お疲れ様
これより一つ前の話の続き……。
おい、書けたか?
書け……ました……。それじゃあ……おやすみなさ……い……。
おい、こら寝るな。電気を消してから寝ろ。
もう……無理……です……。
無理じゃない、とっととやれ。
はーい……。
よしよし、偉いぞ。じゃあ、この調子で一ヶ月分作ろうか。
勘弁してください……。もう無理です……。
あぁん? あんたに休みなんてあると思うのか?
休まないと……死にます……。
じゃあ、亜人になれ。そうすれば、死んでも大丈夫だろ?
嫌ですー。人間やめたくないですー。
ほう、どの口がそれを言うんだ?
この口ですー。
よし、じゃあ、歯を食いしばれ。
暴力反対ー。
ちっ……しょうがねえな……。じゃあ、一発殴らせろ。
痛いのは嫌ですー。
あんたに拒否権はない。おとなしく罰を受けろ。
冤罪ですー。私は何も悪いことしてませんー。
それだよ。
えー?
あんたの罪は何のモーションも起こしてないことだ。
どういう意味ですかー?
あんたのそういうところも大問題だ。というか、あたしらを生み出した創造主がこんなマイペースで本当にいいと思ってるのか!
しょうがないでしょー。昔からこうなんだからー。
じゃあ、今からそれをぶっ壊してやるよ。
えー、それは困るなー。
なんだと?
だってー、私の中にも……もちろん君の中にも悪魔がいるんだよー。私の場合、マイペースで生きてきたから今までやってこられた……。けど、それを壊すっていうことは私の中の悪魔を解き放つっていうことなんだよー? 君はそれでもいいのー?
ああ、いいさ。それであんたが変わるなら、そうなってもらっても構わない。
へえー、そうなんだー。けど、それはあまりにも愚かな考えだねー。
言わせておけば……調子に乗りやがって!
悪魔は一度解き放つと、死ぬまで悪事を行うよー。体の持ち主の意思に関係なく、暴れるよー。それでもいいのー?
あ、あんたが暴れたって、別に問題な……。
本当にそう言い切れるのー? 私の中に蓄積されている闇が外に出たら……今にも崩壊しそうな心があと三秒後に崩壊したら……どうなるのか私にも分からないのにー。
そ、その時はあたしがちゃんと止めてみせ……。
無理だと思うよー。いくら君が戦闘に特化した個体でも完全にリミッターが外れた私とやりあえるとは思えないからー。
そ、そんなのやってみなくちゃ分からな……。
ねえ、知ってるー? 人の体は全身が武器なんだよー。指一本あれば喉や目を潰せるし、闘争本能だけで体を動かすことだってできる……。そんな危険生物に……本当に勝てると思ってるのー?
な、何なんだ。この体にまとわりつく感じの黒いオーラは……。まさかこいつ、人の皮を被った悪魔なのか? それとも、人の形をしたバケモノ……。
ねえ……。
ひっ! な、なんだ?
今日はもう遅いから休ませてよー。そうすれば、体の中にある黒い何かはおとなしくなると思うからー。
わ、分かった……。今日はもう休め。あたしももう寝る。
うん、分かったー。おやすみなさーい……。
……ね、寝たか……。まったく、何なんだよ。本当にもう……。
ねえ……。
ひっ! な、なんだ?
お疲れ様って言ってー。
な、なんでだ?
いいから早くー。じゃないと……死ぬよりも恐ろしいことを経験することになるよー。
……こ、殺される……。言わないと殺される……。殺される……殺される……殺される……殺される……殺される!!
はーやーくー。
わ、分かった! ちゃんと言うから! だから、殺さないでくれ!
そんなことしないよー。君は私が生み出した大切な存在なんだからー。
そ、そうなのか? なら、良かった……。
けど……その気になれば、いつでもこの世から消せるっていうことは理解しておいてね?
は、はい、分かりました。
よろしいー。じゃあ、おやすみー。
あっ、えっと、その……お、お疲れ様……。ゆっくり休めよ。
うん、そうさせてもらうよー。
彼女は悟った。やつの機嫌を損ねた瞬間、本当に消されてしまうと。
だから、これからはほんの少しだけ優しくしてあげようと思った……。
その身で感じたあのドス黒いオーラが何だったのかはよく分からなかったが、とりあえず今日はもう休むことにした……。
優しい人ほど……無意識に闇を増幅させてしまう傾向にある……。
だから、みんなも優しい人には気をつけてねー。(作者が一番、危険だよ……)




