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アネモネの実力

村の方向へゆっくりと足を進めていた俺たちは、30分ほどしてようやく最初の獲物に巡り合えた。


俺の視界の先には、木々の合間をのんきに移動している猪がいる。


アネモネさんは、猪を見つけた後、小声で俺にじっとしているように言い、俺はその指示に従ってその場から動かずに、念のためスナイパーライフルの照準だけ猪に合わせて息を殺していた。


その様子を彼女は横目で確認しながら、右手で矢筒から矢を2本取り出し、片方を口にくわえて、もう片方の矢をゆっくりと左手に持っている弓矢につがえた。


弓の弦を力強く引くギチギチという音が間近に聞こえた。

女性の身でかなり固そうな弦を引いていたので、俺は身体強化と言われれる魔法を使っているのだと推測して、かつ、その魔法の効果に驚きを隠せなかった。


そして、一拍の間を置いて女性の力では到底考えられないほど強く引き絞られた弦から、すさまじい速度で矢が放たれた。


放たれた矢は、空気の抵抗をものともせず、猪に向かって一直線に空中を割いた。


矢は30メートルほど離れた位置にいた猪の右目を貫いた。

その様子をスコープ越しに確認した俺は、彼女の弓の精度に圧倒されていた。


少し間をおいて猪がその場に倒れたのを確認した俺は、ようやくスコープから目を離して彼女を見ると、そこには口にくわえていた矢を弓に番い、油断なく猪に目を向けている彼女の姿があった。


その眼光の鋭さに気圧されていると、彼女はようやく構えを解いて、俺の方へ顔を向けた。


そして、先ほどまでとは打って変わって愛嬌のある笑顔を顔に浮かべて、少し誇らしげに話しかけてきた。


「どうだい? あたしの狩りの腕も中々のものだろう」


「はい、驚きました。弓の威力といい精度といい素晴らしい腕だと思います」


そんな俺の率直な賞賛に、彼女はそこまで言われるとは思ってなかったのか、最初は自信満々に胸を張っていたが、しばらくすると恥ずかしくなったのか、誤魔化すように、処理をしないとね、といい猪の方へ歩いて行った。


その様子を微笑ましく思いつつも、俺も後処理を手伝うために彼女の後を追った。


猪のもとについた俺は、彼女が血抜きを行うために猪の頭と胴体を切り離しているのを手伝い、切り離した胴体を彼女が持ってきた紐で太めの木の枝に括りつけるのを見ていた。


猪を括りつけた太い枝の両端を二人で持って、近くにあるという小川に向かって移動し始めた。


数分でついた小川で、猪の胴体を川にさらしながら、彼女は解体を始めた。


腹部を割き、慎重に内臓を取り出して分類していく。そして胴体の肉を部位ごとに切り分けて、それを水にさらし血を洗い流していく。


その作業を要所要所で手伝いながら、俺は今後のために彼女の手さばきをじっくりと観察していた。


30分ほどで解体を終えた俺たちは、仕留めた猪が体長1メートルを超す個体だったため、十分な肉を手に入れたと判断し、村へ戻ることにした。


葉に包んだ猪の肉をバックパックと彼女の持つ革袋に分けて入れ、重くなったそれらを背負って移動を開始した。


移動を開始してすぐに、前を歩いていたアネモネさんが突然足を止め、身をかがめた。


それを見て俺も咄嗟に彼女に倣って身をかがめると、しゃがみながらアネモネさんがこちらを向いて、進行方向右側を見るように手で指示していた。


それに従い屈めた頭をゆっくりと回し、右側に広がる森を注視すると、俺たちの位置からおよそ50メートルほどの位置に、2体のウルフが何かを探しているようなそぶりを見せていることに気付いた。


おそらく俺たちの狩った猪の血の臭いに引きつられて、森の浅いところまで移動してきたのだろう。


そう判断した俺は、スナイパーライフルのスコープをサーマルモードに切り替えて、周囲にほかのウルフがいないかすばやく確認した。


その結果、今俺たちの近くにいるのはあの2体のウルフだけだということが分かったので、匂いで位置が完全にばれてしまう前に先制攻撃を仕掛けてしまおうとアネモネさんに提案した。


「アネモネさん、左側の1体を任せてもいいですか? 右側の奴は俺が仕留めます」


「わかったよ、任せときな。攻撃のタイミングはどうする?」


「アネモネさんの攻撃のタイミングに合わせます。俺の武器は弓と違って、溜めが必要ないので」


「了解したよ。あたしはもう少し近くから狙いたいから少し移動するね」


「わかりました。攻撃の準備が整ったら合図を下さい」


アネモネさんは手をあげて返事をすると、ほとんど足音を立てず移動を開始した。


彼女が移動し始めたのを確認したのち、俺はスナイパーライフルのスコープを通常のモードに切り替え、その照準を右側のウルフの頭部に向けてじっと待機した。


しばらくして、アネモネさんが移動を完了したらしく、俺より少しウルフに近い木の陰からこちらに向かって手を振っていた。


そんな彼女に向かって左手を上げ返事をすると、彼女の攻撃にタイミングを合わせるべく、俺は深呼吸をし、神経を集中させた。


スコープをのぞき込み狙いを修正する動作と彼女の動きを確認するためスコープから目を離す動作を繰り返しながら、彼女の攻撃のタイミングを待った。


アネモネさんが矢を番え、攻撃のモーションをしているのを研ぎ澄まされた感覚の中で素早く察知した俺は、彼女が弓を射たコンマ数秒後にスコープの照準が合わされたウルフに向けて銃弾を発射した。


発射された銃弾は吸い込まれるようにウルフの頭部に着弾した。

パスっというサプレッサーによってかなり抑えられた銃声を聞きながら、俺はスコープ越しに攻撃したウルフが倒れたのを確認した。


そして、すぐにスコープから目を離し左側のウルフがどうなったか確認した。


アネモネさんに矢を射られたウルフは、首元にそれを突き刺されながらも、なんとまだ意識ははっきりしていた。

そして、攻撃の張本人であるアネモネさんを見つけると、その目に憎悪を浮かべながら彼女に向かって走り始めた。


アネモネさんは、猪の時と同様、油断なく二射目を弓に番えウルフを狙っているようだった。


そして放たれた二射目は、走っているウルフの胸元に刺さった。

それを見てやったと一瞬思ったのだが、信じられないことにウルフは、胸元と首元から大量の血を流しながらも、火事場の馬鹿力とでも言わんばかりにさらにスピードを上げアネモネさんに迫った。


アネモネさんはそれを見て、新たに矢を射る時間が足りないと判断したのか、弓矢を木に立てかけ、腰にあるナイフを鞘から取り出し右手に構えた。


その様子を見た俺は、半ば本能的にその場から移動しながら、ウルフへと射線が通る場所を瞬時に見つけ、不安定な体制のままスコープの照準がウルフの胸にちょうどきたタイミングで引き金を引いた。


銃身から飛び出した弾丸は、当初の狙いから少し外れたものの、ウルフの胴体にあたり、ウルフは銃弾を受けた影響で体を横にブレさせて、その場で転げ落ちた。


その身を地面の上に放り出したウルフが動かないのをスコープ越しに確認して、俺はほっと息をついた。


するとアネモネさんが近づいてきて、話しかけてきた。


「助かったよ。ウルフに接近戦を挑むのは御免被りたかったからね。にしても、やっぱりいい腕を持ってるんだね。森の中じゃ射線を見つけるのだけでも大変なのに、走っているウルフに攻撃を当てるのなんて中々出来ないよ」


「いえ、武器の性能のおかげです。怪我はなかったですか?」


「ああ、全然問題ないよ。とりあえず、ウルフだけ回収して村に急ごう」


俺は了承の返事をして、1人ずつウルフをそのまま持つと村の方向へと急いだ。


こうして彼女との初めての狩りは、少しヒヤッとする場面もあったが、それなりの成果を残して成功裏に終わった。







多分書き忘れていたと思うんですが、ヘルメットについたスコープは倍率はないですが、暗視、サーマル機能がついています。

それと同様に、スナイパーライフルのスコープは倍率はありで、暗視、サーマルの両機能ともついたものとなっています。

また時間ができたタイミングで、前の文章を修正しておきます。

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