除けとして使えるのは樹液だからね。この木は虫型や獣型の魔物に樹皮を大きく削られたりするのを防ぐために、魔物が嫌う匂いのする樹液を出すようになっていったんじゃないかって言われてるよ」



「へえ、面白い特徴を持つ植物ですね」



そんな話をしながら俺たちは、中々周りの木と見分けのつきにくいリブの木を判別しながら、木の表皮にナイフで傷をつけ、そこから流れ出る樹液を容器に回収していった。



無事に何事もなく回収を終えた俺たちは、来た道を戻り始めた。



そして、俺たちは特に魔物とも遭遇することもなく、他愛ない話をしながら村に戻るのだった。










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