第22話 再会と裏切り
第22話をお届け致します。
このお話でようやくメインヒロインが戻ってきました。
やああ、メインヒロインが黄泉の国から帰ってきた!(違う
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「ううう~、やる事がなくてつまらないっす~」
「アンタの場合はこの機会を利用して、瞑想でもしてみたら? もうちょっと落ち着けるようにさ」
「そんなのつまらないっす。……ん?」
またもや退屈という魔物の襲撃を受けていたドワーフの少女は、目の前に好奇心をくすぐる格好の研究材料を発見した。
「あの~……、ちょっとだけで良いんですけど天使様の鎧を見せてもらえないっすかね?」
「ちょっと、ヴェル!?」
「ヴェルちゃん!?」
突然発せられたその言葉に他の二人が慌てている。それはそうだろう、俺達は戦乙女様にお世話になっている身。それもトキハにとっては信仰の対象だ。生憎、俺は無心論者な為そこまでは危機感を感じなかったので、鍛冶屋としての彼女の好奇心は理解できた。
突然の申し出に不興を買うかとも思われたが、さすがは神様の一族。懐が深かった。戦乙女様は面白そうな人間を見たかのように微笑して答えたのである。
「この鎧は我らが父たる大なる神々から与えられたもの。流石に詳細は明かせませんが、見るだけなら構いません」
その答えにドワーフの少女は嬉々として、戦乙女様の周りに陣取った。色々な角度から神代の神具を見回している。ハラハラしながら見守る二人をよそに、喜色満面といった顔で此方を振り返った彼女は口を開いた。
「コウキ姉え! ちょっとこっちに来てほしいっす!」
何やら、お呼びのようだ。
「どうした? あんまり迷惑かけると天罰が下るぞ?」
「まあまあ、これはいらないっす!」
近くにまで来て小言を口にする俺のマントを、ヴェルは一気に取り去った!
「ちょっと、おい!?」
「ほう……、それは私達の鎧の模造品ですか?」
今だにこの[戦乙女の鎧]を人前にさらけ出すのは恥ずかしい。ましてや目の前に本物がご降臨されているのだ。まるで、物マネ芸人がご本人様の前に立ったかのような気分だ。
「さすがに本物を見た事はなかったので、アタシの中の天使様のイメージで作ったっす! 最高傑作っすよ?」
「確かに、そなたは良い職人ですね。この鎧ほどではないですが、作り手の想いが伝わってくる良い鎧です」
「ホントっすか? 光栄すぎて涙が出そうっす!」
彼女はその言葉を聞いて小躍りしそうな勢いだ。
「色が似ているだけで形としては、戦乙女様の鎧の方がいいな俺は。こっぱずかしいし」
鎧を身に着け始めてから、流石に肌が露出しているのは問題だと口すっぱく言うと「わかったっすよ~」と[魔光石]を調整し肌の部分が黒く染められた。丁度インナーを着ているかのようだ。最初からこうしろ!と更に苦言を呈したのは言うまでもない。
それでもちゃんと急所を含めて全身を覆い隠す戦乙女様の鎧は、とても頑丈そうだ。
「先ほども言いましたが詳細は明かせません。ですがもし、貴方がこの鎧を着たならば……」
まあ神様の鎧だ。俺なんかが着れる訳がないのだが、何やら戦乙女様の言葉が止まった。
何だろう?ジッと俺の顔、腕、身体、足を見聞している。
「あの……。何か?」
イヤな予感がした。
「貴方は……人間ではありませんね?」
俺の心臓が一拍、大きく鼓動した。背中から滝のような汗が滲み出て流れ始める。後ろの三人にも聞こえてしまっただろうか?
「コウキ姉?
コウキ?
コウキさん?」
どうやらバッチリ聞こえてしまったようだ。どうする?俺の正体が知られてしまえば、この三人娘にも迷惑をかけてしまうかもしれない。
どう言い訳をしようか頭の中で思考をフル回転させる。どうしよう全然、良い言い訳が思いつかない。もはや俺の背中はナイアガラ状態だ。
「コウキ姉、もしかして……コウキ姉も天使様だったっすか!?」
「なぜ、そーなる!?」
「まあ、普通の人間にしては綺麗すぎよね」
「あわわ……コウキさんが天使様……今日からは毎日、お祈りを捧げないと」
助け舟は意外なところから登場した。
真っ青な顔を隠しも出来ない俺は、ドワーフの少女のトンチンカンな一言で地面に突っ伏した。
正に大混乱という言葉がこの場には相応しい。いやいや、ヴェルの勘違いなのだが天使という事にしておいた方が良いのだろうか? いやでも、トキハに毎日、お祈りを捧げられるのは勘弁だ。
そんな騒乱の真っ只中に、新たな言葉が舞い降りた。
「ヒルド姉様。その人間は私のお客様です」
その声は、とても聞き覚えのある音色で聖域全体に響き渡った。王都を出てから、毎日のように夢に出てきた声。俺の記憶にある最後の声は懺悔の言葉だった、あの声が。
天界に続く聖域の奥に存在する階段から聞こえてきた。
「エルル。天界に帰ってきていたのですか」
「はい。つい最近の事ですが人間界にて覚醒しました。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
コツ、コツ、と階段を下りてくる音が耳に突き刺さる。やがてヒルドと呼ばれた戦乙女と同じ鎧を着て、彼女が降臨した。
「……エダ? エダなの!?」
「探しましたよ。コウキ=ヴィーブル!」
その顔は俺が王都で殺しかけ、癒した。親愛なる巫女の顔そのものだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「え、何? 知り合いなの?」
エルルが心底、驚いた風に俺の顔を伺ってくる。しかし当の呼ばれた本人である俺は、突然の意外すぎる再会に空いた口が塞がらない。
「エダ……だよね?」
確かに顔は俺の見知った、彼女そのものだ。ただし、雰囲気がまるで違う。今までの優しい雰囲気がなりを潜め、苛烈で鋭い瞳は彼女のものとは思えない。思わずフラフラと彼女の近くへ歩いてゆく。王都で無事は確認させてもらってはいるが、元気に動く姿は初めて見たのだ。
「コウキ姉! 危ないっす!!」
いきなり後ろから押し倒された。突然の衝撃に驚きと共に後ろを振り返ると、ドワーフの少女が俺を押し倒していた。
「……何を……?」
何かが空中を舞っている。黄金に輝く何かがヒラヒラと地面に散らばった。それが自分の髪の毛であると言う事を脳が認識するのに、数瞬の時間を要した。一体何が起こったのか。目の前に立つ懐かしい顔を見上げると、悪鬼のごとき表情で光の槍を振り切ったエダが俺を見下ろしていた。
「運のよろしいこと。……仲間の少女に感謝しなさい」
それは正に殺気だった。これまで聖母のような慈愛しか彼女から受け取ってこなかった分、俺の中での衝撃は凄まじいものとなっていた。
間違いない。今のエダは俺を明確に敵として認識している。本当は認めたくもない事実が眼前に突きつけられている。
「……何で、何でだよ!?」
「ヴェル! コウキを連れて下がりなさい!!」
ハーフエルフの少女の叫び声と同時に、身体が強引に後ろへと運ばれる。すぐ真横を疾風の矢が空を切った。仲間の三人娘がエダを敵として認識した瞬間だった。
「トキ、コウキ姉をお願いしていいっすか?」
「うん。ヴェルちゃん……気をつけて」
俺の感情が今だ脳内で荒れ狂っている事を察したのだろう。ドワーフの少女が俺を神官の少女に任せると、自ら最前線に向かっていた。
「エダさんって名前なんすか? ウチのコウキ姉と知り合いみたいだけど、問答無用で斬りかかるのは見逃せないっす!」
愛用の大槌を、眼前の戦乙女と化したエダに突きつける。ドワーフの少女は怒っていた。普段は天真爛漫で大抵の事は笑って済ます彼女が、怒りを顕わにしている。
そんな彼女への返答は、なんとも感情が表に出ない一言で返された。
「私自身は、そこの邪竜の知り合いという訳ではありません。知り合いだとするならば、[私の中にいる彼女]でしょうか」
俺の仲間達が、その一言で凍りついたかのように動きを止めた。エダは何も知らないのかと嘲るような微笑へと表情を変えている。
「貴方は何を言っているの? ……コウキが邪竜? 見ての通り人間よ?」
三人娘を代表してハーフエルフのケイカが声を張って反論した。
「その人間の姿は化けた姿に過ぎません。彼女は本当の姿を見せていないのですね」
やめろ。
「彼女は本来、我らが父たる大いなる神々が地上に遣わした竜」
やめろ。やめろ!
「地上の人族に天誅を下す為に舞い降りた際、異物が紛れ込んだ失敗作」
頼むからやめてくれ!!
「人間の皮を被った、邪竜という名の怪物なのです!」
「やめろお――――――――――――――――――――!!!」
俺の怒声とも悲鳴とも言える声に、ウチの三人娘は一歩も動けずにいた。皆、身体を震わせながらその場に立ち尽くしている。おそらくは理解しているのだろう。俺の悲鳴が何よりも戦乙女の言葉を肯定している事に。
「化けの皮が剥がれたでしょう。戦乙女エルルの名において貴方達に命じます、その者を引き渡しなさい。ならば終焉のその時まで命は取らないでおきましょう」
それは神の声だった。
普通の人間では決して神の声に抗う事は出来ない、そんな声だ。
俺は心の中で覚悟を決めていた。元々が異世界人であり、この世界にとっては異物である自分だ。そろそろ年貢の納め時なのかもしれない。何よりもこれ以上、誰かを裏切りたくはないし、裏切られたくもなかった。
「ふざけるなぁ――――――――!!!」
聖域に大音量の怒鳴り声が鳴り響いた。その大音量に一瞬、誰の声なのか理解が及ばない。自暴自棄になっていた俺は思わず顔を上げ、そして見てしまった。
自分より前に陣取っているため、彼女の姿は後ろ姿しか確認できない。
それでも見えてしまった。
彼女の足元に一滴の雫が滴り落ちたのを、はっきりと。
「コウキ姉が邪竜? 人の皮を被った化物? ふざけるな!
まだ短い時間しか一緒に冒険してないけど、コウキ姉は優しい! 暖かい!!
何にも知らない奴がコウキ姉を馬鹿にするな!!!」
いつもの彼女の特徴である語尾さえ忘れるほど、ドワーフの少女ヴェルは激高した。自分の為に涙を流してくれる少女が目の前にいる。それだけで救われるような気がするのだから、自分と言う人間も安上がりに出来ているようだ。
「トキハ。コウキをお願いね、私も前に出る」
「うん。ケイカちゃんも気をつけて……」
神官のトキハと共に俺の傍で肩を抱いてくれていたハーフエルフの少女が立ち上がり、前線へと飛び出した。
「アンタにしては良い口上だったわね。おかげで目が覚めたわ! 私達でこの場を切り抜けるわよ!!」
「ケイカっち……了解っす!!」
そのケイカっちって呼び方やめなさいよね!なんて軽口を叩きながら二人は戦乙女エッダに向かって武器を構えた。
その表情を俺は見る事は叶わなかったが、その背中は実のたくましい。今度は俺の目から涙が溢れる番だった。
「……愚かですね。まったくもって愚かとしか言い様がありません。ならば邪竜もろとも天誅を下すとしましょう!!」
戦乙女エルルの言葉を皮切りに、この聖域は戦乙女と人類の戦場と化した。
その戦闘は一方的な展開となっていた。
何しろヴェルの大槌もケイカの矢も、エダの纏っている本物の[戦乙女の鎧]がその全ての威力を相殺しているのだ。対して前衛を勤めるヴェルは、小柄な身体を生かして戦乙女エルルの一撃を避け続けてはいるが所々に軽傷を負っている。
思わず「もうやめてくれ!」と口に出してしまいそうになる。いくらヴェルが身軽でも攻撃が通らないのでは勝敗は分かりきっているのだ。
そんな俺を留まらせたのは、隣で俺の肩を抱いてくれているトキハだった。震える手を押さえ込みながらも、前線での戦いを必死で見守っている。
いつしか戦闘は膠着状態に陥っていた。
「苦戦しているようですね、エルル。私が終わらせましょうか? 覚醒したばかりで力を使い慣れていないとみました」
今まで沈黙を続けていたもう一人の戦乙女ヒルドが声をかけていた。
「お気持ちだけを、ヒルド姉様。この任務は、我らが長姉ブリュンヒルド姉様より命じられたものです。手助けして頂く訳にはいきません」
だが、その表情には苛立ちの色が濃く表れている。自分の身体が思い通りに動いていないようだ。
「ヴェル。……まだ行ける?」
「もちろんっす! と言いたいところっすけど、ちょい血が出すぎっすね」
「相変わらず無茶するわね。私の矢もあと三本、かなり拙いわ」
「じゃあ、例のヤツ。行くっすか?」
「アレの事? ……出来ればやりたくないけど、しょうがないか。トキハもいいわね?」
ケイカが俺の肩を抱いているトキハにも声をかけてきた。
「うん。コウキさんはここで休んでいてくださいね」
それだけを言うと、トキハも数歩前に出た。
例のヤツって……。嫌な予感しかしないぞ。
「じゃあ、行くっすよお――――!!」
ドワーフの少女が持つ大槌がガチャガチャと駆動音を立て始めた。大槌の先端が開き、中からドリルが出てきたのだ。ドリルがまるで歯医者で聞くような強烈な回転音を立て始める。
トキハは大槌に聖なる加護を付与するべく祈りを開始した。
そして、ハーフエルフの少女の持つ弓も変化を始めていた。小声で何やら呟きながらも文字通り弓なりにしなっていた長弓が中ほどで折れ曲がり、一本の棒となった。中央に施されていた魔石が浮き彫りになり先端で光り輝く。それは何処から見ても[杖]だった。
「世界樹の重み」(ユグドラシルグラビティ)
小さく、か細く呟いたケイカの口が詠唱を終える。その瞬間、聖域全体が押しつぶされた。一体どれほどの重力が自分の身体に襲い掛かっているのか分からないが、自分の足が石造りの床にめり込んでいる。
俺はもちろんトキハや、エルル本人、戦乙女達も地面に膝を折った。
「い、今よヴェル! ぶっ飛びなさい!!」
杖を床に突きたてながら必死の形相で詠唱を維持するケイカに、ヴェルが答えた。
「りょ、りょうかいい――――!!」
ケイカの重力魔法の影響下にありながらも、彼女の手にある白い加護に包まれたドリル型の大槌が、もう一段階変形した。反対側の面に穴が開き、灼熱の閃光が噴出する。まるでジェットエンジンだ。
ヴェルは自分の身体を芯にして回転を始めた。まるでペリコプターのようにドワーフの少女が飛翔したのだ。その目指す先は言わずもがな一つだけ。
「くらええ――――!![雷神の巨槌]!!!」
まるで隕石が衝突した跡のようなクレーターが、戦巫女エルルを中心として形成された。
聖域全体に石の粉が煙となって巻き上がり、俺達全員の視界を覆い隠した後に大爆発を起こした。
「粉塵爆発ってヤツか?これは……」
この大技は本来開けた平地で使用するのだろう。でなければ、この粉塵爆発は明らかな自爆だ。ケイカの重力魔法で相手の動きを封じて、相手に最適な加護を付与し、ヴェルが無理矢理飛翔して重力と、落下スピードと、回転速度を加えたドリルの一撃で粉砕する。
大技だった。そもそもあのマッドな鍛冶屋が普通のハンマーを自分の愛槌とする訳がないのだ。
「二人は……、大丈夫か?」
「大丈夫です! あの程度でどうにかなる二人じゃありません!」
俺の前方でトキハが力強く保証してくれた。暫くは衝撃の埃が辺りに立ちこめ、二人の無事を確認する事ができない。やがて聖域の奥から一陣の風が吹きつけ、埃を吹き飛ばした。
爆発の中、ヴェルとケイカは満身創痍ながらも生きていた。粉塵爆発が起こる瞬間、ケイカが防護魔法でヴェルを庇ったようだ。
俺とトキハはアイコンタクトでお互いの意思を示し合うと、二人に向かって駆け出した。クレーターが形成された大穴の縁に二人はいた。良かった、これくらいなら治癒の奇跡で回復できるだろう。
「にゃはは……。さすがに室内でコレはもう勘弁っすね」
火傷だらけ、埃だらけになりながらもドワーフの少女の顔は明るい。
「まったくよ、髪が焦げちゃったじゃない。二度とゴメンだわ」
他に気を遣うべき部位があるだろうに、しきりに髪を気にするケイカ。彼女なりの照れ隠しなのだろう。
「まったくもう……。二人ともこっちに来て! 治療が終わったらお説教だからね!」
普段大人しい人間ほど、怒ると怖いものだ。二人とも首を竦めながら治療を受けていた。
最後までお読み頂き有難うございました。
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