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宝珠竜と予言の戦巫女  作者: Mikami
第3章 新たな仲間
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第19話 二度目の新しい家族

第19話をお届け致します。

今回から新しい冒険者PTに加入したコウキ君。振り回されながらも楽しい生活を取り戻しています。

そんな彼女達に一攫千金のチャンスが巡ってきて……。


ブログ始めました!

私なりの執筆に至るまでの準備方法を記事にしております。

「アラフォーおっさんが「小説家になろう」でラノベを書いてみた」

http://mikami7194.livedoor.blog/


ツイッターも始めました!

https://twitter.com/Mikami47386113


2019.5.2改稿


 そろそろ[東の砦]に逗留して、一月ほど時間が経過していた。

 霜の巨人の侵攻を警戒して建設された砦と街だけあって、天然の城壁である大山脈の麓に位置している。見上げれば紅葉が実に美しい季節になってきており、段々と涼しい風から冷たい風へと切り替わってきていた。

 そんな季節の移り変わりを感じながらも俺の毎日は慌しい。債権者の監視下で一心不乱に借金返済のため、労働に従事しなければならなかったのである。この世界にクーリングオフはないのだ。


「ほら! そっちからイノシシが来たっすよ!? 頑張るっすコウキ姉!」

「うっせーな。わかってるよ! お前等こそ仕留め損ねんなよ!?」


 本日はその大山脈の麓で、農村を荒らす害獣魔物退治を引き受けていた。

 もうこのPTに参加して(させられて)半月が経とうとしている。最初は借金返済のために加入させられたPTだったが、実は[東の砦]の中でもかなり有名なPTらしい。


 その名も[ごちゃ混ぜのノルニル]


 前衛は、盾役(タンカー)の俺と重ハンマーを振り回す[ヴェル=セッパの鍛冶屋]店主、ドワーフの少女ヴェル。

 明らかに自分の身丈よりも長く、体重よりも重いハンマーを楽々と振り回している。前世が土方(ドカタ)としての俺から言わせれば、明らかに異常な光景だった。


 中衛に弓使いのハーフエルフ、名をケイカ。

 本当の名前はもっと長いらしいが、一々呼ぶのが面倒くさいとヴェルに省略されたらしい。

 父親が妖精族の大陸[アールブヘイム]から人間族の大陸[ミズガルズ]に移住してきた変わり者らしく、かなり人間臭い。まあ、他の妖精族がどんな奴らかも分からないので憶測でだが。


 後衛はエダと同じ人間族の竜神教神官、名をトキハ。

 主に傷を負った際の回復役とサポート役だ。俺の正体がバレると大変なので結構、気を使う。本人はホワほわポワンぽわんな感じの女の子なので、PTの色んな意味での癒し役だ。


 以上。全員が女の子の異色冒険者PTだった。失礼ながら、こんな女の子ばかりのPTがこの[東の砦]における有名PTなのだ。男共もうちょいしっかりしろよと、言いたくもなるような現状であった。


 この冒険者PTのリーダーは、もちろんヴェル。


「材料は自給自足がセッパ家の家訓っす!」と言い放ち、有力な情報があれば討伐に赴く彼女らは実に逞しく、この世を謳歌していた。


「何が、ウチのPTでガンガン稼げばそれくらいの金額はすぐ貯まるっすよ? だ! これじゃ、何時まで経っても返済なんか終わりゃしねえぞ!?」


 俺の叫び声が山彦となって紅葉で彩られた山々に響き渡る。

 それはそうだ。この鎧「戦乙女の鎧」(ヴァルキリーアーマー)と名づけられたらしい一品は、他人に売れるのであれば一財産に匹敵するほどの一品だ。

 まあ、前述の通り俺の体格に合わせてスペシャルオーダーされた一品なので装着できるのは世界でただ一人、俺だけなのだが。

 どうやら我らがリーダーは俺を一目見て、暴走してしまったらしい。


「あんなにはしゃぐヴェルちゃんも珍しいんですよ?」


 と言ってくれたのは我らがPTの頼れる回復役、トキハ嬢だ。


「まぁね。アイツが新人をPTに入れたいって言った時にはどんな奴かと思ったけど、まさかアイツの作品がコレほど似合う逸材とはね」


 まるで天使様の降臨ね。

 なんて半笑いの顔を浮かべながらニヤニヤと此方を見下ろすのは、ハーフエルフのダメージディーラー。ケイカ嬢だ。

 完全におもちゃ扱いしてくるのは勘弁してもらいたい。


 それでも、なんだかんだ言いながら気のいい少女達である事は俺も理解しているので、まんざらでもないのかもしれない。

 当初の目的でもある[自分一人で、この世界を生き抜く力を手に入れる]には丁度いい修行場とも言えるしね。


「まあ、でも。次の依頼は、もしかするとコウキの借金返済に王手がかかる大仕事かもね」


 ケイカがハーフエルフ特有の長い耳をピコピコさせながら呟いている。その台詞に俺は思わず食いついた。


「なんだ、それ? 俺はまだ知らされてないぞ?」

「実はね。最近になって情報屋の間で未発見の遺跡が発見されたって話題になっているのよ。もしかしたら、財宝ザックザクかもよ?」


 人間族の大陸「ミズガルズ」は、旧王国が全盛を極めた時代の遺産が数多く点在する。その殆どは冒険者や盗賊の手によって荒らされているのだが時折、こうした未発見の遺跡が発見される事もあるらしいのだ。


「今、ヴェルちゃんが情報屋さんに聞きに行っている所なんですよ? もうすぐ帰ってくると思うんですけど……」


 とか噂をしていれば、当の本人が大通りの向こうから爆走して来るのがよく見える。

 情報ゲットっすよおおおおおおおおおお!! とか叫んでいるから丸わかりだ。


「あらあら。コウキさん、仮に返済が終わったとしても末永く宜しくお願いしますね?」

「ああ……。そうなればいいな」


 いつもニコニコ顔を崩さないトキハ嬢に、俺は曖昧な返事しか返せなかった。

 俺がこのPTに在席しているのは[現実逃避]した結果に過ぎない。それに、いつまた額の[竜宝珠]が血を欲するかも分からないのだ。

 このPTは優しく暖かい。でも絆が深まれば深まるほど俺の心は葛藤に苛まれ悩んでしまうのは、もはや確定事項だった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 問題の遺跡はなんと、旧王都の遺跡の中で見つかったらしい。俺達がユミルの街から王都へ向かう際、夜営に使用したあそこだ。

 旧王都の遺跡はそのあまりにも有名な箇所であるがゆえに、すでに国としての調査はもちろん、あらゆる調査、盗掘がされつくした遺跡でもある。

 それが今になって未発見の遺跡が発見されたとなれば本来、国を挙げての大捜索が敢行されるはずだった。

 それが情報屋からもたらされた情報によると王家の動きが今現在、非常に緩慢になっているらしい。

 本来であれば王家直属の騎士団が派遣されてもおかしくないのだが、少数の調査団のみの派遣となったらしいのだ。


「これはチャンスっす! 王国の調査団の目を掻い潜り、アタシらで財宝を頂くっすよ!」


 我等がリーダーは今にも走り出しそうなほど興奮している。


「ちょっと待ちなさい、ヴェル。王国が絡んでくる遺跡の探査は面倒よ? しかも出し抜こうなんて下手したら牢屋送りになってもおかしくない。まずはちゃんと情報を精査してから……」

「そうですねぇ~。もしかすると、その遺跡には聖遺物が眠っているかもしれません。私達だけで調査するのはなんとも……」


 あくまで慎重論と唱える二人にヴェルは言葉通り、ううううう~~っと唸っている。


「コウキ姉はどう思うっすか?」

「俺か? むう……」


 確かに危険度は高い。特に俺なんて一度、牢屋に入れられて、しかも暴れまくってしまった前科がある。今度こそ永久幽閉、もしくは死罪になるかもしれない。慎重に行きたいところではある、……ところではあるんだが。

 俺にとっても有益な情報、もしくは財宝が眠っているかもしれないのも事実なのだ。


「二人の意見も、もっともだと思う。けど俺としては行くだけ行ってみたいな。もし聖遺物のような貴重品があるなら、回収せずに放っておけばいい。そうすればいずれ、調査団が発見するだろうしな」


 まるでと言うより、ほとんど説得となっている俺の意見にヴェルはしきりに頷き、ケイカとトキハは考え込むように黙っている。

 しばらくの間、その場を沈黙が支配した。すると我慢の限界に達したのか、ダアああああああああっと叫び声を上げると、我らがリーダーは懐から硬貨を取り出した。

 まあ、この流れならば、そういう事だろう。


「二対二の同率ならあとは、神様に聞いてみるっす! 表なら突撃! 裏なら回避っす!」


 おいおい、行くとなっても突撃はしないぞ? 突撃は。本当に彼女がこのPTのリーダーでいいのかと思ってしまうが、まあいいのだろう。

 俺が降参とばかりに二人を見ると、まあこうなるかといった表情で溜息を漏らしていた。


 それを了承と受け取ったのだろう。ヴェルは花が咲いたかのように破顔すると、天高くコインを弾き飛ばした。



「ううううううう……ぐぐぐ」

「まあ、こうなるよなあ……」


 約一週間分の食料を手に、俺達四人は旧王都の遺跡に向かっていた。

 それはいい。厳正なるコインの神様がお決めになった結果だ。ケイカとトキハも無理そうなら撤退するという条件付きで賛成してくれた。


 問題は、だ。


 旧王都に通じる街道が、遺跡の財宝を狙う男共で溢れかえっている事だった。

 皆一様(いちよう)に、目線は旧王都の遺跡の方角に向いている。


「ヴェル。アンタちゃんとした情報屋から買ったんでしょうね?」


 ちゃんとした情報屋なら、一つの情報は一人のお客さんにか供給しないものだ。だが悪質な情報屋ともなれば、一つの情報から最大限もうけるために多数のお客さんに売りさばいてしまう。

 売れるだけ売りさばいた後は、ほとぼりが冷めるまで他の都市にトンズラだ。


「ヴェルちゃん。やられちゃったねえ……」


 トキハは只々(ただただ)、苦笑するのみだ。


「えええええい! 今更引き返せないっす! こうなったら一番のりして財宝を頂くっすよ!」

「だから、そういう情報を大声で叫ぶのはやめなさい!!」


 ハーフエルフさんの鉄拳が、ドワーフさんに振り落とされる。痛みはないようだが怒られているのは理解しているようで、慌てて口に両手を当てていた。


「やれやれ、しょうがないな。おいヴェル! もうすぐ日が暮れる。夜営の準備だ」

「でも先を急がないと一番乗りできないっす!」

「い、い、か、ら。夜営の準備だ」

「は、はいっす!」


 我らがリーダーさんの首根っこを捕まえて、街道脇の草原へ向かう。夜間移動なんて小数PTには危険すぎる。


「お母さんね、まるっきり。それともお父さんかしら?」

「お父さんにしては、あまりに美人さんですけどね」


 後ろからそんな二人の言葉が聞こえてくる。

 日本でもし結婚していて子供がいれば、確かにこんな子がいいかもしれない。

 手間はかかるがアレだ。


「バカな子ほどかわいい」ってやつか、こりゃ。



 周りに人里もない草原では、夜間は魔物の活動が一番活発になる時間帯だ。普通の野生動物だと焚き火を絶やさなければ一応の安心感も持てるが、魔物の場合はそうはいかない。

 逆に人間がここにいるぞと、宣伝しているようなものなのだ。

 ならばどうするか?完全な対策は残念ながら見つかっていないらしい。見つかるからと言って焚き火を消したところで、今度は奇襲の危険性が高まるのだ。

 結局のところ、交代で見張りを立てる以外に(すべ)はない。


「前は大将が全部見張りやってくれたもんなあ。その有り難さが身に染みるよ」


 他の三人は夢の中だ。俺の独り言は闇夜の中に溶けていく。

 今頃、エダは何をやっているだろうか?

 今頃、パンちゃんはちゃんとお眠になっているだろうか?


 ちゃんと元気に生活しているだろうか。俺が付けてしまった傷は完全に癒えているのだろうか?

 俺はあの時、自らが犯してしまった罪から逃げ出してしまった。あの時はそれが最善だと考えたが、伯爵もメイドさん達もとても寂しそうな顔をしていたのが強烈に記憶に残っている。

 今の俺はヴェル達のおかげで、それなりに楽しく生きている。しかしそれが逆に俺の中の罪悪感を加速させていた。

 俺が居なくなってエダは泣いているかもしれない。そう思うと衝動的に王都へ戻りたくなる。異世界に放り出された俺を献身的に見守ってくれた彼女を、俺は、裏切ってしまった。


 目の前で焚き火の炎が陽炎(かげろう)のように揺らめいている。それはまるで今の俺のように(はかな)い、今だけのものだ。

 この焚き火は人の手で(まき)をくべてやらなければ燃え尽きてしまう。比べて俺はどうだろう。[竜宝珠]から供給される力が無くなれば竜の姿に戻ってしまうのだろうか?

 そうすれば、また無差別に血を吸いたくなる衝動に襲われるのだろうか? 自分の身体の事なのに何もかもが分からない。

 それが俺のマイナス思考の根源だった。今度はエダじゃなく、この三人に……。


「コウキ姉?」


 虫の鳴き声と焚き火の音だけが響く静かな空間で、後ろから眠そうな声が聞こえてきた。


 ヴェルだ。


「おう。どうした? まだ見張りの交代には時間があるぞ?」

「いやあ~。なんか目が覚めちゃったっす」


 そう言うとドワーフの少女が俺の隣に腰を降ろした。

 ジーっと俺の顔を覗き込んでくる。

 そして、


「コウキ姉、泣いてたっすか?」


 いきなり核心をついてきた。


「……なんでだよ。こちとらお前らの世話が忙しくてやっと、ゆっくりできてるんだぞ?」


 ついつい憎たらしい言葉が口を出てしまう。

 その言葉を聞いたドワーフの少女は「いや~~申し訳ないっす」とか言いながら後頭部をガシガシ()いている。


「でもアタシはコウキ姉に出会えてラッキーだったっす。PTに壁役が居なくなったのもあるんすけど、なんて言うか……その」


 いつもの彼女からすれば、なんとも歯切れが悪い。

 ん?


「居なくなった?」


 というと、俺が加入する前には前任がいたのか。俺の言葉に彼女は(うなず)きを持って返答した。


「ケガしちゃったっす。……それも普通の生活もできないくらいの」

「……そうか」

「……そうっす」


 平和だった日本とはまるで違う。この世界は弱肉強食が全ての基準であり、よほど裕福でもなければ長期療養なんてできるはずもない。俺の前任だった人も、この世界の摂理にあがないきれなかったのだろう。


 それにこのドワーフの少女が、過酷な冒険者家業を営んでいる理由が他にもあった。


「それにアタシの妹。生まれつき病弱で、今の歳になっても満足に外で遊ぶこともできない。お医者さまからも匙を投げられちゃってるんす」

「そっか……」


 我ながらなんと声をかければいいのか、言葉が見つからない自分が腹立たしい。彼女らはまだ十代半ば。

 それに対して俺は今の身体こそ十代後半だが人生経験は二十八年ある。それなのに戦乱の世界で生き抜いてきたドワーフの少女は、俺よりも壮絶な経験を経て此処にいるのだ。


「でもアタシは諦めないっす! お金を貯めて、王都で一番の大神官様の所へ妹を連れて行くっすよ!」


 そうすれば、歩けるようになるっす! と元気よく言い放つ彼女はとても、とても眩しかった。今の俺が直視できないほどに。


 ―――――輝いていた。

最後までお読み頂き有難うございました。

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