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もう一人の自分
最近、もう一人の自分がこう囁く。
周りにいるやつらは全員、敵だ。皆殺しにしろ……と。
私は……そんなことはない、お前が誰かを殺したいだけだろ? と反論する。
しかし、もう一人の私は。
違う。お前は何も分かってない。みんな、お前のことを内心殺したいと思いながら生きている。だから、その前に殺さないとお前が殺られるぞ?
などと杞憂を言う。
私は。
お前は何を恐れているんだ? 自分以外、信じられないのか? と問う。
もう一人の私は。
ああ、そうだ。俺は怖い。お前と俺がいれば、なんだってできる。だから、俺以外と関わるな。
そんな無茶を言う。
私は、いつもこう言って、もう一人の自分を言いくるめる。
自分以外、信じられないのなら、私との縁も切らないといけなくなるけど、それでもいいの?
もう一人の自分はそれを聞くと、それ以上……何も言ってこなくなった。




