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宝珠竜と予言の戦巫女  作者: Mikami
第一部《ミズガルズ編》第1章 ユミルの街
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プロローグ(イメージPV風)ーすべての始まり

 始めましての方ははじめまして。

 既に読んでいただいている方は、いつもありがとうございます。

 合計話数が100話を突破した本作ですが、最初の導入部がどうしても「異世界転生」のテンプレとなっているのが弱いと感じていました。

 なので今回は「イメージPV」的なプロローグを追加させてもらいました。


 この「宝珠竜と予言の戦巫女」の裏コンセプトとして「作者自身が異世界に行ってしまったらどう行動するのか?」という自己反映型となっています。

 正直、自分の性癖をさらけ出しているようで、かなり恥ずかしいのですが……^^;


 それでも「もう異世界転生は読み飽きた!」という方にも読んでもらえるよう、鋭意執筆中です。

 かなりの長編となってしまったので、よろしければ第一部だけでも読んでいただけたら幸いです。


 どうぞ本作をよろしくお願い致します。


 mikami

 空を飛んでみたいと、ふと思った。


 べつに飛行機とか、ヘリコプターに乗りたいとか、そういう意味じゃない。


 自分の力で、空を飛んでみたいと思った。


 そんな俺は、毎日のように地面の底に居る。


 下水管、水道管、ガス管、光ファイバー。


 街の人達の暮らしを豊かにするため。俺が毎日、ご飯を食べるため。


 重機で掘削した地面の底で、俺は全身から汗を流しながらスコップを持っている。別に今の暮らしに不満があるわけじゃあ、ない。むしろ幸福に包まれていると言ってもいい。この世界には毎日のご飯だって食べられない人も居るんだから。


 それでも、俺は。首にかけたタオルで滝のように流れる汗を拭きながらも働き続ける。


 そんなある日。

 穴の中から、日の光が照らし続ける真っ青な空を見上げると。


 一羽の(ワシ)が、翼を大きく広げて楽しそうに飛んでいた。


 やっぱり、あらためて。


 空を飛んでみたいと、……そう思った。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 なんだか、夢を見ているようだった。


 黄金に煌めく(うろこ)、胴体より長い羽根、額で真紅の輝きを放つ楕円(だえん)の宝石。


 夢の中で、俺は竜になっていた。


 空の彼方から吹きつける風を一身に浴びながら。しがらみも、規則も、何もない蒼穹(そうきゅう)を自由気ままに飛んでいる。


 ふと、地上を眺めてみる。

 この地上には、人類が今まで成してきた作品なんてありはしない。高層ビルも、アスファルトで舗装された道路も、瓦屋根(かわらやね)が並ぶ家々さえもない。まるでアフリカのサバンナだ。

 俺の生きた証が無くなってしまったようで、少し悲しかった。


 でも、それ以上に。


 空を飛ぶ爽快感と、すべての束縛から解き放たれた解放感が、俺を興奮させた。


 この空の先には、どんな世界があるのだろう。どんな景色が待っているのだろう。


 ワクワクが止まらない。


 でも。


 一人旅はちょっと、さみしいな。


 そう思ったら。


 背中に暖かくも、柔らかい感触を覚えた。


 びっくりして自分の背中へ長い首を回すと、そこには白銀の少女がいた。


 白銀の髪、白銀の鎧、白銀の燐光、そして純白の翼。


 とても楽しそうに俺の背中に(またが)る少女がいた。


 俺とは色違いの真っ青な宝石を(ひたい)に付けて。


 これから始まる冒険の旅に、満開の笑顔をもって胸をおどらせている。


 俺の視線に気付いたのだろう。


 地平線のずっと先を捉えていた少女の視線が、俺の瞳に飛び込んでくる。


 少女は楽しそうに笑いながら、口を開いた。


 吹き付ける風の音にさえぎられたのか、俺の耳に少女の声は届かなかった。でも、何を言ったのかは不思議と理解できた。


「いきましょう」


 そう、少女は言ったのだ。


 そのたった一言が、なにやら俺の心を更に沸きたてた。


 未知なる世界、未知なる出会い。そして、未知なる冒険の旅へ。


 この少女と一緒なら、どんな苦難でも乗り越えられる気がした。


 そうだね。行こう!


 この声は、背中の少女に届いただろうか。


 いや、届かなくてもだいじょうぶ。


 なぜなら、俺達の心は、すでに。


 一つになっているのだから――――。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 夢から覚めた。


 また現実の一日が始まる。


 そんな少しの憂鬱(ゆううつ)と共に、俺は畳から身体を起こした。どうやらPCの前で何やら作業をしている内に、寝落ちしてしまったようだ。地方都市の築50年が経過した格安マンション。月3万円の格安1DKが今の俺の城だ。


 季節は夏。

 今日も今日とて、毎日の(かて)を得るための肉体労働が始まる。

 どうやら、少々寝坊してしまったようだ。俺は急いで(ひげ)を剃り、顔を洗い、作業着に(そで)を通す。朝メシを食べている余裕は無いようだ。……おっと、水筒も忘れちゃいけない。


 やれやれ、忙しい朝になってしまった。

 出社の準備を終え、急いで玄関に向かった俺だったが。ふと、PCの電源が点灯している事に気付いた。あぶない危ない、とばかりに部屋へと戻る。

 電気代だってバカに出来ないのだ。そう思ってモニターの画面をつけると、自分でも笑ってしまうような文章がメモ帳に書かれていた。


「――なんだこりゃ」


 思わず、独り言をこぼす。

 別に自覚は無いのだけど、思ったよりも疲れているのかもしれない。こんな恥ずかしい文章を誰かに見られたら、悶絶(もんぜつ)モノだ。

 そんな一人芝居を続けていたら、更に時間が押し迫っていた。


 今日も現実の一日が始まる。


 きっとこのまま、俺の人生は過ぎ去ってゆくのだろう。

 まあ、そんな平凡な人生もまた、良いではないか――――。


 そんな風に自己完結した後、俺は玄関の扉を開いた。

 「イメージPV」的なこのプロローグ。

 いかがでしたでしょうか?

 興味を引かれてもらえたでしょうか?


 次話の第一話から、本作はスタートとなります。

 仕事、学校終わりの疲れを少しでも癒すことができれば幸いです。

 これからも「宝珠竜と予言の戦巫女」をよろしくお願い致しますm(_ _)m

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