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宝珠竜と予言の戦巫女  作者: Mikami
第2章 ドベルグル皇国
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第29話 夢と現実

毎日投稿25日目。

いよいよ一月という節目が見えてきました。この毎日投稿に追いついている人がいるのかな? とちょい不安になります(汗

さて、このお話を含め3話分、暗いお話が続きます。

悲しみ、苦闘、動揺。そんな感情の描写を練習するためです。

宜しければお付き合いください。

 これは夢なのだろうか。


 いや以前にも、このような体験をしたような気がする。


 ああ、なんとも懐かしい風景だ。


 私が立っているこの場所は。


 初めて相棒(コウキ)と出会った場所であり、夢の中で最終戦争(ラグナロク)の啓示を受けた場所でもある。


 荒廃の島だ。


 東西から強い魔素を含んだ風が吹きつけ、私の足首ほどの背丈の雑草が広がる大地。


 私の、そして私達の旅はここから始まった。


 コウキが一匹の竜となって、私と共に草原を疾走する夢。


 ああ……、あの時は楽しかった。


 是非もう一度、相棒と一緒に自由気ままな旅がしたいなと思っていたのだ。


 さあ、コウキ。走りましょう!


 この青々とした草原を、どこまでも。本当に何処までも行ってみたい。


 この先には、一体何があるのだろうか。


 山でしょうか? それとも海でしょうか?


 どこまでも。いっそ、世界の果てなんてモノを拝んでみるのも楽しいかもしれない。


 草原に立つ私の前に、黄金の宝珠竜となった相棒が居る。


 あの黄金の鱗に包まれた背は私の特等席だ。


 今度は空の旅ですねっ! と声を上げながら私は駆け寄った。


 駆け寄ろうとした。


 でも身体が、足が。私の意思に反して動こうとしない。


 ほら、こっちに来なよ。俺の背に乗って、どこまでも冒険しようよ。


 と言わんばかりに、相棒は羽を羽ばたかせながら催促してくる。


 私だって行きたい、相棒と一緒に冒険の旅に(おもむ)きたい!


 それなのに、なぜ。私の足は動かないのだろう。


 自分の足に悪戦苦闘しているうちに、相棒の隣に一人の人影が現れた。


 むう、その人は誰ですか?


 空に浮かぶ入道雲が日の光をさえぎって影となり、顔が良く見えない。


 でも、私の相棒が楽しそうに尻尾を振っているのだけは見て取れた。


 だれ? スクルドさん? それともヴェルちゃん?


 魔素の含んだ風が、さらに強く吹きつける。


 空の入道雲がたまらず、日の光の進入をゆるした。


 まるで二人の旅路を祝福するかのように、輝く光が二人の下に降り注いでいる。


 あれは……、私?


 私だ。……私ではない、私にそっくりの私だ。


 もう一人の私は、満面の笑顔を浮かべながら相棒の背に乗り込む。


 まって。待ってコウキ。その人は、その人は私じゃない!


 相棒が元気よく羽根を羽ばたかせ始める。


 相棒の身体が地上から離れ始める。


 まって、置いて行かないで。私はここに居る、本当の私はここにいるんです!!


 行かないでっ。――――――――――――コウキッ!!!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 まるで鈍器で殴られたかのような覚醒だった。


 俺は今、一体どこに居るのだろうか。回らない頭を必死に動かして記憶をさかのぼってみる。

 ……そうだ。俺は今、ウルズちゃんとトキハを助けるために、ミーミルの泉へ向かっていたんだ。途中パンの故郷かもしれない村の人々と出会って、それで魔の森とか言われてる危険な場所に差し掛かって。


 えっと……、そこから?


 いかんイカン、そこからの記憶が無いな。まあ、あとでエダに聞けばいいか。どうやらまた俺は意識を失っていたらしい。こんな大事な時に何やってんだか。

 ゆっくりと、身体に問題がないか一つ一つ確認してゆく。うん、問題ない。

 次にゆっくりと、今自分が何処にいるのか見回してみる。


 随分とボロい小屋だな、というのが第一印象だ。視界の先にある天井もツギハギだらけだし、雨が降ったら漏れてくるんじゃないかと心配になる。

 顔に冷たい風が吹きつける。視線をそちらに移すと、壁板の継ぎ目に隙間が空いていた。どうやらここから外の風が入ってきているようだ。風と同時に、外からの真っ白な光が漏れている。けど狭すぎて外の景色は覗けないな。

 ……なんか、臭うな。これは、この布団からか? 随分と使い込まれている布団だ。もう随分と洗ってもいないのだろう。元々真っ白だったはずなのに、汗や垢を吸い込んで茶色に変色している。正直汚いとも感じたが、此処ではこの布団しか無いのだろう。我がままを言っちゃいけないな。


 しっかし、なんだか。お腹の辺りが重い。重いが、人の温もりが感じられて不快ではない。どうやら俺の上に誰かが被さっているみたいだ。……起こしちゃ、わるいかな?

 そう思った俺は、寝転がったまま頭だけを持ち上げてみた。

 そこにいたのは見慣れない少女だった。いや、少女と言える年齢でもない。小さく、可愛らしい幼女だ。綺麗な白い髪が、肩から垂れて俺に掛けられた布団に流れている。


「ぱーぁぱ……」


 ……寝言かな? 可愛いもんだ。何処の子かは知らないけど、エダかスクルドさんあたりが保護したんだろうか。どうやら俺が意識を失っている間に、事態は随分と進展しているらしい。


 さて。身体に異常は無いし、事態は一刻を争うはずだ。そろそろ起きよう。

 エダかスクルドさんに現状どうなっているのか聞いて、早くミーミルの泉に向かわないと。そう思って上半身を起こした時だった。


「……コウキ(ねえ)?」


 おっ、この声はいつも元気いっぱいが取り得のヴェルだな。

 心配をかけただろうしここは一つ、万全な体調だということをアピールしてやろうか。俺はわざと素早くと身体を起こして声をかけてみた。


「よお、ヴェル。爽やかな朝だなっ!」


 もちろん、俺が何時も見せる寝起きのテンションではない。そもそも、このドワーフっ()が俺より早起きすることもない。俺やエダが起きても盛大なイビキをかきながら寝続けているのが何時もの光景だし、コイツにとっての目覚ましは朝食の臭いだ。まあ、俺だってたまに寝坊してエダにお小言をもらう時はあるけどな。


 ……あれ? なんか変だな。


 何時ものヴェルなら、元気よく声を上げながら近寄って来るもんなんだが。もう長い付き合いとなったドワーフの少女は俺の顔を見て、悲しい表情を隠せないでいる。

 そう思ったら、彼女は小屋の奥の方へ無言のまま駆け出してしまった。こんなヴェルの姿なんて初めて見たぞ?


「おいおい、怒ってるのか? そりゃあ、迷惑をかけたかもしれないけど……。無視することはないだろ。おーいっ、ヴェルー?」


 俺の声にも反応せずにヴェルが小屋の奥へと消えてしまう。


 ……なんだ? なんなんだ?


「ぱーぱ?」


 大声を出してしまったせいで、俺の上で寝ていた子が眼を覚ました。まだ眠そうに眼を擦っているけど、俺を父親だと勘違いしているらしい。だが、この俺の女の子な姿を見て父親と勘違いするなんて変な子だ。もしかして、まだ言葉を覚えきれていないのかな?


「こんちにわ、お嬢ちゃん。自分の名前は言えるかな?」


 見たところ3歳~4歳と言ったところか。物心は付いているだろうけど、キチンと受け答えできるかと言えば微妙な年頃だ。けど、俺の周りにはこの幼女しか居ない。この子から情報を聞き出すしかないだろう。

 けど、目の前の幼女は不思議そうに俺の顔をジッと見続けて。


「ぱーぱっ!」


 と叫ぶと、俺の胸に飛び込んできた。

 どうやらまだ父親と勘違いされているらしい。まいったな。ヴェルには逃げられたし、スクルドさんやエダは外出中なのか? まったく事情が飲み込めない。とりあえずは、この子の父親役を演じるしかないのだろうか。


「あー、よしよし。まいったな……、お名前は言える? おーなーまーえっ」


 この子の背中に片腕を回し、もう片方はお尻へ。俺はこの子が落ちないよう、しっかりと抱き上げてあげる。

 すると、この歳にしては長く伸びた白い髪が眼の前でサラサラと流れた。よくよく見ると完全に白髪というわけでもないようだ。白い髪に混じって、黒い毛髪もチラチラと見受けられる。


「パンが人間なら、こんな感じなのかねえ……」


 そういえば、パンの大きな身体も小屋の中には見当たらない。

 もしかして意識を失っている俺をヴェルに任せて、他の皆はミーミルの泉に向かってしまったのだろうか。もしそうなら、早く追いかけなくてはならないだろう。俺はこの通り、怪我も無ければ体調も悪くない。早く合流しなくちゃっ!


 そこまで思考が進んだところで、抱き上げている幼女が俺の呟きに反応した。


「――? ……っ! ぱんっ!」


 俺が呟いたパンの名前に、答えてくれた?


「……パンをしってるの?」

「……?」


 その質問は的外れだったらしい。目の前の少女は不思議そうな顔をして、俺の瞳をジッと見つめている。

 ――ってちょっと待て、まさか、この子って。

 この白と黒の髪。そしてこの年頃。そして熊人族の特異な能力……。俺の頭の中でパズルのピースが当てはまるかのように、真実という名の絵画が出来上がってゆく。


「パン、……なのか?」

「――っ、ぱんっ!!」


 俺がそう言うと、大正解とばかりに抱きついてきた。なんとまあ、ビックリ仰天とはこの事だ。俺達の大切な子供は、いつの間にか可愛らしい幼女に変貌していた。言われてみれば(誰にも言われてないが)、白目のない真っ黒な瞳は普通の人間には有り得ないものだ。さすがはわが娘、人間になっても美幼女に成長してくれたもんである。



 しばらくして。

 すっかり変わってしまったパンと親子の交流を続けていると、一人の足音が聞こえてきた。この音は実に特徴ある人のモノだ。決して、ヴェルのようにドカドカと歩いている音ではない。それどころか、自分の気配を極限まで消している人の足音だ。

 そんなことが出来る人は、俺達の中で一人しか居ない。


「……良かった、目が覚めたみたいだね」


 ほら、やっぱり。ヴェルのお姉さんにしてこの国のお姫様、スクルドさんだ。


「すみません。随分とご迷惑をお掛けしました」


 ようやく姿を見せてくれたスクルドさんに、俺は頭を下げた。何せ、魔の森に入った時から記憶が飛んでいるのだ。この姿のパンならともかく、俺を運びながらの移動は骨が折れたことだろう。


「今は、そんな事はどうでもいいんだよっ!」


 突然のスクルドさんの大声に、俺の頭にしがみ付いたパンがビクッと震えた。よくよくスクルドさんの表情を見れば、普段の飄々(ひょうひょう)とした表情がすっかり影を潜めている。

 これは……何か悪いことが起こっているらしいと直感する。なぜならスクルドさんもここに居るとなれば、先ほどの俺の仮説は間違っているということだからだ。


「なっ。何ですか? いきなり大声なんて出して」


 そんな俺の疑問に答えることなく、スクルドさんの顔がゆっくりと近づいてくる。


「……いいかい、気分を落ち着けて。……よく聞くんだよ」


 もうパンと再会した喜びなんて、このスクルドさんの表情で吹っ飛んでしまった。

 何か、とんでもない状況に(おちい)っていると、スクルドさんの悲しそうな顔が物語っている。


 ……なんだ、なんなんだっ! 一体、何が起こったってんだっ!!


 俺の心が不安で押しつぶされそうになる。


 そういえばエダは、エダはどこだ!? 彼女の性格なら俺の(そば)で看病していたっておかしくない。


 もしくは、俺が起きたなら真っ先に姿を見せてくれるはずだ。


 なんでだ、なんでだ!?



「エダちゃんは、もう居ない……。――――女神フレイヤに、殺されてしまった」






 はっ?





 なんだよ、それ。

 意味が分かんないぞ。

 エダが、………………………………しんだ?

最後までお読み頂きありがとうございました。

やはり暗いお話は指が動きづらいです。昨日の夜書いた起死回生のお話は勢いよく書けたのですが……(笑

よろしければブクマ・評価・感想など宜しくお願いします。

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