第25話 悪魔の所業
毎日投稿20日目
第25話を投稿します。
※警告!
タイトルからも分かる通り、今回のお話はグロイです。15歳未満は読んじゃいけません。グロ耐性が無い方にもお勧めしません。一度「カニバリズム」という単語をグーグル先生に聞いてから読み始めて下さい。次の26話も同様です。27話の前書きで回避した方向けのあらすじを付けます。
気分が悪くなっても責任を取れません(汗
追記:利用規約には反していないとは思いますが、怖くなったのでタイトルだけ変更しました。
「お待たせしました~。お待ちかねのお昼ごはんですよぉ~」
こんな時だというのにウトウトしてしまっていた私は、ヘイズさんのかけ声で半開きの目蓋を覚醒させた。さすがに油断しすぎだと、自分自身を戒める。けどこの部屋のなんとも暖かい、居心地の良い空気が私の緊張感を消し飛ばす。これも彼女の力の影響なのだろうか。
「待ってましたっす!」
「クゥン!」
もはや私やスクルドさんが何を言わずとも、ヴェルちゃんとパンちゃんのコンビが食堂へと駆け出してゆく。普段の私ならお行儀が悪いとカミナリを落としているところだが、今はそれどころではない。二人へのお説教はこの一件が片づいてからたっぷりとしてあげよう。
暖かいシチューが並べられた食卓の席に着くと、食欲を沸きたてる匂いが私の鼻孔を刺激する。とりわけ、ホカホカの白いスープに混ざって見える肉の塊には、子供組の二人でなくとも唾を飲み込みざるをえない。
むぅ……。
確かに、これはパンちゃん達が待ち望むのも無理はない。私の手料理だっておいしい美味しいと食べてくれる二人だが、ここまでのテンションではなかった。食べるまでもなく、このシチューは私達を至福の世界へ誘ってくれるだろうと確信させる。そんな一品だ。
(これは……。ユミルの街に戻ったら、マリーさんや大将に特訓を付けてもらわねばなりませんね)
私の女としてのプライドはズタズタだ。
本当なら真の敗北を告げられる前に、敵前逃亡を図りたかった。
だが、こんな所で怪しまれるような行動を取るわけにはいかない。再三、自分に投げかけている言葉をもう一度、噛みしめる。
ここは、――敵地なのだと。
まぁ。いくらなんでも食事に毒を混ぜるとか、そんな安易な手段は使ってこないだろう。私は大人しく、皆と同じ食卓についた。
「「「「「いただきまーすっ!」」」」」
魔の森の真っ只中に鎮座した愛くるしい一軒家で、皆の元気な声が発せられた。
私が木製のスプーンを手にする間に、子供組はガツガツと夢中になって白濁色のシチューを口の中にかき込んでいた。先程も感じたことだが、お行儀が悪いったらない。
「コラっ、アンタたち! もっとお行儀よく食べなっ。……まったく、恥ずかしいったらないよ」
普段は粗野な言動が目立つスクルドさんだが、そこは一国のお姫様。食事のマナーという点では文句のもの字も出ないほどしっかりしている。お手本とばかりに食器の音を立てずに口に運ぶ様はさすがの一言だ。
今のところ、食事マナーの先生は彼女にお任せして問題ないと確信した私は、改めて目の前のシチューを口にした。
(美味しい。美味しいんだけど……、なんだろう。私の知らない未知の食材でダシを取っている?)
このスープに使われている食材から取れたダシだと思うが、私のこれまでの人生で味わったことのないものだ。まったりとしていて、肉から溶けたであろう脂肪もシチューの保温に一役かっている。
(という事は、このダシはお肉から出ているのかな?)
そう感じた私は、スプーンでブツ切りにされたお肉をすくい取った。
なんだろう、見たこともないお肉だ。鳥でも、豚でもない。強いて言えば牛に似ているかもしれない。
不思議に思いつつ、私はお肉を口に運んだ。
なんとも不思議な味わいだ。
歯ごたえこそ羊肉に似ているが、その味は私が今まで食べたどの肉とも違う。
「これは……熊肉だね。よくこんな大物を仕留められたもんだ」
頭に?マークを何個も浮かべていた私をよそに、隣のスクルドさんが答えを導きだしていた。なるほど、これが熊肉の味というものか。ユミルは周囲を平原におおわれている街だ。当然、山の奥地に生息している熊を狩ることも、その肉を食べる習慣もない。
新しい食材の味に舌鼓を打つ。
穏やかで、幸せな食卓がここにはあった。
けど、想定外の事件は、ここから始まった。
身の毛もよだつような出来事が、ここから始まってしまったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
最初の異変は、食卓の下で始まっていた。
夢中になってシチューの皿に食らいついていたパンちゃんに、ふと、違和感を覚える。
食事を勧める私達の足元で、それまでガツガツと咀嚼音を響かせていたパンちゃん。しかし食事を始めて即、テーブルの下からそれまで立てていた音が変化していったのだ。それと一緒に、視界の隅っこに入っていたモフモフの毛も見えなくなる。
ガツガツ……、モグモグ……、ぺちゃぺちゃ。
まるで、食べている存在そのものが変化しているような。そんな違和感だった。それに、誰だろう? 誰かの小さな足が、私の足に当たっている。
「……パンちゃん?」
お行儀が悪いのは承知の上で座っている椅子を後方へと引き、テーブルの下へと頭を潜らせてみる。
果たして、そこには。
床に肘と膝をついて、一心不乱にシチューの皿へと顔を突っ込む小さな姿。
――――全裸の、見知らぬ幼女がいた。
……だれっ?
高級そうな真っ赤な絨毯の上に敷かれたナプキン。
それは、パンちゃんがシチューを零してしまっても良いようにヘイズさんが敷いたものだ。その上に置かれたパンちゃん用のシチュー皿。
それのどれもが今までと変わらない光景だ。ただ、その場にいる子がパンちゃんではないだけ。
あの白黒の、もこもこで、ふわふわで。
胸の中で抱くと、何とも暖かい。あのパンちゃんの姿がなくなった代わりに、一人の女の子が夢中でシチューを食べている。
サラサラな白い髪に、所々黒い毛髪が混じっている可愛らしい子だった。
もちろん、私の知らない子だ。一体どこから迷いこんだのだろう? そもそもパンちゃんはどこへ消えてしまったのだろう? あの大きな身体が動けば、私達が気付かないわけが無いんだけど……。
そこまで考えた時、私の脳裏に一人の男性の声が走った。
「以前にも、森の恵みをもらいに村の女達が入ったことがありましたが……。若い娘達だけが帰ってきませんでした――」
あれは……。
パンちゃんの叔母さんだという人が見つかった、この道中で炎竜の被害にあった熊人族の村長が警告してくれた言葉だ。それにスクルドさんが教えてくれた彼等の歴史。
そして、パンちゃんの特異な変身能力……。
(熊人族は……その身体を熊にも人にもできる。そして……この熊肉……)
――――――――――――――――っ!!!
一つの結論にたどり着いた私の身体が、瞬時に今まで頂いた食事をすべて拒絶した。
これまでに胃の中に入れたシチューが喉へ、そして口から外へ。恥も外聞も、何もかも捨てて床へとぶちまける。
背徳的な嫌悪感が止まらない。
この魔女。
なんてものを、私達に食べさせたのかっ!!
「――ちょっと、どうしたんだい!」
「ちょちょ、エダねえ。バッチぃっす!」
突然の嘔吐に、一緒に食事の輪の中にいた皆の視線が集まる。けど、あまりのショックで私の身体が起こした逆噴射は止まる気配を見せない。
……息が苦しい。
まるで、私の胃が裏返るかのような錯覚を覚える。まだ少量しかこのシチューを口にしていなかったが、吐き出さなきゃいけないのは肉だけじゃあない。この白いスープにも、彼女達の脂肪が溶け込んでいるんだからっ!!
まだまだ私の嘔吐は止まらない。胃液の一滴まで出しつくさなくては、この嫌悪感は終わりを見せない。だけど、今この事実に気付いているのは私だけだ。
早く、皆にも知らせなければ――――っ!!!
「あらあら、まだ病み上がりなのかしらねっ。だいじょうぶ?」
ヘイズさん。いや、森の魔女が白々しくも私を心配して近寄ってくる。私は心配そうに差し伸べられた手を、全力で弾いた。
「きゃっ。ど、どうしたの。エダちゃん……」
「……ふざけるな。ふっ、ふざけるなっ!!」
私の悪鬼のごとき形相を、信じられないと言いたいかのような表情で。ヤツは私を見下ろしている。もう、様子見は終わりだ。こんな、残虐な仕打ちを、平然とした顔で実行する女と。一つ屋根の下に居るわけにはいかない――。
今だ私の身体を襲い続ける嘔吐感を、無理矢理おさえつける。
そして、絶叫した。
「みんな、このシチューを食べちゃダメッ! このにくは、……この肉はっ!! この森で消息不明になった熊人族の、……女性の肉ですっ!!!」
最後までお読み頂き有難う御座いました。
どうだったでしょうか? あんまりグロくなかった? なら良かったです。
グロい? すみません。
次話もグロ目なのでご注意を。
正直、パンちゃんをあんな設定にしちゃったので、この展開は作者も覚悟していました。
ちなみにパンちゃんの能力の元ネタは、GB版初代魔界塔士SAGAの仲間モンスターです。今の若い子は知らないだろうなあ……(笑




