表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝珠竜と予言の戦巫女  作者: Mikami
第3章 新たな仲間
23/138

第21話 戦乙女―顕現

連日投稿10日目。

第21話をお届けします。

もうちょっとだけ三人娘が主役となります。その後は……お待ち下さいw


ブログ始めました!

私なりの執筆に至るまでの準備方法を記事にしております。

「アラフォーおっさんが「小説家になろう」でラノベを書いてみた」

http://mikami7194.livedoor.blog/


ツイッターも始めました!

https://twitter.com/Mikami47386113



「ううううううう。出番がないっすよ~!」


 自分の出番が少なくて、我らがリーダーは力を持て余している。

 それはそうだ。今回の敵は小さい昆虫や爬虫類がメインなので、ドワーフの少女が持つ大槌(おおづち)では細かな狙いを付けづらい。


「我慢なさいよ。現状の敵に対して有効なのは私の弓なんだから。アンタは大物が出てくるまでは力を温存するの!」


 とツッコミを入れつつも、バラスのおっさんの指示通りに矢を打ち続けるケイカ嬢。

 それにしたって、あの小さい標的にミスもなく当て続けるのだから彼女の弓の腕も大したものだ。

 [東の砦]での高名は伊達ではないのだ。

 実際問題、俺もうまく盾役が出来ているかと言えば、はなはだ疑問だった。盾役(タンカー)の経験が浅いのもあるが、現状、真正面から来る敵は皆無に等しい。以前も思ったが小さい敵を相手にするのは滅茶苦茶、面倒なのだ。


「ああああああ、もう! こうなったら(クマ)でも狼でもトナカイでもいいから出てくるっすよおお!!!」


 愛用の大槌を振り回しながら騒いでいる。おいおい、そんなこと言うとホントに出てくるぞ? もう探索も大詰めの地下三階にまで到達していた。そろそろ大物が出て来てもおかしくない。


「ねえ、コウキ。なんかおかしくない?」

「ん? 何がだ?」


 中衛のケイカが俺のいる前衛にまで来て話しかけてきた。


「先に入った冒険者連中がいないのよ。半分は今だに戻ってきてないって話じゃない。それなのに、今だに誰とも遭遇しない。コレおかしいわよ?」


 ケイカが告げた事実にPT全員の緊張が高まる。入口に長蛇の列が出来るほどの冒険者がいたのだ、その半分は未帰還。確かにおかしい。


 ってことは……。


「ここからが本番ってことよ」


 タリナさんの発した結論に気を引き締める。どうやら、この奥が遺跡の終着点のようだ。

 慎重に歩を進めると、そこはドーム型に広がった大部屋になっていた。中央には巨大な魔方陣が鎮座しており、それを守るかのように身の丈三メートルはありそうな大熊が立ちはだかっていた。


「……ッ!!」


 パンちゃんの一件以来、熊の魔物は苦手中の苦手だ。もしかしたらパンちゃんのお母さんかも知れないと思うと、武器を持つ右手が震えてしまうのだ。


(大丈夫。この熊からは、あの時の、パンちゃんの臭いもしない。大丈夫、だいじょうぶ……)


 胸の中で暴れまわる心臓を必死になだめる。もちろん、相手は俺が冷静になるまで待ってくれるはずもなく、


「ぐおおおオオ――――――!!!」


 広間全体が震えるほどの雄叫びを上げながら、俺に向かって一直線に飛び掛ってきた。


「ヤベッ―――!」


 いくら俺が頑丈でも、あの巨大な爪の一撃を受ければ無事では済まない。だが逃げる訳にはいかない。俺はこのPTの盾役なのだから!

 頭上に大盾を傘のように掲げる。大熊の力任せの一撃が、盾越しに凄まじい衝撃となって伝わってくる。


「ぐえッ!!」


 今まで体験したことのない衝撃が全身に響き渡る。思わず膝を突いてしまったが、そんな俺を飛び越えて小さな影が現れた。


「クマ(こう)! コウキ姉に何するっすかあああああああ!!!」


 自分より巨大な大槌を天高く振り上げ、大熊の脳天目掛けて思いっきり振り下ろす。だが相手は僅かに体勢を変える事によって直撃を回避した。


「ヴェル! 引きなさい!!」


 後ろを見れば、ケイカが炎に包まれた矢を三本纏めて引き絞っている。付き合いが長いだけにこの辺りのコンビネーションに不備はない。素早く俺の後ろまでバックステップしたドワーフの少女と入れ替わりに、炎の矢が大熊に襲い掛かった。

 だが大熊の分厚い毛皮が強固な鎧となり、刺さりはしたものの致命傷には程遠いようだ。


「ヴェル特製の火矢でもこの程度か。熊の魔物ってのは本当に面倒ね!」

「ケイカ!! 攻撃は俺が全て防ぐから目か口を狙え!!」


 俺の注文はハーフエルフの少女の腕ならば可能だと確信している。


「注文が毎回、酷いのよ!!」


 大熊は狂ったかのように俺に向けて爪を振り回してくる。だが俺に標的にされている限り、後ろの皆に危険はないのだ。


「ケイカちゃん風の矢を! 私が加護を付与します!!」


 神官であるトキハがケイカの矢に聖なる加護を付与する。魔素を宿す相手を浄化する属性としては、これほど優位なものはない。

 それと同時に信じられない行動に出る人物が一人。


「おいっしょおおおおお!!!」


 盛大な掛け声と共に、なんと、ヴェルが熊の首根っこに取り付いた!大熊の顔をガシッと両手で掴み、ケイカが狙いやすいように固定している。


「ちょ、おい!!」

「だいじょうぶっす!! ケイカあああ!! 撃っちゃええええええ!!!」

「相変わらず、無茶するわね。任せなさい!!!」


 聖なる加護を授かった矢が、風の如き速度でケイカの弓から放たれた。狙いは正確無比。大熊の目玉に寸分たがわず吸い込まれる。さすがの大熊も後方にグラリと崩れていった。


「トドメっすうううう!!!」


 頭部を足場にしてドワーフの少女が天高く飛び上がり、自らの体重と落下スピードを乗せた一撃が[致命の一撃](クリティカル)となる。

 遺跡中に轟音が雷鳴の如く鳴り響いた。


「ヴァああああ………」


 悲鳴とも取れる呻き声を上げながら、哀れ大熊は地面に倒れ付すのだった。


「かんっぜん! 勝利!!」


 大熊の上で、満面の笑みで勝利のVポーズを決めるドワーフの少女に、俺達は只々(ただただ)、苦笑した。



 大熊の魔物の上で勝利の余韻に浸るドワーフの少女。俺はおもむろに彼女に近づき、豪快な拳骨を脳天に落とした。

 タリナさんの真似である。


「ぐううううう……。何するっすか、コウキ姉……」


 恨めしげに俺の顔を伺っているが、流石に先ほどの行為は見過ごせない。


「なんて無茶するんだ! 少しでもタイミングが悪きゃ、あの世行きだぞ!!」

「うう~。でもこれくらいは何時もの事で……」


 一瞬でも矢のタイミングが遅れれば、鋭利な爪がドワーフの少女に襲い掛かっていただろう。どうやら、この子は自分の行なった行為の危険性に気付いていない。不変な物なんて存在せず、無くしそうになって始めて分かる大切な人の存在を。


「えっ? うぇ!? うええええええ!?」


 ヴェルが俺の胸の中でうろたえている。咄嗟(とっさ)に俺が抱き締めてしまったからだ。


「いいか? 自分の身体が自分だけの物だなんて、決して思っちゃいけない。お前が居なくなれば悲しむ人間が、少なくともここに三人もいるんだ。その三人の為にも生きなくてはいけない……分かるな?」


 俺の腕の中で我らがリーダーであるドワーフの少女が、顔を真っ赤にしてアタフタしている。だが、こればっかりは実体験した人間が伝えなければならない教訓だった。


「分かった! 分かったっすから!! コウキ姉、恥ずかしいっすよ!!」

「よし。分かればいい」


 俺が彼女を拘束したのは時間にして数分の間だろうが、魔物と戦った後よりフラフラしている。


「どうだった? ヴェル。コウキの身体は温かかった?」


 相変わらずの調子で、からかいの言葉を投げてくるケイカだったが俺と同じ感情を抱いていると信じている。というか、鎧を着ているのだから暖かいも何もないのだが。


「コウキが私の台詞まで喋っちゃったから、どうこう言う気はないけど……。そうね。一言だけ。今の温もりを味わえなくなったらアンタ、我慢できる?」

「う、うぐぐ……」

「分かっているならよろしい」


 小柄なドワーフの少女の頭をハーフエルフの少女がポンポンと叩いた。後ろに控えているトキハも優しく微笑んでいる。

 これだけ言えば、しばらくは無茶な真似もしないだろう。


「家族会議は終わった? それにしてもコレどうしようかしら」


 どうやらタリナさん達を待たせてしまったらしい。


「そうだな。俺は初めて見るけど、この魔方陣って何?」


 遺跡最奥の地であるこの部屋には、中心に巨大な古代の魔方陣が鎮座していた。魔方陣の線が青白く光り輝き、今だ現役であることを物語っている。魔方陣の外縁に沿って巨大な水晶が牙のように立ち並んでおり、青白い光を煌びやかに反射している。


「おそらくは、転移の魔方陣でしょうね。何も調べずに使うのはちょっと危険ねえ……まあ、それもそうだけど」


 タリナさんが広場の隅に視線を移したので、自然と俺達の視線もそちらに向いていく。


「コイツ等もどうにかしないとね」


 突然の大熊の襲来で見る余裕もなかったのだが、部屋の隅には俺達より先に来た冒険者達が大量に転がっている。しかもよくよく観察すれば生きている冒険者も多数いるようだ。あの魔方陣を財宝だと思って突入してしまったのだろうか。もっと慎重にいけば良いものを。


「エサの鮮度を保つ為に生かされたんだろうな。運の良い奴等だぜ」


 バラスのおっさんが傷の程度を調べている。どうやら歩けないだけで、そこまでの重症者はいないようだ。よかったよかった。


「私達は一度、外に戻って応援を呼んでくるけど。あんた達はどうする?」

「俺達か?う~~ん」


 俺達の現状は正直(かんば)しくない。一応を熊の魔物を倒した褒賞(ほうしょう)はもらえるだろうが、肝心のお宝は何一つゲットしていないのだ。


「コウキ姉ええええ……」


 ヴェルは行きたそうにしているが、さっきの件のお陰で強く主張できないらしい。誕生日プレゼントをねだる子供のような仕草だ。


「どう思う?」

「まあ、危険がないかと言えばあるだろうけど。そもそも、それで尻込みしてちゃ冒険者なんて勤まんないしねえ。コウキがしっかりヴェルの手綱を握ってればいいんじゃない?」


 人任せかよ!と言いたい所ではあるが、同じ前衛として考えるなら、まあ。その通りか。


「俺達はこの先も探索してみるよ。大丈夫、無理はしないから」

「そう、皆がそう言うなら強くは止めないわ。頑張って借金返済しなさいよ?」


 うぐ、どこまで調査の手が伸びているのか分かったもんじゃない。ヒラヒラと手を振りながらタリナさんは俺達を送り出してくれた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 転移した先は、何やら荘厳な雰囲気をかもし出している神殿の中のようだった。


「何ココ。もしかして天界にでも来ちゃったのかしら?」


 念のために、弓矢を番えながら転移の魔方陣に飛び込んだハーフエルフのケイカが率直な感想を口にした。彼女が口にした[天界]は死後の世界という意味ではない。実際に世界樹の上にあるとされる神々の世界、それが[天界]だ。

 周りを見渡せば、なるほど。これがこの世界で生きてきた彼女の天界像らしい。つまり無駄に光が溢れ、白い大理石の床が広がり、色鮮やかなステンドグラスが壁を埋めている大神殿のような光景をだ。

 そして、こういった建築物は奥に行けばいくほど踏ん反りかえれるように、立ち位置が高くなるのもお約束だ。


「もしかして、神様でも出てくるっすかね?」

「ええ~? 私、心の準備ができてないよ~」


 ドワーフの少女ヴェルの軽口に真面目に返答する人間族の神官トキハ。こんな神々しい場所に来ても、この三人娘のテンションは変わらない。それが俺の心を支えてくれていた。そもそも無神教の俺には神様に祈るという習慣もなければ、礼拝堂に訪れる機会も元の世界ではなかった。

 単純に美しい光景だとは思うが、そもそも神殿に良い思い出がない俺には気分がいい場所であるはずがないのだ。


「何者ですか? 此処は天界への(しるべ)となる聖域。地上の者が立ち入って良い所ではありません」


 神殿の奥から、この世の物とも思えないような声が響いてきた。決して声を張り上げたような大きさでもなく、それでいて神殿内の人間、全ての鼓膜を確実に震わせる。そんな声だ。


「ホラ! アンタも頭を下げなさい!」


 どうやら脳が思考を放棄していたらしい。両隣を見れば、俺の仲間である三人娘が揃って跪き、頭を垂れていた。ハーフエルフの少女が俺の頭を押さえつけながら、同様のポーズを強要してくる。だから俺は無神教者だってばと文句を言いたい所ではあるのだが、空気を読んだ方がいいのだろう。大人しく、三人娘に習う事にした。

 俺達を代表して言葉を発したのは俺ではなく、かと言ってPTのリーダーたるドワーフの少女でもなく、何時もはフォロー役に徹している竜神教神官の少女、トキハだった。


「お初にお目にかかります、天使様。私目(わたくしめ)は竜神教にて司祭の地位を賜っております、神官トキハと申します。どうか突然の訪問をお許しください」


 普段のおっとりとした口調からは想像も出来ないくらいの、流調な言葉使いに俺は床を見つめながらも驚いた。エシアさんと同じ地位である司祭だったのか。もしかしら良いトコロのお嬢様なのかもしれない。


「許しましょう。どうやら偶発的に迷い込んでしまったようですね。しかし、地上の人間がこの場所に長く滞在する事は許されません」

「はい。お言葉の通りなのですが……」


 さっさと出て行けと言う天使の言葉に、トキハが同意しつつも戸惑いを見せた。俺もトキハが言わんとする事が理解できる。この聖域と呼ばれた神殿は、入口はあれども出口が見当たらないのだ。


「ああ、そうですね。失念していました。この聖域に正式な出口はありません。なぜならば聖域は天界へと登る為の道であり、我ら戦乙女の導きのみで道が開けますが、地上へ降りる場合は大いなる神々の許可が必要だからです」


 戦乙女……あのゲームとかで出てくる綺麗な天使。ヴァルキリー。ヴァルキュリア。ワルキューレ。色々な呼び方はあれど[北欧神話]では有名な存在である。思わず俺は好奇心から顔を上げ、戦乙女様を見上げてしまった。


 綺麗な女性だった。兜の面を下ろしている為その顔を見る事は叶わなかったが、綺麗なピンク色の髪を肩まで届くか否かと言ったところで切り揃えている。白装束の上に(まと)った白と青を基調とした全身鎧が何とも神々しい。

 どこか、王都で分かれた彼女を彷彿とさせる姿だった。


「コラっ! 何勝手に頭上げてんの!」


 隣にいるハーフエルフの少女にどやされるが、戦乙女様はフフフッと微笑しながら許してくれた。


「私も戦乙女として地上からの聖域を守護する身。今は天界へ至る為の修行中の身でもあります。貴方方もまだまだ天界へ至るには未熟。しばらくは逗留(とうりゅう)し、神々の意思を待つと良いでしょう」

「よろしいのですが? 先ほど長く滞在してはならぬ……と」


 トキハが不安そうに伺っている。無理もない、信仰の対象と直面しているのだから。


「確かにそう言いましたが無闇に天界へ人間を導く訳にもいきません。神々の御意志が降りるまでの期間、特例とします」


 つまり地上に戻れるかは文字通り、神のみぞ知ると言う事だ。その余りの曖昧な内容にトキハ以外の二人は困ったような顔をしていたが、騒いだところで仕方が無いのも事実だ。

 俺達は戦乙女様の言葉に素直に甘えさせてもらう意見で一致した。


 その聖域に導くという言葉の意味をなんとなく察しながら。

最後までお読み頂き有難うございました。

よければ評価、感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196299250&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ