第20話 お祭り騒ぎの遺跡探索
節目の第20話をお届け致します。
三人娘がワチャクチャして話が前に進みません(笑
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2019.5.2改稿
数日後の昼、ようやく旧王都に到着した俺達は現場のお祭り騒ぎに頭を抱えてしまった。
元々、野営地として有名であった場所に国の調査隊と数多くの冒険者が集まったのだ。人の集まる所に商売あり。計算高い商人達が儲けの臭いを感じ取り、すでに数多くの露天が立ち並んでいた。
「うがあああああああ! やっぱりこうなったっす! もうこっそり進入するなんて出来ないっすよ!!」
お祭り会場の入口でドワーフの少女は雄たけびを上げる。
「こんな事だろうと思ったわよ。で? どうすんの? 我らがリーダー?」
そもそも、情報を手に入れた時点で失敗していたのだ。結末としてはこんなものだろう。遺跡が発見されたであろう地域は、王国の調査団によって厳重に警戒されていた。
「せっかく来たのですから、見学くらい出来ませんかねえ」
すっかり他の二人は諦めムードだ。冒険者というより観光客と化している。
「そうだな。せっかく来たんだし様子をみようぜ」
「うぐぐぐぐ……」
正直な所、希望がまったくない訳でもない。事前の情報にあった少数しか派遣されなかった調査団。そしてこのお祭り騒ぎ。
儲けを確信しているからこそ、商人の客となる冒険者が留まっているのだから。
俺の予想は、半分は正解だった。しかして、もう半分は外れていた。
その日の内に、王国の調査団は人員不足を理由に臨時の調査員を募集したのだ。もちろん対象はこの場に集まった冒険者達だ。
ただし、PT単位での雇用となる事。一つのPTに付き必ず監視員が同行しなければ遺跡に入れない事も同時に発表されたのだ。ちなみに監視員は昼夜問わず貼り付くそうで、夜間に不審な行動をしたら即バレるシステムだ。
間違いなく遺跡泥棒をしないための監視役である。
「これだったら[東の砦]でクエストを受けていた方が移動費の分、お得だったわね」
「まぁまあ、ケイカちゃん。ほら、報酬額は成果報酬だって。すごい物を見つけたらお給金も沢山もらえるよ?」
「逆に言えば、なんにも見つからなければ骨折り損ってことよ」
二人の会話がヴェルの頭上に何本もの線を降らせている。まあ、二人とて本気で怒っている訳ではないのだ。これもコミュニケーションの一環だろう。
「とりあえず、遅い昼メシといくか? 久しぶりに携帯食以外の食べ物も食いたいだろ?」
俺の言葉に賛同した三人は一路、屋台街に足を向けた。
屋台街に向かった俺達は、文字通りのお祭り騒ぎとなった光景に改めて目をむいていた。なんと、大道芸人までいたのだから笑えない。
「すごいっす! [東の砦]より賑わっているっすよ!」
「はいはい。わかったから少しは落ち着きなさい」
「ふふっ……」
先ほどまでの不機嫌さは何処吹く風。なんだかんだ言っても彼女達はまだ十代半ばの少女達だ。日本で言えば遊ぶことだけを日々考えている年齢である。
「あ、あそこの屋台すごい行列っすよ!」
とヴェルが指差した先には確かに、長蛇の列が形成されていた。よほどの人気店なのだろう。他の屋台の店主が恨めしげに睨んでいる。
思わず近づいてみると、
「だあああはっはっは! まだまだ材料はあるぞ!! 慌てずに待っていろ!!」
「……えっ?」
とっても聞き覚えのある声が行列の先から聞こえてきたのだ。
「ちょっとお父さん! 調理しながら大声で叫ばないでよ。バッチイじゃない」
「おお、スマンスマン。はっはっは!」
間違いない。王都での[聖誕祭]に出店するため、ユミルの街から同行してきたかつての雇い主。大将と看板娘のエリさんだった。
「げっ……」
幸い人ごみの中から覗き込んだ為、大将達は俺の存在に気付いていない。自分で言うのもなんだが、俺の外見は目立ちすぎるため変装しているのだ。身体は大きなマントで鎧を隠し、洗えば黄金に輝く長髪もグシャグシャにまとめている。
それでも大将やエリさんの前に立てば気付かれるだろう。
今はまだ会えない。会わせる顔がないのだ。
「さすがに列が長すぎるな。お腹も空いたし別の屋台にしようか」
「そうね。あっちに行きましょうか」
「ええ~。この屋台おいしそうっすよ~」
「ほらほら、ヴェルちゃん。あっちの屋台はお肉があるよ? お肉」
駄々をこねるリーダーを説得しながらも、俺達は他の屋台に腰を降ろすのだった。
かつての知人から自分を遠ざける。
俺の此処での目論見は、一度目は成功し、二回目は……失敗した。
「なんでアンタ達が調査団にいるんだ……」
「なんだ、久しぶりだってのに随分だな。姉ちゃん」
「こればかりはコイツに同意ね。お久しぶりなのにその言い草はないわ、コウキさん」
王国の臨時の調査団員となった俺達に同行する事となった神官と騎士は、エダの友人にして王都で出会った人。
バラスとタリナさんだった。
俺は今夜の夜営場所から少し離れた場所で二人と対峙している。いつもは涼やかな印象を与えてくれる虫の音が妙に苛立ちをつのらせた。
「さすがの殿下だって、アンタへの監視をやめるほど愚かじゃないさ」
それは俺が今現在も見張られている事を意味する。
「殿下ってだれさ。そんな偉い人に直接、命令されているのか?」
「お前さんだって会った事があるはずだぞ? シグルド殿下に」
シグルド? ……シグルド……シグ。
「シグさんの事か!? シグさんって王子様だったの!?」
何を今更とでも言わんばかりの表情である。
「俺達はシグルド殿下からの勅令で今ここにいる。おそらくは見知った人間の方がお前さんを刺激しないとでも考えたんだろうさ」
「あら驚いた、アンタにしては上出来な推察よ?」
相変わらずの二人に涙が出そうになる。あの事件を起こしてしまうまでは、俺もこの世界を信じていた。
「そこらの陰から、そっと見守ってくれ」
「却下ね。こっちだって間諜みたいな真似したくないわよ」
あのまま[東の砦]にいてくれれば毎日、宿のベッドに寝られたのに。と苦情を言われてしまった。
「エダは―――――元気にやっているのか?」
正直、まだ現実を受け入れられる気はしない。だから王都やユミルの街にいた頃の知り合いに会いたくなかったのだ。
だが、出会ってしまった。
出会ってしまった以上、どうしても気になってしまう。
「その答えは―――――分からない―――――よ」
そのタリナさんの曖昧な答えに戸惑いを覚える。はぐらかされているのだろうか?
俺は疑惑の表情を浮かべて抗議してみるが、タリナさんも首を竦めてしまった。
「そうとしか言えないのよ。例の一件の後、エダは[天命の丘]へ向かったわ」
「……天命の丘?」
「大神殿の奥を抜けると大きな岬があるのさ。そこには巨大な竜神像が聳え立っている。曰く、神の啓示を受ける神聖な場所。[聖域]とも呼ばれる場所だ」
ああ、あそこか。
大神殿にエダと向かう途中、目を向けた記憶がある。エダがそこへシグさんと向かったのは間違いないらしい。
しかしその後、この一件は殿下の預かりとなり詳細な情報は一切入ってこないそうだ。
「一体何が起こったのかと思ったわよ。詳しく調べようとしても警備が厳しいし、貴方への監視任務が殿下直々の命令で来るし。こっちが教えて欲しいくらい」
両肩の脇に手のひらを上げて降参のポーズを取るタリナさん。
「そっか……タリナさん」
俺は目の前の彼女をしっかりと見定める。この人は俺の知る唯一のエダの友人だ。
彼女にだけは不義理があってはいけない。極自然とそう思えた。
「俺は……俺は今、貴方に謝る事はできない。謝って済む問題でもない。だから――だから―――」
中々、次の言葉が出てこない。まったく自分の事ながら情けないにも程がある。
それでも。
「まったく、友人の友人は似るものね。ド真面目って言うか、大馬鹿と言うか」
顔を上げられない俺を前にして盛大な溜息をもらしたタリナさんは、呆れたような声で話しかけてくる。
「別に怒っちゃいないわよ。あの子もそんな事は望んでいないだろうしね、ただ……」
「うん、分かってる。エダだけは必ず幸せになってもらう。それこそ、ぐえッ!」
言葉を続けようとした俺の脳天に、小さい拳骨が振ってきた。
し、した。舌噛んだ!
「馬鹿な真似はするんじゃないわよ? 貴方が出て行った時のあの子、それはもう大変な剣幕だったんだから。もう二度とあの子を泣かせないと約束なさい。それにはアンタも無事じゃなきゃいけない。いい?」
舌の痛みで声を発せられない俺は、ただ頷く事で肯定の意を示した。
俺の答えを聞いて「よしっ!」と言ったタリナさんは満足そうに微笑んでくれた。まったく、エダは良い友人を持っている。
これぞ、彼女の人徳なのだろうと尊敬の念を抱くには十分な一幕だった。
「ところで、貴方の鎧。ソレ何? 貴方、露出狂の性癖でもあるの?」
拳骨の痛みでのた打ち回ったせいで、マントが通常の位置である背中まで開いてしまったのだ。
タリナさんの目が軽蔑の眼差しに変貌する。
「放っておいてくれ……」
ボソっと呟いた一言はタリナさんの耳にまで届かない。
一幕の終わりとしては、それは余りに酷いオチだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、監視役の二人を連れた俺達一行は新たに発見されたとされる遺跡の前に立っていた。
本当なら今すぐ王都へ赴きエダの現状を確認したい俺だったが、此処でハイさようなら。とするには、この三人娘との絆を深めすぎた。危なっかしくて放って置けないのである。
そういった理由でこの遺跡探査が最後と決め、いざ行かん!とばかりに突撃しようとした俺だったのだが。
その勢いは遺跡探査が始まる前に阻まれてしまった。
「なに? この行列……」
「どうやら、順番待ちの列のようですねえ」
俺の問いに律儀に答えてくれたのはPTの色んな意味での癒し役、トキハ嬢だ。
他の二人は度重なるトラブルに疲れたような表情でゲッソリしている。
「タリナさん。これなんとかなんないの?」
引率役の神官騎士に尋ねてみる。その横から「俺には聞かねえのかよ!」といった声が聞こえてきたが、華麗に回避した。
「さすがに、私達だけ優先しろとは言えないし。話によれば、徹夜して並んだPTも居たらしいわよ?」
コ○ケかよ! と思わずツッコミそうになった俺を誰が責められようか。
でも確かに、報酬は完全歩合制だと事前に聞いていたのだ。早く入れた方が有利なのは当たり前だ。
しかも一度に何組ものPTが突撃してしまうと動きにくいらしく、三PT毎の挑戦となっている。俺の気分がコ○ケから、ネズミの王国で乗るアトラクションへとシフトしたのは言うまでもない。
「大丈夫よ、大抵のPTは途中で逃げ出す羽目になると思うから。むしろ万全の準備を整えてから挑む事をお勧めするわね」
「そんなにキビシイっすか!?」
先ほどまで道端に倒れ付していた、我らがリーダーであるドワーフの少女はタリナさんに詰め寄っている。困難な道ほど率先して挑戦するヴェルの姿は、お手本にしなくてはならないだろう。遊園地と勘違いしていなければ、だが。
「昨日の内に、回復薬や矢の補充はしておいたわ。私は大丈夫」
「こちらも問題ありません~」
どうやら皆、すでに準備万端なようだ。
「じゃあ、先にお昼ごはんにするっす!」
確かに探索中は休憩をとるタイミングがあるかも分からない。俺達はリーダーの指示に従い、ランチタイムと洒落込みながら気長に待つ事にした。
「次の方ー。どうぞ~」
「はいハイっす! 私達の番っす!」
本当にここは遺跡なのかと脱力してしまうような呼びかけに、我らがリーダーのドワーフ少女は元気に答えていた。
今回の組は俺達の他に遺跡に入らないようで、他の組と比べれば気楽に探索できそうだ。なぜなら、列の前半の冒険者PTが半分も帰還してこないのだ。怖気づいたとしても無理はない。リタイヤするPTが続出し、朝の盛り上がりが嘘のように遺跡の前には俺達以外のPTがいなかった。
「なに? もしかして皆も怖気づいた?」
「何言ってんのよ! 逆に燃えるわ!」
タリナさんの挑発に、ハーフエルフの少女ケイカが闘志を燃やしている。
「危ないようならすぐに撤退しましょうねえ」
神官のトキハは何時ものマイペース。
「じゃあ、まあ。いっちょ行ってみますか!」
「「「オーーーーー!!」」」
三人娘の気合が重なったところで、俺達は遺跡探査の第一歩を踏み出したのだった。
意外にも遺跡の規模はそこまで大きいものではなかった。広さ的にはユミルの街を半分に割ったほど。それがタリナさんによると地下三階程度の規模で広がっているそうだ。
「十分気をつけてください。大型の魔物はいませんが、このような未発見の遺跡で注意すべきなのは何よりも蛇や蝙蝠、それに蠍です」
タリナさんが注意事項を説明してくれる。
「それって毒蛇や毒蠍が音も立てずに襲ってくるってこと?」
俺の言葉にタリナさんは肯定の意を示した。
「最悪ね。イノシシの魔物よりずっと厄介だわ」
ケイカが腕を組みながら苦言を呈している。
大型獣の魔物なら危険ではあるが索敵の観点から言えば容易である。しかし毒をもつ小さい魔物は奇襲性に優れる。いつの間にか攻撃され、行動不能になる危険性が高いのだ。
「まあ、いきなり緊張しても仕方ねえよ。何かあれば俺が警告してやるから安心しな」
バラスのおっさんが自信満々に自らの胸を拳で叩いた。そうだ、すっかり忘れていたけど盗賊みたいな特技を持っているんだっけ、この人。以前王都で出会った時に危険察知の専門家だと紹介されていた。
「アンタのいる意味ってそれだけなんだから。キッチリ仕事しなさいよ?」
「ちょ、それは酷くねえ?」
バラスのおっさんに辛辣な一言を発しつつも「いざとなれば解毒の奇跡があるから安心なさい」と、タリナさんが場を和やかにさせてくれる。「私も解毒できますから~。だいじょうぶですよ~」とトキハも言ってくれてるし。
俺は改めて大盾を持つ左手に力を籠めながら前進を開始した。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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