第17話 東の砦と新しい出会い
第17話をお届け致します!
今回から第3章 新たな仲間編が開始となります。
エダさんはしばらくお休みです。自由に動けませんしね。
これからも宜しくお願い致します!
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2019.5.2改稿
あの惨劇から、一夜が明けた。
彼女の無事を確認した俺は、ジャーリ伯爵に娘さんを傷つけてしまった事への謝罪に訪れていた。
愛する娘に瀕死の重傷を与えた本人が来たのだ。てっきり罵倒される事も覚悟していたのだが、ジャーリ伯爵の顔は穏やかだった。
「自分の意識の奥底には獣が住んでいます。これ以上近くに居れば、今度こそ取り返しのつかない事件に発展してしまうかもしれない。それだけは我慢できません」
「しかし、メイドの話では娘に傷一つないとの話だ。失礼だが、君は本当にエダに危害を加えたのか?」
伯爵は今だ、事件の経緯に対して懐疑的だった。
確かにこの世界には、以前エダが俺に使ってくれたように[治癒の奇跡]にて傷を癒す手段が存在する。だが、それはあくまで人が本来持つ治癒能力を促進させるだけの話で、万能の魔法という訳ではないのだ。
「自分が彼女に瀕死の重傷を与えたのは事実です。治癒したのも自分らしいのですが、この力は自由に使える力ではありません。俺は彼女を殺してしまう所だった」
あの時、瀕死の彼女を助ける事が出来なかったら。考えるだけで頭がおかしくなりそうだった。
「彼女とパンちゃんをどうか、宜しくお願いします。俺は自分自身が何者なのか。それをハッキリさせたいのです」
俺の意思が固い事を納得してくれたのか、最後にはジャーリ伯爵も納得してくれたようだ。
これ以上此処にいれば、旅立てなくなってしまう。
彼女が目覚めたら渡してもらえるよう手紙を託し、俺は伯爵邸を跡にするのだった。
すでに旅支度は済んでいた。この王都に来るまでの道中で、何が必要かある程度理解していたので必要最小限の荷物だけ纏めて城門を潜った。
俺の気持ちとは裏腹に、これから始まる[聖誕祭]に向けて数多くの人々が自分とすれ違って王都へ入っていく。皆、これからのお祭りへの期待で笑顔があふれていた。
それがなんだか、無償に寂しかった。
向かう場所はあらかじめ決めていた。
今現在、俺の最大の目的は自分の中に眠る力と[竜宝珠]を使いこなすことだ。それが出来なければいつまでも帰れない。
その為には自分の力を使える場所が必要だった。つまりは危険な場所に自ら赴くということに他ならない。
でもそれで良かった。今はとにかく身体を動かしたかった。
向かうは人間族と火の巨人族の大陸の境目にある最前線。
通称[東の砦]
かつて火の巨人族の侵攻を防衛した城塞都市だ。今現在は冷戦状態にあるが、この大陸で一番魔物の動きが活発らしい。ならば俺の頑丈な身体が活かせる場所もあるだろう。
そう思って決めた目的地だった。
これからは、この異世界を一人で生き抜かなくてはならない。
転生してすぐに彼女に出会えた俺は、本当に幸運だったのだ。おかげで何一つ苦労することなく今まで生活できていたのだから。
しかし、それでは何時まで経っても[来訪者]に過ぎないのだ。ここにきて、ようやく覚悟が決まったのかもしれない。
この世界の住人となる。
それが、最初の目標だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王都出発から一週間ほどの旅だった。俺は無事に目的地である[東の砦]の城門前に到着していた。
さすがに火の巨人に対する防衛の拠点だけあって王都ほどではないにしろ、頑丈な防壁に囲まれている。
最初に[東の砦]を遠くから眺めた第一印象だ。ここまでの道中は王都までの道のりとは違い、商人の往来は少ない。その代わり、堅固な兵に囲まれた馬車が頻繁に行き来する。
正に軍事基地と呼ぶに相応しい景色である。
この国の職業軍人は決して多くはない。砦の防衛に持てる兵力を集中させていた。その代わり冒険者が遊撃兵として、日々の魔物退治を請け負っている。
ユミルの街とは違い、ここには熟練の猛者が常駐しているのだ。
[東の砦]への入場審査は今まで行った、どこの都市よりも厳重だった。まあ、当たり前と言えば当たり前なのだが。
とりわけ「不審な点がないか?」という審査よりも「コイツは使い物になるのか?」といった審査に重点が置かれていたのは流石だなと思った。
場外に併設された訓練場。そこが検査官との戦いの場となった。
「これからアンタの実力を見せてもらう。せいぜい頑張るんだな」
その一言に身体から震えが起こった。
入場検査は冒険者志望の場合、検査官との模擬戦だった。正直、俺の剣術はまだまだ。素人に毛が生えているのかさえ疑問だというレベルだ。普通に審査官と模擬戦をしたのでは門前払いされてしまう。
そこで俺の考えたプランとしては、パーティーの中での盾役。
いわゆる盾役となる事だった。
攻撃は後衛の仲間に任せ、自分は敵の攻撃を通さない。それが第一の仕事だ。
「どうした。アンタからかかって来てもいいんだぞ?」
検査官から激が飛ぶ。だがそれをしてしまっては、おそらく俺はこの都市にいられない。
「俺からは一切攻撃はしない。だがその代わり俺は決して膝を折る事はない。それを約束しよう」
「……何? 生意気な!」
俺の言葉を挑発と取ったのだろう。検査官の攻撃が激しさを増してくる。
いくら身体が竜の姿と同じ様に頑丈だからと言っても、それはケガを負いにくいというだけで痛みは当然ある。
だが、盾越しの斬撃による衝撃は俺のこれからの覚悟を試されているかのようで身に染みるものだった。
結論から言えば俺の目論見は一応、成功したと言っていいだろう。
検査官が汗だくになって切りかかって来ても、動じない(痩せ我慢ではあったが)俺に両手を上げて降参の意を示してきた。
無事に城塞都市の入場を許された俺だったのだが、意外な所で大変な目に会ってしまうとはこの時の俺は知る由もなかった。
「姉ちゃん。自分の身体は大事にしなくちゃ駄目だぜ?」
「だから俺は、女じゃ……うう」
うまく城塞都市の中へ入れた俺は、その足で冒険者ギルドに直行した。さすがは最前線だけあって、屈強な冒険者達がたむろっている。
さっそく受付に向かった俺だったのだが、そこで大きな壁と遭遇したのである。
若い女冒険者が一人で魔物退治をすると言っても、冒険者ギルドが許可してくれなかったのだ。しかたなく仲間に入れてもらえる冒険者PTを探してみたのだが、これがまた困難を極めた。
この見た目が大問題として俺の前に立ちはだかったのだ。
華奢な身体、細い腕。そして自分で言うのもなんだが、煌めく黄金の長髪に、この美貌。
冒険者の誰もがこんな美少女が後衛ならともかく前衛、しかも敵の攻撃を一身に受け止める盾役をやると言っても信じてもらえなかった。
勿論、本来の力を見せ付ければ彼らの信頼を勝ち取る事もできただろう。しかし、それは異質の存在として懐疑の視線に変わるかもしれない。
それに、何よりも自分自身が力の解放に歯止めを掛けていた。仲間になればお互いに命を預けあう関係とならなければいけないのに、それはとても拙かった。
この日、俺の仲間探しは遅々として進んでいなかったのだ。
邪まな下心で近寄ってきた奴らには、もれなく金的への一撃をおみまいしてやったが。
「うう、冒険者組合証はもっているのに……」
パンちゃんと出会うきっかけとなった一件で、俺は冒険者登録を済ませていた。
しかし、あの一件はエダの信用によって任せてもらえたクエストだったのだ。改めて、自分一人で異世界を生き抜くという難しさに溜息が出る。
しょうがない。いきなり信用してもらうというのも無理な話だったのだ。
俺は諦めて冒険者ギルドに張り出された掲示板を見る。いくら第一線とはいえ、いや第一線だからだろう。不足となっている薬草や素材の収集クエストが数多く張り出されていた。
「まずはここからだな……」
独り言を呟きながら、初心者以外やらないであろう素材クエストの紙を剥ぎ取った。
危険を感じたら迷わず帰還してくださいね? と受付のお姉さんに忠告された時は、たかだか収集クエストに何を言っているんだという感想しかなかった。
そこまで俺はか弱く見えるのかとも。その疑問はその日の内に、確かな回答を大自然が示してくれた。
そこらの草原に自生していた薬草は、もはや刈りつくされ残っていなかったのだ。
今現在、薬草を採取しようとするならば獣道のような山道を奥へ奥へと分け入る必要があった。
「絶対、初心者用クエストじゃないだろコ……レ」
その険しさに大声を出しそうになる口を慌てて塞ぐ。ここはもはや魔物の支配する領域なのだ。
俺の脳裏にはパンちゃんのお母さんを捜索中に出くわした、山小屋の凄惨な光景がフラッシュバックしている。自ら居場所を晒すような行為は厳禁である。
竜の姿になれれば一足飛びで移動できるだが、変身の要となるエダは此処にはいない。それに衣類をどうやって持ち運ぶのか? という問題もあり、文字通り自分の尻尾ではなく自分の足で探索するしかなかった。
俺は受付のお姉さんからもらった薬草の姿絵を握り締め、抜き足差し足で探索を続けるのであった。
幸い、目的の薬草は早めに見つかった。
お山の中腹辺り、獣道からちょっと外れた所に薬草の群生地を発見したのだ。どうやら背の高い藪に隠されていた為、他の冒険者に気付かれなかったようだ。
提示された薬草の数はそれほど多くもない。俺は一箇所をすべて刈るのではなく、まばらに、それでいて全体を満遍なく採集してゆく。
この場所はまだ誰も見つけていないようなので、薬草がまた生えてくるようにしなければならないのだ。刈りつくしてしまってはまた別の群生地を探さなくてはならない。
「これで今日の晩飯と宿代くらいにはなるかな」
さすがに野宿は勘弁したいところだ。俺は布袋に入れた薬草を見つめながらホクホク顔で帰宅の徒についた。
どうやら俺の採取した薬草はかなり希少な物らしい。
「また採取クエストを受けてくださいね。まだまだ不足していますので幾らでも買い取ります!」
「りょうかいで~す」
興奮ぎみに話す受付のお姉さんは、笑顔で俺の収穫に目を輝かせていた。
さすがにどこから採取して来たのか? とは問われない。情報だって冒険者の貴重な財産なのだ。
希少な薬草の群生地はすでに俺の頭の中の地図に書き込まれている。しばらくは生活に不自由しなくて済みそうで一安心だ。
だが、同じ場所からまた採取するのはしばらく待ってからである。群生地を絶滅させてしまっては拙いので、もう数箇所は群生地を探しておきたいところだ。
それに関しても俺には確固たる自信があった。あの希少な薬草の臭いはもう覚えた。
となれば俺の常人離れした嗅覚の出番である。
しばらくの間、俺は麻薬探知犬のごとく山の中を徘徊し薬草の群生地を探し回った。
魔物に出くわさないよう細心の注意を払いながら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日の間そんな感じで薬草の採取に精を出した俺の懐は、それなりに暖かくなっていた。
「よし。そろそろ鍛冶屋にお邪魔してみるかな!」
そう、俺は気づいたのだ。この都市に来た初日の仲間探しがあれほどケチョンケチョンに終わった原因の一つを。
この都市は業種ごとに区画が分かれている。宿屋などの宿泊地域、食べ物や衣類などを販売している商業地域、そして武器防具などを製作する鍛冶屋さんが集まる工業地域などだ。
俺は何時もお世話になっている宿屋から工業地域へと向かっていた。
目的はズバリ。防具を手に入れる為だ。
後になってよく考えてみれば仲間探しの際、剣一本の他はただの旅人用の服しか身に着けていなかった。そんな俺が壁役をやると言っても信用してもらえる筈がなかったのだ。
彼等の目からすれば、世間知らずのお嬢さんが声を掛けて来たぐらいにしか思わなかっただろう。
断られて当然である。まあ、女の子だっていうのも原因の一つではあるが。
工業区画に来ると周りの温度が数度グッと上がったような気がする。回りの家屋の煙突からは白煙がもうもうと上がっているのだ。それも当然だろう。
俺は最近仲良くなった冒険者のオッサンから教えてもらった鍛冶屋さんにお邪魔した。
「こんちわ~っす。防具を見せてもらいたいんすけど」
「はいは~い。何をご所望っすか~?」
俺に負けず劣らずな緩い返事が返ってくる。
店の奥から出てきたのは背の低いドワーフの少女だった。ドワーフらしく日焼けして真っ黒な肌が実に健康的だ。
店の中に入ると様々な武器防具が所狭しと陳列されている。だがどれも男性用の物ばかりだ。まあ冒険者や兵士なんて99%が男だ。当然と言えば当然だろう。
「えっと……。盾役用の盾と鎧が欲しいんだけど、やっぱ受注生産になるのかな?」
「あ~。そっすねえ。女性用の鎧って作っても買い手が付かないんすよね~」
そう言いながら後頭部をガシガシと掻き回す彼女は、このお店の看板娘だろうか。
「まあ、とりあえずサイズの測定からいってみるっすか。見たところ計りがいのある身体をしてるっすねえ」
グフフとでも言いそうなほどオヤジ臭い。これは選ぶ店を間違ったかと後悔したが、まぁ今更っちゃ今更である。毒を喰らわば皿までの精神で俺は彼女の案内に従った。
お店の奥に通されると、そこには以外にも小奇麗に整理された衣装室だった。
「さてさて、まずは下着からっすかねえ。お姉さんにお似合いなモノだと……」
なにやら不穏な台詞をのたまったかと思えば、俺の全身をくまなく見定めると何着かの肌着を投げてきた。いきなりの展開で正直理解が追いつかない。
「ちょっと待て。鎧着るのに下着は関係ないだろ!」
「そんな事ないっすよ? ちゃんとした下着を着ないと皮膚が鎧に挟まって大変な思いをするんすから。それに女性の武器は何も凶器だけじゃないって話っす。意味分かるっすよね?」
女の子の癖してエロ親父のような会話しかしない子だ。
「そういう女の武器的な効果はいらない。単純に盾役として必要な鎧と盾を頼む」
「そっすか? 折角の美貌を使わない手はないと思うんすけどねえ」
冗談じゃない。ユミルの街でウェイトレスとして働いていた時も下品な視線に耐えていたのだ。大将やエリさんがいなければ、さっさと辞めていただろう。
あんな思いを進んで味わいたくはない。
元々俺には頑丈な身体がある。見た目だけでも盾役らしくなればそれでいいのだ。
そんなこんなで身体のサイズを測ってもらい、鎧と盾を発注したのだった。
測定の最中に余計な場所を触られたような気がしないでもないが。
「じゃあ六日後のお日様が天井に来たあたりまでに完成させておくっすよ。その頃取りに来るっす」
「あいよ。くれぐれも変なデザインにしないでくれよ?」
「そこまで言うなら一般的な女戦士系の防具にしとくっすよ。あ、そうだお姉さんの名前は何て言うんすか?」
「ああ、名前ね。コウキ=ヴィーブルだ。よろしく」
「コウキさんっすね。アタシは鍛冶屋のヴェル=セッパって言うっす。今後ともご贔屓にっす!」
「って。この店の店主ってアンタだったのか?」
「そうっすよ? こう見えて、それなりの年齢っすからね~」
完全に店主の娘あたりだろうと思っていたのでびっくりしてしまった。大丈夫なんだろうな?
一抹の不安を感じながらも無事、発注は完了した。
無事? 防具の発注を終えた俺だったが、当面の目標はもう一つあった。
情報収集である。
ここ最近の薬草クエストで実感したのだが、魔物が何処にいるのかも分からないまま山中を行動するのは自殺行為だ。
いくら俺が頑丈だからと言っても、多数の魔物から一度に攻撃を受ければケガもしてしまう。せめて最近の魔物出没地域だけでも確認しておかなくてはならない。
これがユミルの街ならば受付のお姉さんから情報を貰う事もできるのだが、ここは最前線の城塞都市。多数の冒険者が凌ぎを削っている場所だ。
魔物の住処などの重要な情報は個人の財産として、秘匿される傾向が強かった。
しかしである。
冒険者は主に屈強な男達が勤める職業。冒険者ギルドが酒場と併設されている事からも分かるように彼等は飲兵衛だ。
そんな彼等から情報を聞き出すとなれば手は一つしかない。
酒を飲ませて聞き出すのだ。今まで俺やエダがやると、この方法は特に有効だった。
男は酒の精と、女の子のお願いには弱いものなのだ。
さっきの鍛冶屋では女の子としての武器を利用するのに否定的な意見を口にしていた俺だが、その時はその時。今は今だ。後で危険な目に会うよりまだいい。
もちろん、セクハラなど受けようものならブッ飛ばしてやるけどね。
そろそろ夕刻だ。冒険から帰ってきた男達が酒場へ集まる時間帯である。防具の費用を差し引けばそこまで懐が暖かい訳でもないが、必要経費と割り切って酒場へ向かう事にした。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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